松本潤×長澤まさみ×永山瑛太の豪華共演、大阪で舞台が開幕

2024.9.22 19:00

「正三角関係」舞台写真(撮影:岡本隆史)

(写真13枚)

松本潤、長澤まさみ、永山瑛太らが出演するNODA・MAP『正三角関係』の大阪公演が、9月19日から「SkyシアターMBS」(大阪市北区)で開幕した。日本演劇界のトップに立ち続ける作・演出の野田秀樹が、この時代に投げかける衝撃的な世界に、大阪の観客たちも息を呑んだ。(取材・文/吉永美和子)

■ 「演劇の特性を生かした演出」に脱帽

「正三角関係」舞台写真(撮影:岡本隆史)

本作は、ドストエフスキーの長編小説『カラマーゾフの兄弟』をモチーフに、横暴な父・兵頭(竹中直人)に育てられた「唐松族」の兄弟・・・長男・富太郎(松本)、次男・威蕃(永山)、三男・在良(長澤)の運命を描く群像劇。開演時刻からまもなく、明るい舞台上に人がわらわらと現れ、簡単なセットを運んできたかと思うと、いつの間にかそこはまぎれもない法廷に。このオープニングから、観客は野田のイリュージョンに巻き込まれることになる。

被告人は、兵頭を殺した罪に問われた野性的な花火職人・富太郎。教会で働く心優しい在良と、無神論者の学者・威蕃は、兄の無罪を主張する。兵頭の下男・呉剛力(小松和重)、富太郎の婚約者・莉奈(村岡希美)、ロシア高官の夫人・ウワサスキー(池谷のぶえ)などが証言台に立ち、事件の真相を探っていくなか、富太郎と兵頭が取り合ったグルーシェニカ(長澤/2役)が、重要な証人として登場する・・・。

「正三角関係」舞台写真(撮影:岡本隆史)

野田作品の第一の魅力は「観客が想像力を使ってはじめて作品が完成する」という、演劇の特性をとことん生かした演出だ。今回キーアイテムとなったのが、養生テープ&巨大な薄布。テープが舞台の空間に張られるだけで、観客はそこに教会やリングや研究室を想像し、薄布がひるがえるたびに、さっきとはまったく別の世界がそこに現れたことを、瞬時に理解する。想像力をフル回転させる楽しさで、今作も刺激されまくりだ。

■ 必見の登場シーン、点と点がつながる瞬間

「正三角関係」舞台写真(撮影:岡本隆史)

そして言うまでもなく、観客の想像力を補強し、実は複雑な構造の物語を巧みにナビゲートするのが、まさに「正三角形」ともいうべき関係をなしている松本・長澤・永山の3人。松本は『どうする家康』の気弱な徳川家康とはまったく異なる危険な空気をまといつつ、花火職人としての強いプライドで、物語の屋台骨をガッツリ支える。永山は、実は事件の核心をつく重要な人物として、難解な科学用語を操りながら、松本を巧みにあおっていく。

そして長澤は、純粋な少年・在良と、妖艶な女豹・グルーシェニカという、極端なキャラを見事に演じ分けて、観客をまどわせる。とりわけグルーシェニカの登場シーンは、本当にマジックを見せられたようで、目を丸くした観客がさぞ多かったはずだ。そして尊属殺人の裁判を描くかと思われた世界に、ある歴史的な事件を匂わせる要素が少しずつ浮上。この点と点がつながった瞬間、あまりにも痛ましい光景が、私たちの目の前に広がる・・・。

近年の野田は、日本人がつい忘れかけているけれど、決して忘れてはならない事実を突きつけるような舞台に挑みつづけている。今回もまた「やはりこれは繰りかえしてはならないことなのだ」ということを、しっかりと胸に刻み込まれたような思いだった。今必見の舞台だと間違いなく言える。

「正三角関係」舞台写真(撮影:岡本隆史)

さらに『カラマーゾフの兄弟』を読んでいると、モチーフの使い方のユニークさで、舞台が何倍も楽しくなるはず。時間が許すなら、少しでも読んでおくことをオススメする(4分の1ぐらいまで読んで挫折した私が言うのもなんですが)。

大阪公演は10月10日まで。前売チケットは完売しているが、全公演で当日券の抽選販売(S席1万2000円)を実施している。申込方法などは、公式サイトでご確認を。

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