もはや影のドン…安倍晴明の暗躍にSNS震撼【光る君へ】
吉高由里子主演で、日本最古の女流長編小説『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。7月14日放送の第27回「宿縁の命」では、道長が娘・彰子の入内をめぐっていろいろな手を尽くすことに。そこで道長に手を差し伸べる人物に、SNSでは「またお前か」という反応が相次いだ(以下、ネタバレあり)。
■ 彰子に不安を感じる道長に…第27回のあらすじ
藤原道長(柄本佑)は娘・彰子(見上愛)に、公卿たちの名前を記した歌を貼った屏風を託して、一条天皇(塩野瑛久)に入内させた。しかし天皇は、待望の皇子を産んだ中宮・定子(高畑充希)にしか目を向けようとしない。天皇は、母親である道長の姉・詮子(吉田羊)に「女御(彰子)をいとおしむことはありますまい」と告げ、定子にここまでのめり込んだのは、自分を操り人形にした詮子のせいだとも言い放つ。
天皇は、披露目のために彰子の元を訪れるが、彰子は天皇の問いかけにも、小さな声で「はい」と応えるのがやっとだった。不安を感じる道長に、安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)は、定子の皇子誕生も、道長にはなんの障りもないということを告げる。さらに道長の力を強める策として、定子を中宮ではなく「皇后」とし、代わりに彰子を中宮にすえる「一帝二后」を提案するのだった・・・。
■ 世間のひんしゅくを買った「屏風歌」事件
道長が「天皇の心をしずめて、世の平穏を取り戻す」という大義名分のもと、娘の彰子をついに入内させた27回。ここから道長くんは、公卿の署名入り屏風で天皇を威圧するとか、先に中宮になっていた定子を無理やり皇后にして、中宮の座に娘の彰子をねじ込むとか、定子が産んだ皇子が東宮になるのを阻止するとか、やりたい放題モードに突入するはずなのだけど・・・そういう強引さは、まだ今の道長くんには見えてこなかった。
まず最初に世間のひんしゅくを買った、花山院(本郷奏多)や公卿による屏風歌が貼られた屏風を、彰子の嫁入り道具とした事件。先日Lmaga.jpで公開された、道長役の柄本佑のインタビューで、柄本は「娘の後押しをしたいという、道長の優しさの現れ」と言っていたが、やはり当時は藤原実資(秋山竜次)のように「これはちょっとないわー」という反応が多かったようで、一条天皇も屏風を見て侮蔑の表情を浮かべていたのが印象に残る。
では現代人の反応はと言うと、SNSでは「彰子様のためのアンソロ屏風」「公卿たちの歌、三蹟である行成による清書、花山院の歌まである屏風、圧が強い」「雅な連判状のようなもんだな、この屏風」「『歌は書かぬ!』と言ったものの、屏風を見て『しまった。こんなにみんな書いてるんやったら俺も書いときゃよかった』って感じの秋山実資中納言、最高」と、実資の反応とセットで楽しんだ人が多数だったようだ。
■ 詮子に同情が集まると思いきや…どっちもどっち?
そんなこんなで、イラッとすることが多かったせいか、一条天皇がついに母の詮子に向かって「僕がこんなになったのはあなたのせいだ!」と逆ギレ。これは詮子に反射的に同情したくもなるが、詮子も詮子で、自分の息子を父・兼家(段田安則)をはじめとする貴族たちを動かすための駒とし、しかも厳しく教育していたという、ソフトな毒親ではあった。ある意味そのツケが回ったとも言えるわけで、どちらが悪いか? と聞かれたら「どっちもどっち」という感じがする。
実際SNSでも「『私はすごく可哀そうな人生を送ったのに』みたいなこと言ったら、自分も母の操り人形だった、父に愛されなかった母の慰み者だったと息子に言われるのきつい」「父に奪われた自己決定権を取り戻すために振るった父譲りの政才が、皮肉にも結果的に我が子の自己決定権を奪ってしまった因果」「帝の心が実母から離れるシーンに、兼家の呪縛がここにも続いてるように見えて、藤原家の業を感じてる」などの、重苦しい感想が続いた。
■ ユースケ・サンタマリアの配役に納得の声続出
このまま彰子の入内作戦失敗か・・・と思われたが、そこで「一帝二后」という奇策を提案したのが、誰であろう安倍晴明だった。実は中宮と皇后が同時に存在するという状況は、道長の兄で定子の父・道隆(井浦新)も、定子を中宮にする際に取った手段。ただこのとき皇后となったのは、先の帝の円融天皇(坂東巳之助)の后なので「一帝」ではない。それを今回は、一人の帝に対して適用しようとするのだから、それをはるかに上回る強引さだ。
確かに今の、まだ心優しいままの道長くんでは考えなさそうな策略。しかしそれが晴明発信とわかった途端、SNSでは「この三郎が一帝ニ后なんて大胆な事する? と思っていたので、晴明案なら納得」「晴明の平安京のフィクサーっぷりよ!」「サンタマリア晴明おそろしいよ〜。内裏のみんな掌の上で転がしてるじゃん」「晴明カウンセリング、身体を回復させるように見えて、確実に闇堕ちの方向にしかいかない」などの納得の声があふれた。
ユースケ・サンタマリアが安倍晴明にキャスティングされたとき「思ってたんと違う!」という声があふれた。しかし実際の晴明は、漫画や映画で植え付けられた「呪術を駆使して妖魔と戦う、シュッとした美青年」ではなく、こんな風に陰陽師という立場を利用して、政治を裏から操るという、ちょっと胡散臭くて世俗的なおっさんだったように思えてくる。
道長の「悪」の部分をすべて背負うという役割が、すっかり定着したように思える晴明。ここからどの時点まで、そのフィクサーぶりを発揮してくれるのか? にも注目だ。
◇
『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。7月21日放送の第28回『一帝二后』では、道長との子どもを産んだまひろの子育てと、道長が彰子を中宮にして「一帝二后」体制を実現しようとする姿が描かれる。
文/吉永美和子
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