【光る君へ】重要な歴史と関わりは?まひろ無双の脚本に脱帽

2024.5.16 18:30

『光る君へ』第19回より、一条天皇と中宮・定子に拝謁するまひろ(吉高由里子) (C)NHK

(写真9枚)

平安時代の長編小説『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を、吉高由里子主演で描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。5月12日放送の第19回「放たれた矢」では、まひろが中宮や天皇などのやんごとなき人々と、思わぬ形で謁見。その影響が元カレと自分の父親にまで及ぶという、ことごとく予想外の展開にSNSが盛り上がった(以下、ネタバレあり)。

■ 第19回「放たれた矢」あらすじ

白居易の詩『新楽府』を手に入れ、宋(中国)の身分を超えた政治制度への興味をますます募らせていくまひろ。「清少納言」ことききょう(ファーストサマーウイカ)のはからいで、中宮・定子(高畑充希)と対面する機会を得ることができた。その当日、思いがけず一条天皇(塩野瑛久)も現れ、まひろは自らの考えを天皇に進言。天皇はのちに藤原道長(柄本佑)に「男であったら登用してみたいと思った」と語る。

『光る君へ』第19回より、国司となる資格を得る従五位下に昇進した為時(岸谷五朗) (C)NHK
『光る君へ』第19回より、国司となる資格を得る従五位下に昇進した為時(岸谷五朗) (C)NHK

そして除目の季節となったが、10年間なんの職にも着けなかったまひろの父・藤原為時(岸谷五朗)は、今年の申文を最後にすると覚悟を決めていた。しかしまひろは、宋人が大勢滞在している越前国の国司を望むよう、父を焚きつける。道長は為時の申文に目を通し、国司となる資格を得る従五位下に昇進させた。この結果に、為時はまひろと道長が特別な関係にあることを感じ取るのだった。

■ 父の出世もサポート! まひろの無双ぶりに驚き

『光る君へ』第19回より、まひろの考えに興味を持った一条天皇(塩野瑛久) (C)NHK
『光る君へ』第19回より、まひろの考えに興味を持った一条天皇(塩野瑛久) (C)NHK

この『光る君へ』で、作り手たちが常に心を配っているのは、『源氏物語』を書くまではただの一般人である紫式部(まひろ)を、この時代の重要な歴史の流れと、どのように関わらせていくか? ということだろう。過去の大河では、主人公を重大な事件の場に、あまりにも無理やりな手段で立ち会わせまくり、失笑を買った例も少なくない。このバランスが絶妙な塩梅なのが、本作の好評の理由であり、この19回はその究極の形が見られたと言ってもいいだろう。

この時代、下級貴族の娘が天皇に拝謁するなど、私たちが道端で偶然世界的なセレブに話しかけられるぐらいに、まず起こり得ないことだ。しかし『光る君へ』では、ききょうがまひろを高く買っていること、ききょうが定子に喜んでもらうなら多少の無理を通す性格であること、そして定子の後宮が身分を超えた、ある種の無礼講の場になっていたことで、普通なら起こり得ない機会を作り上げることに成功した。

『光る君へ』第19回より、まひろが中宮に興味を持ち、目を輝かせるききょう(ファーストサマーウイカ) (C)NHK
『光る君へ』第19回より、まひろが中宮に興味を持ち、目を輝かせるききょう(ファーストサマーウイカ) (C)NHK

この巧妙に作られた状況に、SNSも「え! 天皇に会えるの? すごいよまひろちゃん!!」「内裏ではなく後宮なので主上と直に話せる機会を作れる脚本の妙よ」と感心の声が上がる一方、中宮に興味を持ったまひろにすかさず謁見の機会をセッティングしたききょうにも、「まひろが定子さまに会ってみたいと言った瞬間の清少納言、友だちに推しを布教するチャンスを見つけたオタクの目で吹いた」「有無を言わさず即チケット手配する行動力とスピード感、まさにオタクの鑑」というツッコミが上がっていた。

■ 天皇がまひろを「おもしれー女」認定にSNS喝采

『光る君へ』第19回より、一条天皇に意見するまひろ(吉高由里子)に驚くききょう(ファーストサマーウイカ) (C)NHK
『光る君へ』第19回より、一条天皇に意見するまひろ(吉高由里子)に驚くききょう(ファーストサマーウイカ) (C)NHK

そうして天皇の偶然の拝謁が実現したまひろだが、たとえ誰が相手でも、自分の意見を空気を読まずに語っちゃうのは相変わらず。しかし学問や文化が大好きな超文系男子の一条天皇は興味を持ったらしく、SNSでも「天皇の前でも政治の夢を語るまひろまじ強い」「まひろたん、天皇公認おもしれー女にグレードアップ」「一条天皇、賢女が好みのタイプだから、もうちょっとでまひろヤバかったな」などの声が。

しかしこのミラクルは、後宮だけにとどまらない。天皇が、道長に「おもしれー女に会った」とまひろの名前を出した瞬間、天皇だけでなく視聴者も道長の動揺を見逃さず「道長の『え? 俺がなんやかんやで権力者の階段を踏みしめて上ってるときに、別ルートであいつお上に面会してんの? え?? ま???」っていう顔すきww」「口は開きっぱなしだわ瞬きは明らかに増えるわ、隠し事が下手なのは相変わらず」などと盛り上がることに。

『光る君へ』第19回より、一条天皇の口からまひろの名前を聞き動揺する道長(柄本佑) (C)NHK
『光る君へ』第19回より、一条天皇の口からまひろの名前を聞き動揺する道長(柄本佑) (C)NHK

そしてこの余波は、ちょうど「職をください(超意訳)」という申文を出していた父・為時にまでおよぶことに。これにもSNSで「詮子(吉田羊)さまのプライベートな依頼には一切聞く耳持たなかったくせに、元カノの名前が帝の口から出た瞬間これ(笑)」「ズル除目はしない(ただし好きな女のパパは除く)」とツッコミが入った一方、「『位の低い一族にも優れた者がいるのだから、活躍する機会を作るべき』の部分にも共感したからの采配なんだろうなぁ」と、単なる元カノへの配慮だけではないことを指摘する声もあった。

為時のアラフィフになってからの躍進は、自分の苦境をつづった漢詩に、一条天皇が深く感じ入ったからという説があるが、天皇がまひろの語った夢に心を打たれる → それを聞いた道長が為時の抜擢を思いつく・・・と、実はまひろが出世の媒介になっていたというのは、なかなかひねった解釈。史実を曲げすぎることなく、なんの権力も持たない主人公の「無双」を実現させた脚本には、今回も脱帽させられた気分だ。そして平安ギターソロが随所で鳴り響いた、今回のBGMのユニークさでもSNSは盛り上がったので、来週以降も注目したい。

『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。5月19日放送の第20回「望みの先に」では、まひろの一家が為時の任官に湧く一方、藤原伊周(三浦翔平)と隆家(竜星涼)兄弟が不祥事によって処分され、その影響が定子にも至るところが描かれる。

文/吉永美和子

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