『RRR』ガチ勢集結!塚口サンサン熱狂の1日潜入レポ

2024.7.10 20:00

「Lmaga.jpの取材です」の声がけに「L」ポーズ!昼の部参加者たち(7月6日:塚口サンサン劇場)

(写真15枚)

2024年7月、開業71年を迎えた映画館「塚口サンサン劇場」(兵庫県尼崎市)。ここで2022年10月21日の公開から1年8カ月、異例の連続上映をしているインド映画がある。人気映画監督S.S.ラージャマウリが、イギリス植民地時代のインドを描いたアクション超大作『RRR』だ。

しかし同館での1年8カ月にわたるロングラン上映が、惜しまれつつ7月11日に終了する。7月6日に直前のスペシャルイベントとして昼夜2回のマサラスタイルの応援上映がおこなわれ、その模様をインド映画ファン(『RRR』マサラ上映4回目、宝塚版『RRR』を5回観た編集Z)がレポートする。

■ マサラ上映「塚口ナートゥ」…とは一体?

「塚口ナートゥ」としてファンに知られる同館での『RRR』マサラ上映は、拍手、歓声、指笛での応援はもちろん、鈴などの鳴り物、紙吹雪やクラッカーなどの飛び道具の使用もOK。ダンスシーンは立ち上がって一緒に踊る客席参加型。2022年11月の初回実施時は新型コロナ対策もあり「無発声マサラ」としてスタートし、現在は発声も可能になっている。

この日おこなわれた通算11回目、12回目の「塚口ナートゥ」のWEBチケットは発売開始1分で完売という超争奪戦。東京、広島など全国からも「RRRガチ勢」が同劇場に集結した。

劇場に出張出店のタージマハルエベレスト塚口店のカレーで腹ごしらえ(7月6日:塚口サンサン劇場)
圧倒的な荷物量。わたしたち、今から映画を観ます!(7月6日:塚口サンサン劇場)

上映を前に同劇場の戸村文彦さんが「前説」を実施。戸村さんからの「今日初めて『RRR』を観る人ー?」「初めてサンサン劇場へ来た人ー?」の問いかけに劇場からちらほら手が上がり、その度に客席も鳴り物やクラッカーで熱烈歓迎。初心者にもやさしい世界が広がっていた。

改めてマサラ上映のルール説明があったのち、「ナートゥ」ダンスのレクチャーコーナーに。全力で踊り続ける戸村さんを称える紙吹雪が大量投下され、客席のボルテージが急上昇。そのままの勢いで映画本編の上映がスタートした。

戸村さんの前説で乱れ飛ぶ紙吹雪。まだ上映はじまってません!(7月6日:塚口サンサン劇場)

■ ラーマとビーム、ペッダイヤやラッチュにも歓声!

上映中はラーム・チャラン演じるラーマ・ラージュと、NTR.Jr. 演じるアクタルことコムラム・ビーム、「友情」と「使命」で揺れる2人の活躍にあわせ、客席から拍手、歓声があがり、手練れの紙吹雪班、クラッカー班、音響班などが自然と一体となり、唯一無二のグルーヴを生み出していく。

そして「ナートゥをご存じか?」のセリフを合図に客席が一斉に立ち上がり、紙吹雪が舞う中での手拍子とダンス。編集Zの横には戸村さんが飛び出してきて、中央通路で汗だくで踊り狂っている。終盤大きな「ラーマ」コールが自然と起こり、最後はダンスバトルの勝者ビームと、参加者同士のダンスの健闘をたたえる大きな拍手が起こった。

「ナートゥ」は全員全力で!(画像提供:関西キネマ倶楽部7月6日:塚口サンサン劇場)

■ 上映3時間でクラッカー、ひとり200発!?

スコット総督率いるイギリス軍との最後の戦いのシーンで、客席の盛り上がりは最高潮に。途中エドワードの「撃ち方ヤメ!」のセリフ直後、クラッカーを無駄打ちしまくる、という悪ふざけも挟みながら、水を操るビームの活躍に青い紙吹雪、火を操るラーマの活躍に赤い紙吹雪がこれでもかというほど投下され、後方席にいた筆者はスクリーンが半分以上見えない状況に。しかしその熱狂が具現化された紙吹雪芸は、感動を覚えるほど美しかった。

この紙吹雪芸はもはや芸術(画像提供:関西キネマ倶楽部 7月6日:塚口サンサン劇場)

