歌ネタで驚異の800万回再生、お笑いコンビ・メンバーの葛藤
2018年、全国的に無名な存在から『第6回歌ネタ王決定戦』で優勝を果たし、一躍、音楽ネタシーンの第一線へ躍り出たお笑いコンビ・メンバー(山口提樹、潮圭太)。息つく間のないスマートな掛け合いで、自身のYouTubeで公開した「しりとり」のネタ動画の視聴回数は800万回再生を突破と、驚異的な数字を誇っている。
現在は広島を拠点に活動しているが、このたび笑いの殿堂「なんばグランド花月」で初の主催イベントを開催し、ジョイマン、ZAZY、ヨネダ2000らと音楽ネタを披露する。イベントを前にした2人に、かつて抱いた音楽ネタへの葛藤、そして憧れの存在について話を訊いた。(取材・文/田辺ユウキ)
■ 「このフォーマットを大事にと、ずっと前から」(潮)
──お2人の音楽ネタの完成度の高さに毎回びっくりするんですけど、過去には営業などで何度かミスをしたこともあるとか。このネタでミスをすると取りかえしがつかないですよね。
潮:だんだん、ミスを恐れるようになってきました(笑)。初めて出た『歌ネタ王決定戦』の生放送でよくあんなネタ(「俺の顔を見ろ」「コンビニ」)をやったなって。
山口:自分たちは「出囃子が鳴り止まないからこのまま漫才をやっていく」というスタイルですけど、その2言目の台詞が「やるんかい」とか「オッケー、やりましょう」などパターンが分かれていて、それによって披露するネタも変わってくるんです。
──「このまま漫才をやっていく」という台詞にもあるように、お2人のネタは音楽ネタである以前に、出囃子を使った「パターン漫才」「フォーマット漫才」だと思っています。「楽器を持たない音曲漫才」というか。音楽ネタではお決まりのキャッチーな動きもなく、サンパチマイクも立てていますし。ラジオでも、ひとつの漫才の形として捉えてもらいたいとおっしゃっていましたよね。
山口:確かに、僕たちのネタのひとつ「俺の顔を見ろ」は一発系に思われがちでしたが、自分たちとしては「出囃子が鳴り止まないからこのまま漫才をやっていく」というフォーマットをずっと大事にしていきたい、とずっと話していました。
潮:「漫才」と言っちゃうと漫才師の方に失礼な気もして(苦笑)。僕らは「漫才」と言いながらやっているけど、コントといえばコントなんですよね。出囃子が止まらないというシチュエーションで歌いながら漫才をやる・・・というコント。つまり「コント『出囃子が鳴り止まない漫才』」なんです。あとおっしゃったように、自分たちは動きに寄せたらまずいんじゃないかという意識はありました。周りから「もっと振付で覚えてもらった方が良い」とアドバイスをもらうこともあったのですが、それだけはやりませんでした。
山口:そこはやっぱり漫才っぽくしたかったんですよね。いつも使っている音楽のトラックも漫才に合うようにしていますし。音発信ではなく、ちゃんとふたりの会話を聞いてもらえる音源にしていますし。
──お2人はもともとコント師だったため、歌ネタでブレイクしてからも「コントを見せたい」という欲が強かったと聞きました。
潮:「歌ネタだけではなく、コントもやっているよ」とアピールしたかったけど、求められるのは歌ネタばかりなので悩んでいました。でも今はまったくそれはないですね。現在の形を追求して、どんどん新しいネタを作りたいという気持ちです。
山口:「自分たちはコント師だから」という考えがあったんですけど、そんなとき、どぶろっくさんとラジオでご一緒させていただいて「それは雑念なんだよ」と。ジョイマンさんも同時期、同じことを言ってくださいました。今はそうやって求められるものを作っても、「俺らの要素はちゃんとネタに出る」と思えるようになりました。
■ 「う○こって言ってるネタでも上品って」(山口)
──お2人の歌ネタは「すごい」と感心できるところと、笑いとのバランスが絶妙ですよね。オーケストラをバックにネタをやったときにそれを実感しました。
潮:実はそもそも「すごい」と感心させようとしていないんです。僕らは100パーセント「おもしろい寄り」でやっていて。
山口:あと昔からどんなネタを作っても「上品だね」とよく言われる。なんでなんだろう? だって「う○こが・・・」と言っているネタでも、お客さんが「うん、上品だね」と言っていて。あれはさすがにびっくりしましたね(笑)。島根出身の田舎の素朴さが出ているのかも?
潮:ネタのなかで誰かをバカにしたり、貶したりしないから、それが品の良いイメージにつながっているのかも。でも、僕らは自分たちがどんな芸人なのかまだはっきり見えてないんです。これはあくまで僕の意見なんですけど、ジョイマンさんなんかは「どう見られているのか」が分かっていらっしゃる気がして。ネタや発言を見るとそう感じるし、それがジョイマンさんの強さの秘訣な気がします。
山口:ジョイマンさんの強さという部分では、一回見たネタでも絶対に爆笑がとれるところがすごい。僕らはまだ「あ、このネタ、見たことがある」と言われちゃいますし。そう考えると達人の域なんですよね。
──そんなジョイマンも出演するのが、7月24日の初主催イベント『メンバーベストネタLIVE「PLAYLIST」』ですね。
潮:最初にジョイマンさんにお声がけさせていただいたら、すぐに「空いているから良いよ」とお返事をいただいて。なのでジョイマンさんをきっかけにスタートした企画なんですが、ZAZY、ラニーノーズという『歌ネタ王』のチャンピオン、さらに賞レースで結果を出しているトニーフランク、ヨネダ2000も揃い、ものすごく豪華な顔ぶれになりました。
山口:極端な話、自分たちがいなくてもお客さんが入りそうな人を集めたというか(笑)。強い人たちの胸を借りる気持ちです。あと、コラボネタもやる予定です。そこで全員の音楽がひとつになります。
──そんなイベントにちなんで最後に聞きたいのですが、お2人がもし音楽ネタのプレイリストを作ったとして、もっとも再生回数が多い芸人さんはどなたになりますか。
山口:うわっ、なにその楽しい質問!(しばらく考えて)う〜ん、俺はどぶろっくさんかな。メロディが上品だし、どのネタも最高。あとなんていうか、抜けている感じが格好いい。
潮:俺もどぶろっくさん。すべてが素敵。下ネタが多めだけどどれもおもしろくて、耳心地もいいし、気持ちいい。そんなの、音楽ネタとして最強じゃないですか。もちろんジョイマンさんも憧れだし、いつか音楽ネタでお2組のような格好いい存在になりたいですね。
◇
『メンバーベストネタLIVE「PLAYLIST」』は7月24日、「なんばグランド花月」にて夜7時半開演。チケットは3000円ほか。
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