大阪発、52歳で初のフジロックは「出会い」の連続だった

2024.9.15 20:00

「TANK酒場/喫茶」のマスター、フルタニタカハルさん、初めての「フジロック」参戦レポ

(写真14枚)

7月26日〜28日の3日間にわたって新潟県「苗場スキー場」で開催され、9.6万人来場と盛況に終わった音楽フェス『FUJI ROCK FESTIVAL’24』。

苗場で開催25回目のフジロックだが、「実はまだ行ったことないねん」と話すのは、「心斎橋パルコ」(大阪市中央区)のB2フロアにて、365日音楽パーティを続ける「TANK酒場/喫茶」のマスター、フルタニタカハルさん。

大阪のアート/カルチャーシーンを長年引っ張り続けるフルタニさんのふとした一言から始まった今企画。「遅咲きのデビュー戦」を見届けるべく同行取材がスタートした。

■ 大阪から車で9時間、いざ前夜祭へ。

今年は、7月26日(金)〜28日(日)の3日間に渡り開催されたフジロックだが、チーム・フルタニは前日の夜6時から開催される前夜祭に合わせ、朝8時に大阪市内を出発。名神→中央自動車道→長野自動車道と車を走らせ、片道9時間のロングドライブだ。

交差点にたたずむ古谷さん。今回は前夜祭と初日参戦ゆえ、リュックひとつの軽装備で参戦。谷町六丁目を朝8時に出発!

今回の初参戦の理由を尋ねると、「客商売してる身としては、7月の終わりは夏休みがあったり、稼ぎ時やからずっと行けなかった。何度となく人に誘われていたけれど、いつの間にか『自分は行かへんやろ』と思っていた。でも今年は心斎橋パルコでフジロックのプレ・イベントがあったり、観たいアーティストも多かった。知り合いも多く出演してるし、条件が揃った感じ」。

途中、越後湯沢駅にて、同じ宿をシェアする友人をピックアップし、宿に着いたのが夕方5時。薄曇りながら気温20度で夕暮れの心地よい風も。チェックインを済ませ、早速入場ゲートへ。

■ 前夜祭出演のどぶろっくまでに…乾杯23回。

前夜祭ながら多くのフジロッカーで賑わう「オアシス」エリア。フードブースがすでに大盛況

まずは前夜祭の会場のひとつである最大規模のフードエリア「オアシス」へ。ここからが長かった。「会場を一周回ってみたい」というフルタニさんについて歩けば、至るところで知人・友人に声を掛けられ、会場を一周回るまでに乾杯した人23組(!)。大阪の人気者はフジロックでも健在である。

チームで遊びに来ていた、南船場の人気立ち呑み店「ムセンインショック」のメンバーと乾杯!
「ブルーギャラクシー」ステージに初出店の、北浜の人気店「メイクワンツー」でカレーとラム串を購入

「毎年行ってる子たちが、『じゃあフジロックで乾杯しようね』って約束する理由が分かった。非日常空間での乾杯はスペシャルやし、すでにめっちゃ楽しい」。

今年初出店の「メイクワンツー」や「WESTSIDE314」など、大阪組の飲食店への挨拶を済ませ、前夜祭ライブがおこなわれる「レッドマーキー」に着いたのが入場から1時間半後。

初参戦ながらあらゆる場所で呼び止められるフルタニさん。当然、ビールの消費量も右肩上がり…

「レッドマーキーは映像しか見たことがなかったから、まず音のデカさにびっくり。都市型フェスにはよく行くけど、照明ひとつとっても、威力、迫力がすごい。最高峰のフェスって言われる理由を体感できた。

フジロックのことは、20年以上、色んな人から聞いてきたから知った気になってたし、頭でっかちになってる部分もあって。『答え合わせをしに来てる』感じがある。どぶろっくも面白かったけど、やっぱりマメちゃん(DJ MAMEZUKA/毎年前夜祭のDJを務める)は良かったね。初日すら始まってないけど、フジロックは俺の肌に合うわ(笑)」。

■ 快晴の初日は、ドラゴンドラからスタート。

前夜祭で出会ったベテランフジロッカーに「ドラゴンドラに乗るなら朝イチを狙った方がいい」という助言を受け、いち早く会場入り。ドラゴンドラとは、フジロックのメインステージ付近から田代高原の山頂を結ぶ日本最長のロープウェイであり、片道30分かけて山頂にある「デイドリーミング」ステージへ向かう。

フジロック初日。ゲートオープンすぐの9時半ゆえ、「ドラゴンドラ」もスムーズに乗車

「ステージとステージの距離感が分かってなかったけど、しっかり遠いな〜」と苦笑しつつ、ゴンドラからメイン会場を見下ろし、各ステージ間の距離を確認、改めてフジロック会場の広さを痛感するフルタニさん。

山頂にてダンスミュージックとポークヒレカツ丼を楽しんだ後は、Lucky Kilimanjaro(ホワイトステージ)→家主(フィールドオブヘブン)→麻麻はち家の四川蟹みそ麻婆飯(オレンジカフェ)と、会場の端から端までを散策した。

「食べないと元気でないから」と、朝ごはん2食目は「オレンジカフェ」にて四川蟹みそ麻婆飯を

「ずーっと、どこかから音楽が聞こえてくる環境がいいね。フジロックに来る前に友だちから聞いたねんけど、彼は(フードエリアの)オアシスにずーっと座って、遠くから聞こえてくる音楽を楽しんでいるらしい。『それ、楽しいの?』って思ってたけど、初めて来てみて『それも楽しいの分かるわ』って」。

■ トラブル発生、装備の重要性を痛感…!

