【光る君へ】玉置玲央の快演に称賛、青春に終わり告げた死

2024.5.11 17:00

『光る君へ』第18回より、死の床で読経する道兼(玉置玲央) (C)NHK

(写真8枚)

平安時代の長編小説『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を、吉高由里子主演で描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。5月5日放送の第18回「岐路」では、玉置玲央演じる藤原道兼が、権力の頂点に立った直後にまさかの退場。物語が進むごとに評価を変化させた、異色キャラへの哀悼と感謝の声がSNSにあふれた(以下、ネタバレあり)。

■ 第18回「岐路」あらすじ

まひろの父・藤原為時(岸谷五朗)の友人・藤原宣孝(佐々木蔵之介)が、赴任先の太宰府から帰京。まひろは宣孝から、宋の国には「科挙」という制度があり、身分の低い者でも政に携わることができると聞かされる。さらに大学寮で学ぶ弟・惟規(高杉真宙)からは、民に代わって為政者を正すという、唐の詩人・白居易の詩「新楽府」の話を聞き、それを読みたいとせがむ。

そんな折、「清少納言」の名で、一条天皇(塩野瑛久)の中宮・定子(高畑充希)に仕えるききょう(ファーストサマーウイカ)が、久々にまひろを訪ねてくる。そこで道長(柄本佑)が、関白の候補に上がっていることを聞かされた。まひろはかつて2人で逢瀬を重ねた廃邸に足を運ぶが、そこに偶然道長も来訪。まひろは動揺しながらも「今、語る言葉は何もない」と考え、無言でその場を立ち去った・・・。

■ 道兼の退場に惜しむ声「こんな日が来るとは」

この第18回の最大の見せ場は、まひろとも根深い因縁を持つ「七日関白」こと藤原道兼の退場だったということに、多分異を唱える人はいないだろう。第1回でまひろの母を衝動的に殺し、下々の人間を「虫けら」呼ばわりし、道長にも暴力を振るうというキャラクターに、当初は視聴者のヘイトが集中。しかし一度出世の道から外れて、公私ともにどん底になってからは一転、道長とともにより良い政を目指すナイスガイに変貌。そこから大きく花開くと思われた矢先の、ドラマのような病没だった(念のため言っておくと、本当に史実ですので!)。

SNSでもその退場に「あの悪役が、辛い過去ゆえの信頼できる関白になる日が来るとは本当に思わなかった」「悪役だけど唐突な死は辛すぎた。不思議なポジション」「道兼に対する視聴者感情をここまで反転させるストーリーテリング、見事としか言いようがない」「長生きしていたら、どんな政治をしていたのだろう」などの惜しむ言葉が並んだ。

また「ヘイト上等」とばかりに、複雑な背景と感情を持つ道兼を演じきった玉置玲央にも、「道兼という人物がこんなに退場が惜しまれるキャラクターになったのって、脚本もさることながら、玉置さんの演技の結果」「とても素敵な藤原道兼を演じて下さって本当にありがとうございました」「『光る君へ』、玉置玲央さんという凄まじい役者さんを知れるきっかけの作品となりました」など、ねぎらいと称賛の言葉があふれかえっていた。

■ 以心伝心、一瞬「夢」かと思う再会シーン

というわけで、当初ちょっと期待された「まひろが道兼に復讐する」という世界線は実現しなかったわけだが、恋愛面ではついに山が動き出した感じが。将来の夫である藤原宣孝が、今までの「親戚の愉快なおじさん」スタンスから一転、まひろに紅を買ってきたり、「よい女になった」と声をかけるなど、女性として意識したような言動が。この変化を当然、早めのカップル成立を望む視聴者は見逃さなかった。

そしてSNSでは「相関図で把握してたのに全くその気配ないな〜と思ってたら急にフラグが」「男が女に口紅を贈るのは『キスがしたいから』て聞いたことがあるよ。宣孝さまエロいッ!」「まひろが宣孝にロックオンされたぞ! どうする道長!!」「道長くんの耳元で『宣孝がまひろのことを思い描いて紅を買ってきました』ってお伝えしてこい」と、2人に声援を送りつつも、道長の反応を気にするような声も。

そんな風に、それぞれの人生の岐路を迎えた2人が、約束を交わしたわけではないのに、思い出の廃邸で再会するという、一瞬「夢かな?」と思ってしまうようなシーンも。まさにこれぞ以心伝心! さあここから焼けぼっくいに火を着けちゃって!! と盛り上がっていたら、まひろが「まだそのときではない!」とばかりに去っていくという、大きな肩透かしを食らってしまった。

とはいえ鍛えられた視聴者は、SNSで「互いの使命の為に、その視線だけで覚悟を表す『ソウルメイト』としての関係が今始まったんやね」「道長くんが会いに来たのはまひろじゃなく、まひろの言葉に指針を与えられた昔の己自身で、だから言葉をかけるべきではない、と理解したんだな」「もう2人は二度と交わる事の無い、それぞれの人生を歩んでいるのをまざまざと感じるシーン」などの、この出会いに対するさまざまな解釈を展開していた。

2人を強く結びつけるきっかけとなった道兼が去り、まひろが望んだ「道長が政をおこなう世」が目前に迫るという、まひろと道長にとっては、ある意味「青春の終わり」とも言える回となった。次にまひろと道長が再会するときには、交わす言葉が見つかっていることを祈りたい。また道兼役の玉置玲央は、所属する劇団「柿喰う客」の新作公演が5月末におこなわれるので(東京のみ)、その強烈な存在感をぜひ生で体感してほしい。

『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。5月12日放送の第19回「放たれた矢」では、まひろがききょうのはからいで定子や一条天皇と対面を果たすとともに、道長に出世を阻まれた藤原伊周(三浦翔平)が、思わぬ事件を起こしていく姿が描かれる。

文/吉永美和子

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