『源氏物語』重版決定、道長の贈り物にSNS涙【光る君へ】
平安時代の長編小説『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を、吉高由里子主演で描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。
9月1日放送の第33回「式部誕生」では、宮仕えをはじめて「藤式部」となったまひろが、一条天皇だけでなく中宮・彰子の心をとらえていくところなど、SNSが盛り上がるトピックが多数。なかでも、道長がまひろに送ったプレゼントは、特に第一回から欠かさず見てきた視聴者を涙させていた(以下、ネタバレあり)。
■ 「藤式部」となったまひろは…第33回のあらすじ
一条天皇(塩野瑛久)の中宮で、藤原道長(柄本佑)の娘・藤原彰子(見上愛)の住まう「藤壺」に出仕したまひろは「藤式部(とうしきぶ)」の名を与えられる。しかし藤壺は昼も夜も騒がしく、まひろは一度里に戻って物語を書きたいと道長に直訴し、道長はしぶしぶそれを承諾。まひろは彰子に里帰りの挨拶をしに行くが、そこで彰子は思いがけず、いろいろな本音を打ち明ける。
まひろはそのまま家に戻り、無事に続きを書き上げて藤壺に復帰。そこで彰子に「帝がお読みになるもの、私も読みたい」と乞われ、まひろは「光る君」が主人公だという、その物語の内容を語る。そして続きを読んだ天皇は「そなたの物語が朕の心にしみいってきた。皆に読ませたい」と、大いに気に入った様子を見せた。喜んだ道長は、まひろに褒美の檜扇を贈るが、そこには幼き日のまひろと道長の姿を思わせる童子が描かれていた・・・。
■ まひろの20年越しの復讐劇にSNS大盛り上がり
無事『源氏物語』が誕生し、次はいよいよペンネーム「紫式部」がいつ定着するか? を待つばかりとなった後半戦。この第33回では、まひろの第2形態といえる「藤式部」の名がついに登場した。以前も解説したがこの名前は、父・藤原為時(岸谷五朗)が花山天皇(本郷奏多)在位中に「式部丞蔵人」を務めていたことに由来する。さらに「藤」が「紫」に転じるのは、藤原公任(町田啓太)が一枚噛むことになるのだが、今回はその公任に意趣返しをするシーンで、いきなりSNSは盛り上がった。
公任と藤原斉信(金田哲)が挨拶に来たときに、かつて自分を影で「地味でつまらぬ女」と評した、そのままの台詞を伝えて2人をドギマギさせたまひろ。この20年越しとなる復讐劇に「さすが陰キャ・・・悪口数十年忘れない」「そう、言った方はすぐに忘れても、言われた方は何年も引きずるものよな」「きちんと根に持ってて、刺せるところまで登り詰めてから言葉で刺した! これは理想の紫式部だ」という歓声が上がっていた。
しかしそこからの宮仕えは、昼はもちろん夜も創作には集中できず(夜の局を天井から縦スクロールで見せるカメラワークが絶品!)、これはまひろならずとも「無理・・・」とつぶやいてしまうはず。しかし道長くんは「まひろと大っぴらに会える」という私情も込みで、執筆のための里帰りを強めに拒絶。これに関しては、「まひろのリモートワークを断固拒否する道長」「先生がここじゃ書けないって言ってるのに融通の効かない編集者やな」と、編集者・・・もとい、道長の対応に苦言を呈する言葉が並んだ。
■「彰子様がしゃべったあああ」その理由を推測する声
たった8日でお家に戻ることになり、宮廷務めは時間の無駄だったか? と思いきや、彰子との出会いは、まひろには大きな収穫だった。女房たちの目を巧みに盗んで、敦康親王(池田旭陽)にこっそりおやつをあげたのを見て、ただの大人しい姫君ではないことを見抜き、さらに「冬が好き」「空の色が好き」という、父親すらも知らなかった情報まで引き出すことに成功。将来固い絆で結ばれる主従の本格的なコンタクトに、SNSも大盛り上がり。
「彰子様がしゃべったあああ」「他の女房は『そこは寒いので部屋の方へ』と彰子様を動かしているけど、まひろは『火鉢をお持ちしましょうか』と、あくまでも彰子様のしたいことを維持する方向で提案している。そりゃあ彰子様も『この人は余人と違う』と思って本当の好みを話すよね」「まひろを見定める陰キャ女子ならではの『あ・・・このひと私を傷つけない』レーダーの精度、素晴らしかった」など、その理由を推し量るようなコメントも見られた。
そしてまひろの物語は見事に一条天皇の心をとらえ「皆に読ませたい」という言葉まで引き出した。これにもSNSは「読み切りでお終いかと思ったら、連載決定からの増刷」「『朕のみが読むには惜しい』やりました! まひろ先生重版出来!」「一条帝は好きなものは自分1人でしまっておくタイプじゃなくて、布教するタイプ。これは枕草子でもそうだったな」「お上、中宮様と回し読みして! あと青いお着物を買ってあげて!」という喜びの言葉が続々とあがっていた。
■ ウイカも思わず「泣けた」と呟いた、プレゼントのシーン
しかし視聴者がもっともワッショイしたのは、道長がまひろに贈った檜扇に、かつての自分たちの姿を映したような絵が描かれていたのを見たときだろう。あの川辺での出会いが2人の原点だったという、それを確かめるような、あるいはすでに懐かしむような道長の思いには、まひろならずとも胸にこみ上げてくるものがあったはず。今回はいろいろ盛り上がりポイントの多い回だったが、最高瞬間風速は間違いなくこのプレゼントの瞬間だった。
「1話で逃げてしまったまひろちゃんの小鳥が、33話で道長くんがプレゼントした扇の中で見つかるとか、なんというキュンの伏線回収!!」「二人しか知り得ない思い出。こんな贈り物泣くに決まってる」「出会った頃の気持ちと変わらないなんて永遠の愛じゃん」「道長くんからもらった思い出扇で口元隠すまひろちゃん、早く見たい」などの声に混じり、ききょう(清少納言)役のファーストサマーウイカまで「扇のところマジあはれすぎ泣けた」と自身のSNSで思わずつぶやいていた。
道長がまひろに期待したのは、おもしろい物語で一条天皇の気を引いて、彰子のいる藤壺に通わせること・・・までだった。しかし「うつけ」と噂されるほど言葉は少ないけど、実は知恵も好奇心もある彰子の心の扉を、そっと開く役目まで果たすことになるとは、想像もしてなかったのではないか。
まさに道長にとっては、本当にまひろが「光」だったのだと確信する回となったし、あの檜扇から『源氏物語』のなかでも人気の高い『若紫』の話が生まれるのかと想像すると、今後の展開がますます楽しみだし、それを読んだときの道長の反応も、ぜひ見せてもらいたいものである。
◇
『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。9月6日放送の第34回「目覚め」では、まひろの作る物語が宮中で評判になっていく様と、道長がさまざまな事件の対応を迫られるなかで、ある行動に出るところが描かれていく。
文/吉永美和子
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