大阪駅すぐの新シアターが「神!」、座席のスペックが高すぎる

2024.2.20 20:30

3月27日開場の「SkyシアターMBS」(大阪市北区)

(写真9枚)

2016年に閉館した劇場「シアターBRAVA!」の後継施設として、JR大阪駅に隣接する複合ビル「JPタワー大阪」(大阪市北区)内に誕生した「SkyシアターMBS」。観客や演者、裏方などから100以上の要望を集め、可能な限り反映させたという。特に座席にはさまざまなこだわりが詰め込まれており、さっそくネットには「神じゃん」「すごく見やすそう」と、期待の声が溢れている。

取材・文/吉永美和子

◆ 観る人を「思いやりすぎた」結果・・・

目にやさしいグリーンを基調に、前の席の人の頭がかぶらないよう、千鳥格子状に配置された座席。パッと見たところ、背もたれもクッションもさほど大きくなく、なんだか薄くて硬そう・・・と思われるかもしれない。実際に座席自体は特別に広くはなく、肘掛けもやや細くて短めだ。しかしいざ座ってみると、特に腰から臀部にかけて包み込まれるような感じがあり、見た目以上に座り心地は良い。

グリーンを基調に千鳥格子状に配置された座席、舞台から見ると空席が目立ちにくいという利点も

この座席、座る部分を横から見ると、前方と後方で厚みが違うくさび型となっている。前方をあえて細身にしたのは、座席の下に荷物を入れやすくするためだ。座席前の通路に大きな荷物を置く人は多いが、これは通路を通る人の邪魔になるだけでなく、当人にとっても足元の可動域が狭くなるため、エコノミー症候群に近い状態になってしまう。観客の出入りをスムーズにするだけでなく、健康のことまで気づかって生まれた形なのだ。

横から見るとシートの「薄さ」は一目瞭然、これが長時間座っていても疲れにくい秘訣

◆ 座席横に入っている、謎の切込みの正体

またシートの形も真四角ではなく、前方がやや狭い台形型となっている。これもまた、観客が出入りしやすくなるための、もうひとつの工夫だ。着席中に人が通るときは、立ち上がるよりも足を横に傾ける人が多いだろうが、ここに切り込みを入れることで、人が通れるスペースが少しでも広くなる。前述した「肘掛けが短い」というのも、実はこのときに太ももが当たらないようにするための、細かい配慮だったわけだ。

同じ列に座る人が前を横切りやすいよう、足をいれる「スペース」を作ることでスムーズな移動が実現する

そしてシートの後方は厚みがあって身体が沈むので、身体が微妙にリクライニング状態となる。既存の座席は、水平or前方に傾く体制になるものが多いのだが、これが実は時間とともにしんどくなる原因。観劇マニアの間では「シート前方にクッションを敷いて、前屈を防ぐ」というライフハックが存在するほどだ。

しかしこの座席なら、そんな手間は不要。背もたれも下部が膨らんでいる構造なので、前述のような「腰から臀部が包み込まれるような座り心地」を実現することができた。実際に観劇しないと結論は出ないが、おそらく劇場側が目指した「長時間座っても疲れない座席」になったはずだ。

◆ 演者も「やりやすい」座席配置とは?

さらにこの座席、演じる側にとっても気配りがされている。人が座っていない状態のとき、座る部分は舞台に対して直角ではなく、やや下向きになる位置で固定。実はこれが直角になると、役者の声やBGMなどの音が座席ではねかえってしまう。そのため観客を入れないゲネプロで「これぐらいでいいか」と考えていた声量や音量が、本番で観客が入ったときに、想定よりも小さく聞こえてしまう・・・というケースが結構あるそうだ。

演者の声の響き方も考慮した座席配置。ちなみに舞台から続く「花道」は、客席中央の通路まで段差なしで繋がっているため、「銀橋」のようにして使用することができる

これによって役者や音響スタッフが調整に手間取ったり、ひどいときは無理して声を出して喉を痛めてしまうこともあるそう。そこで座る部分を少し下向きにして、音の反響を軽減することで、少しでも観客を入れたときの状態に近い形で、音の調整ができるようにしたという。まさに観客、役者、スタッフの要望を、きめ細やかに拾った結果生まれた座席なのだ。

◆ 「こだわり」は挙げ出したらキリがない

そのほかにも、車椅子用のスペースはエレベーターとほぼ直結とか、非常用の通路照明を極力観劇の妨げにならない位置に配したとか、2階席前方の手すりを客席部はできるだけ低く細くしたとか、この機会に実現できたことは非常に多い。

暗転時に意外と気になる「座席下の誘導灯」、前後の座席列をずらすことでできた「くぼみ」を利用して、なるべく観劇中の邪魔にならないよう工夫

唯一見当たらなかったのが、最近の劇場ではメジャーになってきた客席部の傘立てだったが、これはまた別の対策があることを望みたい。またロビー&カフェスペースは内覧の時点では未完成だったので、こちらも客席に負けないほど、居心地と利便性の良い空間になっていくことを期待しよう。

「SkyシアターMBS」は3月27日に、「シアターBRAVA!」とも縁が深かった藤原竜也の主演舞台『中村仲蔵〜歌舞伎王国 下剋上異聞~』で開幕(前売チケットは完売)。4月4~14日には、日本を代表するミュージカル俳優たちが大挙出演する『カム フロム アウェイ』を上演する。

SkyシアターMBS

2024年3月27日(水)オープン
住所:大阪市北区梅田3-2-2 JPタワー大阪 6F

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