花組・聖乃あすか主演作が大阪で開幕、優しさと温もりに包まれて

2024.7.30 18:20

一作前の『アルカンシェル』ではストーリーテラーを演じた聖乃あすか。「言葉」がメインテーマの芝居で台詞がしっかりと観客に届き、頼もしさが増した印象

(写真5枚)

宝塚歌劇花組公演『ロマンチックコメディ「Liefie(リーフィー)-愛しい人-」』が、「梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ」(大阪市北区)で7月30日に開幕した。生粋の花組男役スター・聖乃(せいの)あすかにとって、初の東上公演主演作。7月17日~24日の日本青年館ホール公演を経て、大阪で3日間のみの貴重な公演がスタートした。
 

舞台はオランダの小さな街。新聞記者として働くダーン(聖乃)は、誰もが思わず笑顔になるような言葉を探し、真摯に仕事に向き合っている真面目で優しい人物。聖乃はプリンス的な華やかな容姿に反し、近年は尖ったクセのある役まで幅広く演じてきたが、入団11年目にして温かく正統派な男役を演じたのが新鮮で、彼女の懐の深さをあらためて示した。「僕は未来をあきらめたくない」と歌う優しいバラードは、心に響く声色。愛しい人を思いやるばかりに、悩み葛藤する姿も劇中で見せる。

ダーンと幼馴染のミラ役は、外箱公演初ヒロインの七彩(なないろ)はづき。15年前のある出来事で、笑わなくなってしまったというミラだが、オランダ最大の祭「クイーンズデイ」ではダーンと楽しそうに過ごす様子も見せて、幸せを求める素直さが思わずあふれ出るようなところが愛らしい。ミラの祖父・ヨハンを軽妙に温かく演じた専科・一樹千尋の存在も大きい。

ダーンが働く部署は、地域密着が信条。「ほのぼのやろうぜ」と歌い踊る新聞社の社員たちは、バリッと決めつつもどこか等身大。頼りないけど憎めない新入社員・ピーター(鏡星珠/かがみ・せいじゅ)や、街で迷子になっている元気いっぱいの少年ヤン(初音夢/はつね・ゆめ)など、この街にいる人々のポジティブな明るさが、「なんでもない瞬間が愛おしい」と思える人間像を作っていくのだろうと感じさせる。

初めて芝居で組んだ聖乃と七彩が、フィナーレのデュエットダンスで柔らかく心地よい空気感を放つ
初めて芝居で組んだ聖乃と七彩が、フィナーレのデュエットダンスで柔らかく心地よい空気感を放つ

そんな幸せそうな人々を高台から眼光鋭く見つめるのが、謎の男レオ。侑輝大弥(ゆき・だいや)が風貌からハードにつくりこみ、陰をのぞかせる芝居で新境地を開いている。ダーンやミラとの絡み、その後の展開には驚かされつつも、「居場所」を探すレオの思いに共感する人は多いのではないだろうか。舞台上にはその「居場所」を象徴するような椅子を効果的に使ったセットが組まれ、なかなか斬新。楽しい群舞、カフェやオフィスの場面まで、これらの椅子をさまざまに応用しながら、各シーンがテンポよく展開していった。

自分の求める言葉を探し続けるダーンの未来とは――。言葉の力を信じる聖乃あすか自身と重なるような、温かくホッとする本編の世界観に触れた後は、社員を見守る新聞社社長マイラ役を演じた、花組組長・美風舞良(みかぜ・まいら)のMCを挟んで、ボリューム感のあるフィナーレへ。劇中でもダーンとミラの幼馴染アンナを頼もしく演じた真澄ゆかりなど、娘役の格好いいナンバーから始まり観客を驚かせ、聖乃たちを筆頭にした男役群舞、聖乃と七彩のデュエットダンスなど、華やかでどこかほのぼのとする多幸感に満ちたシーンが続く。

29日におこなわれた通し舞台稽古では、聖乃が「明日から1日までの5公演、1日1日を大切に、お客様に笑顔になっていただけるよう務めます」と、爽やかに挨拶。同作は「梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ」で8月1日まで上演される。1日16時開演の千秋楽公演は、全編ライブ配信が実施される。詳細は公式サイトへ。

取材・文/小野寺亜紀

宝塚歌劇花組 シアター・ドラマシティ公演 ロマンチックコメディ 『Liefie(リーフィー)-愛しい人-』

日程:2024年7月30日(火)~8月1日(木)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(大阪市北区茶屋町19-1)
料金:全席指定8000円
電話:06-6377-3888(梅田芸術劇場)

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