地下アイドルのドキュメントと思いきや、実は人間賛歌だった

2024.2.10 20:45

映画『くぴぽ SOS! びよーーーーんど』のワンシーン

(写真6枚)

◆「地下アイドルだけでなく、誰もが当てはまると思う」(田辺監督)

──インスタントな快楽というか、現実逃避に近い?

まきちゃん「昔だったら、クラスの中心にいたかわいい女の子ですらアイドルにはなれなかったのが、今では教室の端っこで友だちもいない子の救いの場として、地下アイドルというのはあると思っていて。自己申告制で誰でもなれるし、バイトとか部活のノリで始めることが多いと思います」

──この映画のポイントは、その「地下アイドルであること」の意味を突きつけられた姿を追っています。今までもあったと思うんです、地下アイドルを続けてて、いいのかどうか。でも、いよいよコロナによって全員がガチで将来を考えざるを得なくなる。

田辺「ホントはすでにあった問題が、コロナで浮き彫りにされるというね。でもそれは、地下アイドルの子たちだけじゃなく、誰もが当てはまることだと思うんですよ」

映画『くぴぽ SOS! びよーーーーんど』ポスター

──答えが見つかる映画ではなくて、答えを考えるための映画という。芸能ジャーナリストの田辺監督らしい視点ですね。

田辺「そうです。だから、考察系の映画ではあるんですよ」

──それでいて、エンタメ作品としてしっかり楽しめるものになってます。たとえば、映画の終盤にあった、まきちゃんが「服部緑地野外音楽堂」で主催したフェスのシーン。ライブ中、ステージを降りて客席を超え、最上段のテントに登っていくという。

田辺「あのシーンはまるまる流した方がいいと思ったんです」

──最初はなにを見せられているのかと(笑)。でも、まきちゃんがメンバーを呼び込むと、みんな付いていく。その後ろにはお客さんも続いていく。それまで、前のメンバーと仲違いする場面が続いてるじゃないですか。だからこそあのシーンの吸引力は、不思議と説得させられる強さがありました。

田辺「それは大正解の答えです。あのシーンの前に、グループ間の結束力が無くなって、まきちゃんが風船のなかに入って客席に降りてライブをするんですけど、ステージ前の柵に跳ねかえされて戻れなくなる。ステージの上ではほかのメンバーがいて、ちょうど足蹴りするような振り付けと重なって、まきちゃんとメンバーの乖離が明らかになるんです。そういうのがあって、フェスのシーンではメンバーが最上段まで付いてくるという」

初ドキュメンタリー映画を撮った、芸能ジャーナリストの田辺ユウキ監督

──ステージ上にいるメンバーと、その下の客席にいるまきちゃんが交わらない構図がグループ内の関係性をそのまま表しているという。

田辺「そこはすごく大事なシーンで。そのあたりはめちゃくちゃ考えましたね。映画的なリズムを意識して、要素を散りばめてます。たぶん1回観ただけでは気づかない伏線、フリが結構ありますから。そこも楽しんでもらいたいですね」

【映画『くぴぽ SOS! びよーーーーんど』】
大阪の地下アイドルグループ・くぴぽ。プロデューサーとメンバーを兼任するのは、「かわいい女の子のようになりたい」という願いをもつまきちゃん。コロナ禍でライブ活動ができなくなった日々が続き、地下アイドルたちは自分たちの「未来」と「アイドルを続ける意味」について考えざるを得なくなる。

大阪を拠点に、全国メディアで執筆する芸能ジャーナリスト・田辺ユウキ氏が、監督・製作・撮影・編集をつとめた初のドキュメンタリー監督作。くぴぽのほか、アイドルグループ・少女模型やすでに解散したアイドルたちも多数出演。

【くぴぽ】
大阪で1番売れてないアイドル。映画出演時は4人だったメンバーは、脱退・加入を経て現在は6人組グループに。自分の好きなものを個性に夢を叶えるため、日夜楽しく奮闘中。ヒダカトオルやTHE ラブ人間の金田康平らが手がける楽曲は、『Spotify アイドルポップ:ジャパン』のプレイリストに選出され、「イロモノアイドル」から「意外に曲が良いアイドル」として認知されつつある。

また、まきちゃん主催の『服部フェス2024』(会場:大阪・服部緑地野外音楽堂)も3月30・31日に開催決定。出演者は、くぴぽ、ポップしなないで、二丁目の魁カミングアウト、後藤まりこアコースティックviolence POP、ZEPTONIA、カイジュ―バイミー、首振りDolls、クリトリック・リス、ほか。

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