もう一人の「忘れえぬ人」…周明の果たした役割【光る君へ】

2024.6.21 18:30

まひろ(吉高由里子)を利用するために近づいたことを見透かされる周明(松下洸平)(C)NHK

(写真7枚)

吉高由里子主演で、日本最古の女流長編小説『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。6月16日放送の第24回「忘れえぬ人」では、藤原宣孝のどストレートプロポーズ&周明の国際ロマンス詐欺という2つの大事件で、史上最大というほどの盛り上がりを見せた。(以下、ネタバレあり)。

■ この世にむなしさを感じたまひろは…前回のあらすじ

お忍びで越前にやってきた藤原宣孝(佐々木蔵之介)は、まひろに求婚。忘れえぬ人がいることも丸ごと引き受けると言って、都に戻った。一方宋(中国)の薬師・周明(松下洸平)は、日本と宋の交易を実現するためにまひろに接近するが、好意ではなく利用するために近づいたことを見透かされる。周明は「宋は日本を見下している。民に等しく機会を与える国など、この世のどこにもない。つまらぬ夢など持つな」と、冷たくまひろに言い放つ。

まひろ(吉高由里子)を利用するために近づいたことを見透かされる周明(松下洸平)(C)NHK

さらにまひろの友人だったさわ(野村麻純)の訃報が届き、この世にむなしさを感じたまひろは、宣孝の申し出を受け入れると、越前守である父・藤原為時(岸谷五朗)に告げる。国府を訪れた宋の官人・朱仁聡(浩歌)は、周明は生まれ故郷に向かったとまひろには知らせたが、実際はまだ越前に残っていた。周明は、まひろの心に入り込めなかったことを朱に謝罪するが、朱は「お前の心のなかからは消え去るとよいな」と微笑むのだった。

■ 怒濤のスピードで結末に至る越前編にSNS大盛り上がり

周明のまひろ籠絡作戦開始&宣孝殿の予想外のプロポーズと、おそらく『光る君へ』史上最大と言っていいほどの盛り上がりを見せた先週のラスト。これは越前編、空前のカオスになるか? と思いきや、この24回ではそれらの問題が怒涛のようなスピードでそれぞれの結末へと至り、SNSもなにかが起きるたびに大盛りあがり。筆者の体感だけど、一番X(旧ツイッター)のTLの流れが早い回だったように思える。

「忘れえぬ人がいることも丸ごと引き受ける」と宣孝(佐々木蔵之介)から告げられ、驚くまひろ(吉高由里子)(C)NHK

まず宣孝殿が「自分が思っている自分だけが自分ではない」「忘れえぬ人がいても、それもお前の一部」などのパワーワード連発でまひろを揺さぶるというロケットスタート。SNSも「開始3分で宣孝が見せる『全てを包み込む大人の余裕』が凄すぎて凄い」「さすが正規ルート本夫・宣孝殿、包容力ヤバイ」「年の差婚で引かれていた宣孝さま、一気に形勢逆転!!」「佐々木蔵之介に宣孝を当てたスタッフさんの給料が倍額になって欲しい」と、一気に宣孝応援モードに切り替わった。

まひろ(吉高由里子)を抱きしめ、「一緒に宋の国に行こう」と話す周明(松下洸平)(C)NHK

いきなり分が悪くなった周明だけど、まひろがそんな状況とも知らず「一緒に宋に行こう」と、押して押して押しまくる。しかし彼の真意を知る視聴者からは「将来とか未来とかいう言葉を巧みに使う。国際ロマンス詐欺の典型例」「『わかってくれるのは(人名)だけ』・・・周明、そんな結婚詐欺師のテンプレのようなセリフを」「周明の国際ロマンス詐欺が、笑えるレベルで下手くそ。女性との交際経験ゼロなの丸わかりで、かえって好感が高まる」と、完全におもしろがる声が上がっていた。

■ 100%の嘘ではなかった、まひろへの周明の思慕

周明が誤算だったのは、相手が「藤原道長(柄本佑)からの本気のハグ」を幾度も体験し、人間の死にたびたび直面するという、人生のタフさでは負けていないまひろだったことだろう。SNSも「道長君との超ハイレベルな恋愛を経てるので、付け焼刃の国際ロマンス詐欺なんて引っかからないのだ」「相手が目の前で母親を刺殺され、惨殺された友人を手で掘って土に埋めた女だったの、運が悪すぎる」と、作戦失敗を惜しむような声が。

さわ(野村麻純)からの手紙を読むまひろ(吉高由里子)(C)NHK

そうしてあっけなく周明ルートは終了し、宣孝ルートが盤石になったが、その後押しとなったのが、まひろの数少ない友人・さわの死になるとは誰が想像しただろう・・・これにも「え、え、さわさん??」「やはり別れは死亡フラグであったか」「震える筆跡で最後に歌を書くくらい、まひろが好きだったんだね」「最後にまひろの宣孝さまを受け入れる気持ちを後押ししてくれたのか・・・ありがとう、本当によいお友だちだった」という追悼の言葉があふれた。

朱が、周明は越前から去ったことを告げたとき、SNSでは一瞬「まさかミッション失敗で消された!?」という声が一斉に上がったが、それはまひろの前に姿を見せないための嘘だったことに、これまた一斉に安堵の声が上がった。しかし周明のまひろへの思慕は、決して100%の嘘ではなかった・・・ということが朱との会話で明らかになったことにも、また安堵した人が多かっただろう。

「お前の心のなかからは消え去るとよいな」と周明(松下洸平)に話す朱(浩歌)(C)NHK

「朱仁聡さんがいい人過ぎて泣ける」「全部嘘って訳ではなかったんだな」「心の内ではまひろのこと想ってたんだな・・・ごめん国際ロマンス詐欺とか言って」「『お前の心の中から消えるといいな』消えないなこれは〜」「『あれは恋だったのだ』みたいな切ない顔やめろよ。奥行深すぎて泣きたくなるじゃんかよ!」という同情の声に混じって、「周明諦めたん? そんなすぐ諦めんなや。大河あと何回あると思ってんねん」という叱咤激励の言葉もあった。

■ 再登場あるか? 爪痕を残したオリキャラ・周明

まさに越前編の大きな花火のように、パッと華やかにまひろの人生を照らしたかと思いきや、わずか3回で退場が決定した周明。短い出番ながらも、まひろの中国語&我がことすら客観的に見る力を鍛え、「この世に理想郷などない」というシビアな現実を突きつけるオリキャラとして、見事にその役割をまっとうした。

この周明(松下洸平)の笑顔は100%嘘ではないはず… (C)NHK

しかしここで退場というのは、中の人が松下洸平ということも含めて、あまりにも惜しい。直秀(毎熊克哉)と違ってどこかで生きているわけだから、忘れた頃に再登場があることを心の底から祈りたい。

『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。6月23日放送の第25回「決意」では、藤原宣孝と結婚するためにまひろが都に戻って来るところと、政に目を向けなくなった一条天皇(塩野瑛久)に対して、藤原道長がある決断をくだす姿が描かれる。

文/吉永美和子

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