夜ドラで人気作多数の脚本家・根本氏、朝ドラ執筆の苦労明かす

2024.9.30 07:00

『おむすび』第1回より、高校に入学し新生活が始まったヒロイン・米田結(橋本環奈)(C)NHK

(写真3枚)

年号が平成に変わったその日に生まれた主人公・米田結(橋本環奈)がギャル文化と出会い、やがて栄養士として人の心と未来を結んでいく「平成青春グラフィティ」の連続テレビ小説『おむすび』(NHK総合ほか)が9月30日から放送スタート。その脚本を手がける根本ノンジ氏がインタビューに応じ、制作にかける思いを語った。

■ 朝ドラは1週間がスペシャルドラマ相当のボリューム

『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』(日本テレビ)、『正直不動産』シリーズ(NHK総合)、『監察医 朝顔』シリーズ(フジテレビ)など、「夜ドラマ」で数々の人気作を手がけてきた根本氏。15分×週5日×半年という、「朝ドラ」の特殊な執筆スタイルに対し、どのように取り組んでいるのか。

もともと朝ドラが好きだったという根本氏は、「視聴者としては朝ご飯を食べながら、アハハなんて言いながら観てたんですが、やっぱり自分で書くとなると、この物量が・・・」と語り、こう続ける。

「1週間で75分。普通の連続ドラマ1話の1.5倍以上あるので、毎週がスペシャルドラマ感覚なんですね。これが20週以上続くっていうのは、『いったい誰がこんな企画を考えたんだ』と思います(笑)。でも、とても挑戦しがいのある枠だなと思いながら取り組ませていただいています」。

15分のテンポ感については、「15分ってあっという間に終わっちゃうんですよね。ちょっと台詞の長いシーンを書いたらすぐページ数がかさんでしまうので、どうしようかなと思ってたんですけど、民放の『CMまたぎ』を意識して作っていくと、だんだんできるようになってきました。1週目を書いているあたりでペースはつかめたのではないかと思います」とコメントした。

『おむすび』第1回より、自転車で通学するヒロイン・米田結(橋本環奈)(C)NHK

また、視聴者にとっては未知の世界である「朝ドラの脚本執筆」はどんな工程で進んでいくのかについても明かしてくれた。

根本さんは、「スタッフみんなで構成会議をして、全25週を第1章から第3章まで大きく分け、各章のなかで週ごとの『テーマ』というか『こういうことをやろう』という内容を決めていきます。週ごとの内容が決まったら、そこから『箱書き』(シーンごとにストーリーの要素や展開をまとめたもの)を作り、それをスタッフの皆さんに見てもらって、意見を取り入れて、初稿に入る。初稿が上がったら、また皆さんから客観的な意見をもらって、細かいところを直していく。この『意見をもらって直す』という作業を、二稿、三稿とくりかえしていきます」と、制作工程について語った。

主人公・結を演じる橋本環奈をはじめ出演俳優たちが口々に「キャラが濃い!」と語る本作の登場人物たちについては、「ひとりひとりのキャラクターにつき、かなり分厚い『キャラ表』を作っています」とのことだ。

『おむすび』第1回より、米田家の朝食風景。写真奥左から、父・聖人(北村有起哉)、祖父・永 吉(松平健)、結(橋本環奈)(C)NHK

■ 執筆は折り返し地点を過ぎ、「楽しく書かせていただいています」

長丁場の朝ドラ執筆については、「これまでの集大成・・・と言うのはまだ早いかもしれませんが、昔の自分が作っていたドラマやキャラクターたちが背中を押してくれている感じがして、すごく心強い思いで書いています。それからやはり、朝に放送されるドラマだということを大前提として心がけています。阪神・淡路大震災のエピソードも出てくるので、重いシーンも登場しますが、観てくださった方が不快にならないよう、誰も傷ついてほしくないと願いながら、その時代を生きてた人たちがどういうふうに向き合ってきたのかを、丁寧に描きたいと思って書きました」と根本氏。

現在の進捗状況を聞いてみると、執筆はすでに折り返し地点を過ぎているとのこと。「だんだんスケジュールが詰まってきてはいるのですが、ある箇所が済んだらまたもう一回戻ってプロットを作って共有したり、その都度みんなで話しあう『指差し確認』を必ずやっています。諸々の準備やネタのリサーチを早めにしてもらったり、自分なりにわりと早め早めに手を打ってきたので、いいペースで進んでいるのではないかと思います。いまのところは楽しく書かせていただいています」と、順調なペースで制作が進んでいることを明かした。

台本の仕上がりが早い朝ドラは、そのぶん「練る」「揉む」作業が重ねられるので良い作品になると聞く。制作統括の宇佐川隆史さんは、「根本さんの台本はブラッシュアップを重ねるたびにどんどん磨かれて、『ど真ん中』の王道だけれど、本気が詰まったものになっていく」と語っていた。半年間、『おむすび』の物語を楽しみたい。

取材・文/佐野華英

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