今回の初参戦に向け購入した装備を訊ねると、「機能性の高いインナーTぐらい。みんなからは、『舐めた感じで行ったらあかんで』って言われたけど、ポンチョもあったし椅子もあったし、10年前に買ったトレッキングシューズがあったから、特に買う物がなかった」。

前日の長距離移動や前夜祭の疲れも見せず午前中から会場を歩き続け、木陰での休憩中にあるコトに気づく。靴のソールが・・・剥がれてる! 経年劣化による加水分解で、ソールがベロンと剥がれてしまったのだ。

「10年前に屋久島トレッキングのときに買った靴」は、時間の経過にはあらがえず…加水分解

会場内に出店していた、アウトドア・フットブランドの「キーン」ブースにてサンダルを購入し事なきを得たが、「装備はちゃんとしたもの用意しなあかんって実感(笑)。今年は天気もいいしポンチョはいらんかったけど、次は雨にも降られてみたいなぁ」って、すでに来年を見据えている様子?

■ 1日参戦ゆえの全力疾走。

「しっかり歩いて、しっかり食べて、しっかり飲んで(笑)」を実践中のフルタニさんとともに、今宵のお目当てのひとつ、GHOST-NOTEが出演するフィールドオブヘブンを再び目指すことに。

Lucky Killimanjaroのライブなどを楽しんだ「ホワイトステージってめちゃくちゃ音いいね!」

「ホワイトステージからフィールドオブヘブンに抜けるボードウォークのデコレーションが好きやわ〜。お金をかけて『すごいもの』を作るんじゃなくて、身近な素材を上手く利用してアートしているのがええなぁ。ライブペインティングしてたGravity freeにも挨拶できたし、音楽とアートが同時に楽しめて大満足」と、フルタニさん。

森の中を縫うように続く「ボードウォーク」では、音と光とアートで移動中も楽しい

この後もGHOST-NOTE(フィールドオブヘブン)→FLOATING POINTS(レッドマーキー)→PEGGY GOU(ホワイトステージ)→ONI(苗場食堂)→電気グルーヴ(レッドマーキー)→in the blue shirt(ガンバンスクエア)と、怒濤のタイムテーブルを乗りこなし、気づけば午前2時過ぎ。

「しんどいけど、ワクワク感が勝ってるし、気分も高揚してるし、答え合わせはまだ終わってない(笑)」と、勢いそのままに深夜の「パレスオブワンダー」ステージへ。

「フィールドオブヘブン」でライブペインティング中のGravityfreeのふたりにご挨拶

■ ハメ外す夜の部はこれから。

フルタニさんいわく「一番観てみたかったステージ」こと、「パレスオブワンダー」は、深夜にオープンする場外ステージであり、入場チケットがなくても遊べるフジロック唯一のクラブ。それゆえに、「アウトドアウエアを着ていない」シティボーイが多いのも特徴だ。

「内装がとにかく格好いい。小バコのライブハウス感もあるし、外にはいい感じのバーがあって、またそこにもDJがいたりして。ここは一生遊べるなぁ〜」と、365日音楽イベントを開催するフルタニさんも唸りっぱなし、踊りっぱなし。

「パレスオブワンダー」内にある木造のライブステージ「クリスタルパレス」で最後の乾杯!

そして時刻は午前4時前。元気すぎるフルタニさんの密着取材に疲労困憊の取材班だったが、「俺、始発のバスで大阪帰るから、それまでimaiくん(group_inou)観てくるわ」と、颯爽とレッドステージへ消えていく背中がとにかく眩しく、2024年の「ハイライト」となった。

今回の最多名言、「フジロックは俺の肌に合うわ」と言い残し、「レッドマーキー」へ向かう男の背中

フジロックより数日後、初参戦の感想を聞いてみた。

「あの後は、始発のバスが動き出す少し前にバス乗り場に着いたから、あまり待つことなく越後湯沢駅までのシャトルバスに乗れました。越後湯沢駅まで片道40分、朝7時15発の東京行き新幹線にも乗れて、昼過ぎには大阪に戻ってきてましたね。今回のフジロックは1日だけの参加やったけど、3日間行ったらもっと違う景色が見えてくるんやと思う。

俺は50歳超えてからの遅咲きのデビュー組で、頭でっかちになっていたから、それの答え合わせは出来たかな? 行かな分からんコトってまだあるねんな、と(笑)。来年? 次に3日間行ったらそれで満足するかも知れへんし、さらにハマるかも知れへん。ウォーミングアップすでに始まってるよ(笑)」

取材・文/藏ヶ崎達也 写真/山元裕人

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