その勢いのままにエンドロールに突入。再び客席が立ち上がり、エンディング曲『Etthara Jenda(エッタラ・ジェンダ)』にあわせ踊り出す。客席はもちろん戸村さんも再び躍り出てくる。そして創造神ラージャマウリ監督&主要キャストとともに「ムルムルムルムル・・・」。こうして約3時間の上映が終了した。

■ 昼の部上映終了後「塚口ナートゥ」参加者に聞いた

まずは「塚口ナートゥ」初参加、元気いっぱいの和歌山大学の5人組。「和歌山での『RRR』マサラ上映は経験済みでした。ただ、今回ついにチケットがゲットできた『塚口ナートゥ』の盛り上がりは想像以上で・・・感動してしまって、興奮がまだ収まりません」。

ラーマコスはボーイスカウト服をアレンジ。4人はサスペンダー駆使したナートゥ(7月6日:塚口サンサン劇場)

続いて夜の部参加者ながら、昼の部開始前から劇場入りしていた男性。「ラーマの父、ヴェンカタ推しです。ラーマとヴェンカタの壮絶な回想シーンがしっかり描かれることで、ラーマの「使命」の重みをより感じられる。ヴェンカタが登場しない『RRR』は成立しない。30回は観ていますが奥が深いですね」。

男性が記念撮影用に準備してくれたお面で遊ぶ参加者たち(7月6日:塚口サンサン劇場)

上映中の盛り上がり以外に、上映前後の記念撮影や、お土産交換も「塚口ナートゥ」の楽しみのひとつ。ちなみに編集Zも、作品にちなんだ型抜きの紙吹雪、自作イラスト付きの飴やお茶、RRR型のクッキー、さらには作品にちなんだアクセサリーなど数々のお土産をありがたくいただき、上映後もファン同士で楽しい会話が続いた。

インドからの初参加者と一緒に記念撮影(7月6日:塚口サンサン劇場)

■ 7月11日の『RRR』最終上映を目前に控えて

この熱狂的な盛り上がりについて、昼の部上映直後、塚口サンサン劇場戸村さんにききました。

──戸村さんおつかれさまでした!とにかくすごい汗ですね。

いやー毎回すごく客席盛り上がりますが、今回はジーンとくるほど特別な盛り上がりで、上映中のダンスにも気合が入りました。体力的に昼夜二回は大変ですが、みなさんに楽しんでもらうためなら「なんだってできる!」と思ってやっています。

エンディング曲『Etthara Jenda』、おそらくテルグ語の歌詞を覚えてみなさん歌ってましたね。本当に『RRR』が大好きな人が集まってくれた、と感動しています。

──ついに7月11日上映終了されるのは、どういった経緯からですか?

1年8ヵ月上映を続けてきましたが、当館はロードショー館なので、夏休み作品を上映するため一旦インターバルを、となりました。しかし公開直後から熱いファンのみなさんにここまで押し上げてもらった。きっとまたスクリーンに帰ってくるはずです。

──これからのイベントの予定や、今後の構想を教えてください。
直近では今週末にインド映画『K.G.F:CHAPTER 1,2』のマサラ上映、8月には邦画で『帰ってきたあぶない刑事』応援上映が続きます。

今回の『RRR』に限らずクオリティーが高い作品はたくさん存在している。そこに宣伝や、ファンの熱量が掛け合わさり、ここまで大きなムーブメントとなっていった。この『RRR』で得た学びを新たな取り組みにつなげ、引き続き劇場にいらっしゃるみなさんと盛り上がっていきたいですね。

上映後、疲れていても笑顔で本にサインする塚口サンサン劇場戸村さん(7月6日:塚口サンサン劇場)
ラージャマウリ監督&サンサン劇場、感動をありがとう(7月6日:塚口サンサン劇場)

■ 全力で楽しむおとなたちはかっこいい!

一説によると、インド本国以上に盛り上がっているとも言われている塚口サンサン劇場でのマサラ上映「塚口ナートゥ」。それは「コスパ」とも「タイパ」とも全く無縁の、時代の流れと逆行する時間の過ごし方かもしれない。しかし、劇場とその日その時居合わせたファンが一緒に作り上げる、生の舞台を観劇するのに近い感覚がある。この日この回限り、唯一無二の特別な映画体験だった。

これから塚口サンサン劇場が仕掛ける新展開はもちろん、赤と青の紙吹雪をコツコツ切りながら、いつか来る『RRR』のカムバック上映も楽しみに待ちたいと思う。

なお『RRR』最終上映日である7月11日は、朝10時、夕方6時半からの2回上映を予定している。『RRR』未体験者は急げ!

塚口サンサン劇場

会場:塚口さんさんタウン1番館(兵庫県尼崎市南塚口町2丁目1-1-103号)

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