【光る君へ】ここでギターソロだと?攻めたBGM使いに注目

2024.3.23 13:45

『光る君へ』第11回より、高御座の生首を発見し驚く道長(柄本佑) (C)NHK

(写真5枚)

吉高由里子主演で、日本最古の女流長編小説『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。3月17日放送の第11回『まどう心』では、スルーされると思ったとある事件がしっかり描写されたことに驚きの声が上がると同時に、大胆なBGM使いにも話題が集中した(以下、ネタバレあり)。

■ 第11回「まどう心」あらすじ

花山天皇(本郷奏多)が退位して「花山院」となり、藤原兼家(段田安則)の孫・一条天皇(高木波瑠)が、わずか7歳で即位することになった。しかし即位式の当日、式に使われる高御座の椅子に、子どもの生首が置かれるという事件が発生。自分を陥れた兼家たちを恨む、花山院の仕業だった。警備をしていた藤原道長(柄本佑)は、穢(けがれ)を恐れて近寄らない人々を横目に生首を処理し、全員にこのことを口外しないよう命じる。

『光る君へ』第11回より、道長(左・柄本佑)の行動を称賛する兼家(段田安則 (C)NHK
『光る君へ』第11回より、道長(左・柄本佑)の行動を称賛する兼家(段田安則 (C)NHK

即位式は何事もなかったようにおこなわれ、兼家は道長の行動を称賛。そして摂政となった兼家は、息子の道隆(井浦新)や道綱(上地雄輔)らを昇進させるが、花山天皇の退位に一番奔走した道兼(玉置玲央)は不満を漏らす。兼家は、昇進はあわててしない方がいいと説き伏せ「公卿たちの心をつかめ。さすれば、堂々と兄を抜くことができよう」と励まし、道兼は納得したようにうなずくのだった。

■ 穢に無頓着、この時代にはなかなかの特殊スキル

『光る君へ』が始まる当初、「平安時代だったら、武士の時代より人死には少ないはず」と考えた人は多かっただろう。しかし第1回でいきなり、道兼がまひろの母を殺すという衝撃の展開にはじまって、さまざまな「血の穢」を目撃することに。とはいえさすがに「一条天皇の即位式で、高御座に生首が転がっていた」というホラーな逸話(歴史物語『大鏡』より)はパスせざるを得ないだろうと思っていたら、この第11回でやってしまいました! しかも逆光気味とはいえ、ものがバッチリ映ってるという形で!

『光る君へ』第11回より、生首を処理し袖で血を拭う道長(柄本佑) (C)NHK
『光る君へ』第11回より、生首を処理し袖で血を拭う道長(柄本佑) (C)NHK

前作の『どうする家康』、前々回の『鎌倉殿の13人』でも打首のシーンが相次ぎ、首桶&そこに入ってる生首がチラリと映るという描写にはすっかり慣れた視聴者も、これにはさすがに「せめて首桶を使ってくれ」という声が。この生首の正体や、誰の仕業だったのかについては謎とされているが、今回は花山院の呪詛だったという解釈にして、院の無念さを強調するとともに、道長が直秀(毎熊克哉)との出会いによって、「穢」という概念を克服したことも描き出した。

穢に無頓着というのは、迷信深い平安貴族のなかにおいては、なかなかの特殊スキルと言えるもの。もしかしたらこれが、道長が異例の出世を遂げた、ひとつの大きな理由となるかもしれない。そして道長が影のMVPとなって、一条天皇は即位できた。天皇が北斗七星の刺繍が入った礼服を着用していたのに対して、術が破れた花山院の手からこぼれた数珠の珠が、北斗七星の形になっていたのは、まさに今帝位につく者/ドロップアウトした者を残酷に浮かび上がらせる、秀逸な描写だった。

『光る君へ』第11回より、呪詛をおこなう花山院(本郷奏多) (C)NHK
『光る君へ』第11回より、呪詛をおこなう花山院(本郷奏多) (C)NHK

■ 時代劇に泣きのギターソロ、攻めた音に騒然

さてこの『光る君へ』、大石静の「地獄上等」な心意気と、少女漫画風のスイートさを絶妙にブレンドした脚本も称賛されているが、それに応える演出の方もなかなかクセが強い。前回の「都の空に、兼家のドヤ顔が重なる」という、80年代の大映ドラマを彷彿とさせるようなビジュアルも話題になったが、BGMの使い方も負けずに強烈だ。冬野ユミの音楽は、時代劇らしいクラシカルな曲だけでなく「この楽器を時代劇に?」とびっくりするような楽曲もあり、この回はとりわけ「攻めた」音楽の数々に視聴者は騒然とした。

まず、道長が高御座の首を目撃→一条天皇の即位式までは、荘厳なパイプオルガンの調べが。式の厳粛さや状況の奇怪さとともに、穢をものともしない道長の計り知れなさを示すような音使いだ。道兼が今回も父親になんやかやと言いくるめられるシーンでは、その危うさを強調するように、不穏なスライドギターがフェードイン。そしてまひろと道長が無言で抱き合う場面では、内面の激しい恋心を代弁するかのように、ハードロック調の泣きのギターソロが高らかに鳴り響いた。

『光る君へ』第11回より、ハードロック調の泣きのギターソロをバックに抱き合うまひろ(吉高由里子)と道長(柄本佑) (C)NHK
『光る君へ』第11回より、ハードロック調の泣きのギターソロをバックに抱き合うまひろ(吉高由里子)と道長(柄本佑) (C)NHK

このアグレッシブなBGMについては、「斬新」という声と「合ってないのでは?」という声の両方が上がっていて、今のところは賛否両論といった印象だ。しかし道兼登場時によく使われる、煽るようなギターの音が、最初はかなりツッコミが入っていたのに、今では「道兼キター!」みたいな盛り上がりを見せている(ちなみに道兼役の玉置玲央も、Xで「音楽やべーな!!」と言及)。時代劇の新しい見せ方(聴かせ方だろうか)にも、もしかしたら挑戦しているのかもしれない『光る君へ』。次回以降もどんな驚きの音がドラマを盛り上げるか、注意して耳を傾けてみてほしい。

『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。3月24日放送の第12回『思いの果て』では、まひろを妻にすることをあきらめた道長が、源倫子(黒木華)の婿入り話を進めると同時に、もうひとつの縁談が舞い込むところが描かれる。

文/吉永美和子

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