義理とおせっかいのロングパス…スズ子とタイ子の和解と友情

2024.2.16 08:15

タイ子(藤間爽子)に昔を思い出して欲しいと話すスズ子(趣里)(C)NHK

(写真2枚)

今週放送された『ブギウギ』(NHK朝ドラ)第20週「ワテかて必死や」では、乳飲子の愛子を育てながら歌って生きるスズ子(趣里)、ガード下に生きる夜の女たち、そして、靴磨きの仕事をして病気の母・タイ子(藤間爽子)を支える息子の達彦(蒼昴)・・・と、戦後の混乱の世をそれぞれに「必死」で生きる人々の姿が描かれた。

ツヤ(水川あさみ)の葬式以来、8年ぶりの再会となったスズ子とタイ子。タイ子は、スター歌手となったスズ子と自らの身の上を比べて「惨めで恥ずかしい」と嘆く。しかしスズ子は、こんな世のなかにあって女手ひとつで、達彦をやさしい孝行息子に育て上げたタイ子はそれだけで誇らしい、立派なのだと抱きしめる。

そして、スズ子の働きかけと「夜の女」おミネ(田中麗奈)たちの協力により達彦の靴磨きの儲けが出たため、タイ子を医者に見せることができた。

「ワテが歌手になったんも、タイ子ちゃんのおかげなんや。ワテに義理、返させてえな」
「相変わらずおせっかいやな。子供の頃から何も変わらへん」

スズ子とタイ子の少女時代を描いた第1週ぶりに登場した「義理」「おせっかい」というキーワードを手がかりに、2人が和解するまでを描いたこのエピソードについて、制作統括の福岡利武さんに聞いた。

■ 戦後日本の混沌を象徴「夜の女たち」と「靴磨きの少年」

「義理」と「おせっかい」のロングパス。これは最初から計画にあったのだろうか。福岡さんにたずねると、「1週・2週で、引っ込み思案のタイ子が、スズ子のおせっかいにより一歩踏み出したり、また今度はタイ子が、スズ子が歌手になるきっかけを作るという、少女時代の2人の友情をしっかり厚く描きました。『大人になったタイ子をどうしようか』というのは、スタッフの間で最初からの懸案でした。皆で議論を重ねて、タイ子は戦争で夫を亡くし、病気になってとても苦労しているところでスズ子と再会する、そして『スズ子のおせっかい』と『タイ子の一歩』の再演がおこなわれるという筋立てに決まりました」と振りかえった。

「タイ子の病気のことは大丈夫」と、達彦(蒼昴)を励ますスズ子(趣里)(C)NHK

「夜の女たち」と「靴磨きの少年」は、ともに戦後日本の混沌を象徴する存在といえる。第20週ではこの二者とスズ子の交流を描き、「靴磨きの少年」をタイ子の息子に設定して物語に落としこんだ。このアイデアはどこからきたのだろうか。

福岡さんは「戦後の混沌をどう描こうかと、スタッフ一同で資料を読み漁ったりアイデアを出しあうなかで、象徴的な存在である『靴磨きの少年』にスポットを当てて、タイ子のその後のエピソードと繋げられるのではないかと考えました。達彦が『わざと水たまりを作って集客しようとする』というエピソードは、今週の脚本を担当された櫻井剛さんらしいアイデア。達彦の、そして当時の日本中の人々の『生きるためになりふり構わず、必死な様子』がとてもよく出たエピソードです」と語った。

■ スズ子とタイ子の和解シーン撮影「泣いてるスタッフも」

また、タイ子とスズ子が互いに気持ちをぶつけあい、涙の和解を果たす96話(2月16日放送)のシーンの撮影での藤間爽子について、「久しぶりの撮影でいきなりヘビーなシーンを演じる藤間さんは、とても緊張されていました。リハーサルではとても声をかけられないほどに集中されていましたが、台本をしっかりと読み込んで、想像力を豊かに働かせて『今のタイ子』を作り上げてくださいました。でも、いざカメラが回れば、とても自然で。『熱演してやろう』みたいな気持ちが一切なく、自然にタイ子としての感情が出てきて、どんどん昂まっていくという感じでした」とコメント。

また「そのタイ子の感情を、趣里さんもスズ子としてありのままに受け止めて。これまで続いてきた2人の友情がとても強く感じられて、その場にいるスタッフ全員が引き込まれてしまいました。なかには泣いている者もいたほど。それくらい感情が動くシーンになったと思います」と絶賛した。

スズ子の「おせっかい」をきっかけに、ようやく明るい方向に歩き出したタイ子と達彦。これからの幸せを願ってやまない。

取材・文/佐野華英

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