為時のミラクル出世にまひろ暗躍、史実の折衷に唸る【光る君へ】
平安時代の長編小説『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を、吉高由里子主演で描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。5月19日放送の第20回「望みの先に」では、まひろの父・為時の出世にまたしてもまひろが貢献するところや、清少納言と起こしたおかしな行動が、SNSで大いに話題となった(以下、ネタバレあり)。
■ 淡路守から越前守に・・・大出世した為時
まひろの父・藤原為時(岸谷五朗)は、10年の不遇の時を経て淡路守に任じられた。周囲の者は喜ぶが、まひろは宋(中国)の言葉がわかる為時は、現在大勢の宋人が訪れている越前国の国司がふさわしいと考える。藤原宣孝(佐々木蔵之介)から、除目のあとでも任地が変わる例があると聞いたまひろは、父の名を騙った漢詩をつづった申文を送り、右大臣となった藤原道長(柄本佑)の目に留まる。
それがまひろの字であることを悟った道長は、その詩を一条天皇(塩野瑛久)に献上。その結果、漢文の知識がないことが露呈した源国盛(森田甘路)に代わり、為時が越前守となった。この任地換えには、道長が深く関わっていると感じた為時は、改めて2人の関係をまひろに問う。まひろは「かつて恋い焦がれた殿御にございました」と告白し、父とともに越前国に向かうことを誓うのだった。
■ たった一通の手紙から幾重ものドラマが…父娘の関係も
10年間の無職状態から、淡路島広域を任される立場になった・・・と思いきや、突然福井県知事になったぐらいのミラクル出世を果たしたまひろパパ・為時。ちなみに当時の福井県=越前国は、農業も産業も交易も栄えているという、もっとも豊かな国の一つ。淡路守になった時点で、SNSは「パパ上就職やったね!」「ようやく無職脱出」「やっと報われた」とお祝いの声一色となったが、まさかそこからさらに大きくステップするとは・・・。
ちなみに為時の突然の栄転は、「為時が淡路守任命後に提出した漢詩の内容に一条天皇が心を打たれた」という説と、「漢詩ができる=越前国に来ている宋人たちと直に交渉ができるはず! と、道長が抜擢した」という説がある。『光る君へ』は、その2つの説を折衷したものとなったが、さらに驚きなのは、その文章を書いたのが実はまひろということ! さらにさらに、道長がまひろの手紙と見破り、元カノの感慨にふけるというオマケまで。たった一通の手紙で、幾重ものドラマを生み出すことに成功したのも、またひとつのミラクルだろう。
SNSでも「あのお上が涙したという歌をまひろが書いたと!? 上手い!」「16字の言葉で人事を覆し人生を変えたまひろ親子」「名探偵道長、申文の筆跡とまひろの筆跡を照合するというファインプレー」「いみじくも手紙とっといた甲斐があったね!」「惚れた女の文字はすぐに気づくの、さすが俺たちの道長くん愛が重い(いい意味で)」と、大いに盛り上がっていた。
そして為時パパも、ついにまひろと道長の特別な関係を確信し、まひろも正直にそれに応えた。ドラマが始まった頃は母の死をめぐってギクシャクしていた父娘が、ようやく本当の運命共同体となった瞬間だろう。SNSでは「淡路守への任命までは神様のお計らいとしておいたけど、さすがに越前守に任命されたのを素知らぬ顔して受け入れることはできないところが為時パパらしい」「『深入りはしないけどホントのことは教えてよ』のスタンスだけで越前守の格があることがよくわかる」など、為時のはからいに感心の声が集まった。
■ 「平安コント」からの悲劇…展開の高低差に悲鳴あがる
そしてもう1つ、SNSが大いに盛り上がったのが、中宮・定子(高畑充希)の元から去らざるを得なかったききょう(清少納言/ファーストサマーウイカ)が、彼女が滞在する二条第に、まひろとともに変装して忍び込むところだ。貧乏が嫌いなききょうが庶民の姿に身をやつし「どこから持ってきた!?」とツッコミたくなる枝葉を手にコソコソ動き回る様は、まさに「平安コント」と言いたくなるシュールさ。しかもそれが、日本文学史に燦然とその名が輝く女流作家同士なんだから、盛り上がるなという方が無理だろう。
実際SNSは「ききょう様『まひろ様、いっしょにコント、してくれない?』←違」「ききょうさんが推しのガードに同志を巻き込む厄介オタクになってきた」「伊周兄弟が捕えられる緊迫の場面なのに、このふたりのコントで笑ってしまったではないかw」「あの緊迫した展開からこんなバカな絵面出るの正気かよ! 面白すぎるだろ!」「もうこの2人も現実の批評はともかくほぼソウルメイト」など、さまざまなコメントが寄せられていた。
ただ、このコント展開の果てに起こったのが、定子が髪を切る・・・つまりは世を捨てる(出家する)現場を、ききょうが目撃してしまうということだった。そして次週予告から察するに、この出来事が『枕草子』執筆の動機となりそう。
勝ち組女子のキラキラエッセーと思われた『枕草子』だったが、どうやらこの『光る君へ』では、また違う意味付けがおこなわれそうな予感がする。そして次週は、この『枕草子』ビギンズに加えて、久々にまひろと道長の濃厚ラブシーンがあったり、為時パパが宋人を一喝したり、松下洸平が初登場したり・・・と情報過多なので、特に見逃せない回となりそうだ。
◇
『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。5月26日放送の第21回「旅立ち」では、定子の落飾が起こした大きな影響に加え、越前への旅立ちを前にしたまひろが、道長と再会するところが描かれる。
文/吉永美和子
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