ブラジル音楽の巨星ジルベルト・ジル、京都で16年ぶりの来日

2024.9.15 20:30

ジルベルト・ジル

(写真2枚)

ボサノヴァ以降のブラジルのポピュラー音楽(MPB)の発展を担うシンガーソングライターとして1960年代前半から活躍し、同い年のカエターノ・ヴェロ―ソやミルトン・ナシメントらとともに半世紀以上に渡ってシーンをリードし続けてきた巨星、ジルベルト・ジル。

現在までに60枚以上のアルバムを発表し、MPB史に残る名曲・名盤を数多く生み出してきた彼が、実に16年ぶりとなる来日公演を9月26日、「ロームシアター京都」(京都市左京区)のメインホールで実現させる。

1942年にブラジルのバイーア州で生まれたジルは、幼い頃からルイス・ゴンザーガのバイアォンなどに親しむ一方でジョアン・ジルベルトが確立したボサノヴァに衝撃を受け、ギターを手にして音楽活動を本格化。

その後はカエターノ、ガル・コスタ、ムタンチス、トン・ゼ―らと出会い、当時の欧米圏のサイケ・ロックなどに影響を受けながらブラジル独自の音楽を創造した「トロピカリズモ」運動の中心的な存在として活躍。

一時期は政府の弾圧を受けてロンドンへの亡命を余儀なくされるも、その間にも新たなサウンドを吸収しながら、帰国後にはファンク、レゲエ、アフリカ音楽なども消化しながらより豊かなグルーヴに満ちたブラジリアン・ポップスを展開してその立ち位置を不動のものとした。

先日に惜しまれつつ亡くなった同郷のセルジオ・メンデスがプロデュ―サーを務め、米国のトップ・プレイヤーたちも数多く起用して録音された79年発表の『ナイチンゲール』は、70年代のジルのポップな総決算と呼べる代表作のひとつであり、ライト・メロウなグルーヴが今また新鮮に響く。

そして、80年代にはAORやポップなシンセ・サウンド、90年代にはヒップホップなど、時代ごとに常に最先端の音を取り入れながら尽きることを知らない創造力を示してきたジルだが、2002年には文化大臣に就任してまさに「ブラジルの顔」として尽力したことも、彼のキャリアの偉大さを物語るうえで外すことができない。

その傍らでミュージシャン活動も並行して続け、2021年には「ブラジル文学アカデミー」の永久会員に現役の音楽家として初めて選出され、今年4月にはブラジルの郵便局がジルの肖像を使った切手を発行。音楽的にも社会的にも、計り知れない功績を残してきたスーパースターであることがよくわかるだろう。

今回のツアーは、彼の60年に及ぶキャリアと1971年に始まったワールド・ツアーの50周年を祝うものであり、本人のバックを務めるのはジルの近作のプロデューサーも務めている息子のベン・ジル(g)に、ジルソンズという名前のバンドで活動して高い人気を誇る息子のジョゼ(ds)と孫のジョアン(b)、そしてまだ10代である孫娘のフローラ(key)といった息子や孫たちで構成されたファミリー・バンド。

また、ジルは来年に予定しているブラジル~欧米ツアーをもってライブ・パフォーマーとしては引退することを発表しており、おそらく日本で彼の生の歌声を聴くことができる機会は今回が最後となる。

2023年春にスタートして以来、サリフ・ケイタ、シコ・セザール、ホレス・アンディといった世界の大物たちを独自招聘してきた『KYOTOPHONIE』の熱意によって実現した京都での貴重なステージを、ブラジル音楽を愛するファンなら是非ともお見逃しなく。

『ジルベルト・ジル アケリ・アブラッソ・ジャパンツアー 2024』京都公演は、9月26日(開場夕方6時、開演夜7時)、「ロームシアター京都」メインホールにて。料金はSS席1万5000円、S席1万2000円、A席8000円、B席5000円(VIP席2万円は完売)。

文/吉本秀純

『ジルベルト・ジル アケリ・アブラッソ・ジャパンツアー 2024』

日時:2024年9月26日(木)・19:00〜
会場:ロームシアター京都メインホール (京都市左京区岡崎最勝寺町13)
料金:SS 15000 円、S 12000 円、A 8000 円、B 5000 円

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本