衝撃作「月」の石井裕也監督、大阪シネフェスで監督賞を受賞

『おおさかシネマフェスティバル 2024』で監督賞を受賞した石井裕也(3月3日・大阪市内)
『おおさかシネマフェスティバル 2024』授賞式が3月3日、ホテル「エルセラーン大阪」(大阪市北区)でおこなわれ、宮沢りえ主演の映画『月』でメガホンをとった石井裕也監督が「監督賞」を受賞した。
大阪芸術大学の卒業制作として撮った『剥き出しにっぽん』(2005年)が、『ぴあフィルムフェスティバル』でグランプリを獲得。2009年の商業デビュー作『川の底からこんにちは』が『モントリオールファンタジア映画祭』で「作品賞」を受賞、28歳にして『ブルーリボン賞』の「監督賞」を史上最年少で獲得するなど、一躍映画界にその名を知らしめた。
2013年には松田龍平主演の映画『舟を編む』を監督。史上最年少の30歳で『アカデミー賞』外国語映画部門日本代表作品に選出され、その年の映画祭で賞を総なめ。その後もコンスタントに秀作を撮り続け、このシネフェスで主演女優賞に輝いた松岡茉優の主演作『愛にイナズマ』も石井監督が手がけた映画だ。
ステージにあがった石井監督は、「大阪で学びはじめたんですけど、大阪に来ると初心に返るような気持ちになる」とコメント。
受賞作となった『月』は、神奈川県で起こった障がい者殺傷事件をモチーフに、作家の故・辺見庸が発表した小説が原作。
元有名作家の洋子(宮沢りえ)は、夫と慎ましい暮らしをしながら障がい者施設で働いており、ほかの職員による入所者への心ない扱いや暴力を目の当たりにする。その理不尽に誰よりも憤っている同僚のさとくん(磯村勇斗)だったが、やがて増幅する正義感や使命感が怒りを伴って現れてくるという、世に問うべき問題作だ。
総合司会の浜村淳から「映画のはじめはかなり重い空気ですが、そこから興味深く見せるというところに苦心があったのでは」と問われ、石井監督は「本当にその通りで。僕も含めて、見ることもないし、見ようとも思わない世界を描いているので、どう広く深く見せるかということが1番苦労しました」とコメント。

そして「スタッフ、キャスト、関係者の方々に本当に感謝していますし、いろいろ大変なこともありましたけど作ることができて良かったです」と感謝を述べた。同作にさとくん役で出演した磯村は、このシネフェスで助演男優賞を獲得している。
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