光る君へ・渡邊圭祐、演じる頼通を分析「ハリボテのような…」
1000年の時を超えて読み継がれる小説『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマの名前はまひろ)の生涯を、吉高由里子主演で描く大河ドラマ『光る君へ』。『仮面ライダージオウ』などに出演する俳優・渡邊圭祐は、まひろのソウルメイト・藤原道長(柄本佑)の嫡男で、のちに「平等院」(京都府宇治市)を建立する藤原頼通役で出演中だ。
今後『光る君へ』のネクストジェネレーションの中心となっていく渡邊に、これまでの撮影の思い出や、頼通の役割などについて聞いた。
■ クランクインの待機時間は「蟻を観察してました(笑)」
──頼通が初めてドラマで活躍したのが、皆に「ファイト一発」と言われた第35回「中宮の涙」の御嶽詣でした。あの撮影が、渡邊さんのクランクインだったそうですね。
本当の一番最初は(都を)出発するシーンで、そこから山登りでした。まだ吉高さんともお会いしてない状態で、(柄本)佑さんと本田(大輔)さんと3人で山を登って「これが大河か」と。待機時間中、お2人が映画の話で盛り上がってる横で、蟻を観察したりしていました(笑)。
──「思っていた大河と違う」という世界に。
でもあの撮影自体は、あまり「大変だったな」という印象はないです。山に登ったり、本田さんを引き上げたりとかはしたけれど、CGを駆使している箇所もあるので。だから実際の映像を見たら、「こういう音楽(BGM)を使うんだ」というのを含めて、ビックリしました。本当にすごい場所を登っているという、想像を超えるものになっていました。
■ 体にあの時代が染みついてくる…撮影時の決まり事
──クランクインする前に『光る君へ』には、どのような印象を抱いてましたか?
確か(脚本の)大石(静)さんにお会いしたときに「セットがとにかく豪華だから」っておっしゃってくださって。だからそこは、すごく楽しみにしていたんですけど、クランクインはロケで山の中だった(笑)。でも実際にセットに入ってみると、本当にすごかったです。毎日毎日場所が変わるし、季節も変わる。それは当然のことではあるけど、役者としてそのことのありがたみに、改めて気付けました。
──「セットに演技を助けられてる」とは、ほかのキャストの方もおっしゃってました。
あの空間に入れば、みたいなことじゃないかなと。それに加えて、階段の上り下りは必ず左足から、座るときも左足を前にするとかの決まり事もあって、撮影を重ねるたびに、自分の体にあの時代の雰囲気が染み付いてくるんです。そういった意味では、すごく美術や衣装、メイクなどのスタッフワークに助けられているんだなあと感じています。
■ 頼通は「ハリボテ」? 演じる渡邊自身が分析
──演じている頼通は、どのような人物だと思っていますか?
これは多分最後まで、僕の印象として変わらないと思っていることなのですが、すごく頭がいいです。藤原家の嫡男として「こうあるべき」というビジョンがちゃんとわかっているけど、その中身がともなっていない人でもあります。今風に言えば、親や先生が喜ぶような、「こうすることが正解でしょ?」という立ち振る舞いがわかっているけど、なぜそうするのかはよくわかっていないんですよ。だからハリボテというか、一枚はがしたら「あれ? 中身入ってないじゃん」みたいな人物だな、という風に思います。
──現時点ではそつなく行動していますが、自分が政を動かす立場になってくると、そのハリボテ感が見えてしまうことになるのでしょうか?
あの御嶽詣のときに「僕も行きます」と言って、道長に「お前、大丈夫か?」と聞かれて、ちょっと悩むシーンがあったと思うのですが、あれもやっぱり「御嶽詣についていくのが、嫡男として正解でしょ?」という行動で、(ついていく)理由を聞かれると「うーん」ってなっちゃうんです。
そういうことがどんどん繰り返されて「おや?」ってなっていきます。とは言っても、(第35回段階で)まだ16歳の設定ですから。今の段階では「まだ若いしな」という風にとらえてます。
──ここから平等院鳳凰堂を作るような人になるという、立派なゴールがありますから。
これから道長が中身を詰めていき、周りの公卿とか姉弟にも支えてもらうことになります。いろんな「こうなっていくんだよ」という様を見ることで、頼通もいろいろ学んで、立派な人になっていくんじゃないでしょうか。
──ちなみに頼通とまひろは、どういった関係になりますか?
普通に有名な作家さんに対する感じです。「あ、『源氏物語』読んでます」みたいな(笑)。道長と違って、そんなに深く絡むことはないと思います。
■ 現世でも語り継がれている事実「ちょっと奇妙な感じ」
──『光る君へ』に出演したことで、『源氏物語』や平安時代について、改めて考えたことはありますか?
自分の姉(彰子/見上愛)を助けた『源氏物語』が今も読まれているとか、自分の演じた役が建てた建物が現在も残っているとか、自分たちが(ドラマで)関わったものが、未だに現世でちゃんと語り継がれている。それは素晴らしいことではあるけれど、ちょっと奇妙な気もします。ほかにも「こういう実話があるんだよ」という役をやったことはありますけど、それとはジャンルが違う気がして。
──1000年という時間のスケールが、そうさせているのかもしれないですね。
特に宇治に来ると、すごく頼通という人が尊敬されているのがわかります。僕は宮城県出身なので、仙台の伊達政宗公みたいだなあと(笑)。そういう意味では、すごくやりがいのある役をいただけたと思います。
あとは「『源氏物語』があるから、こういう小説が生まれた」とか、あの時代の人がいろんな日記を遺してくれたから、今があるとか。そういう文献があって、歴史が重なっていくことの素晴らしさみたいなものも、改めて感じています。
──『光る君へ』がないと、それが途方もないことだったとは、なかなか気づかなかったかもしれないです。
そうですね。すごいなあと思いつつも、意外と人間の根底にあるものって、そんなに変化してないんだなということも再認識しました。人ってあんまり変わらないということを実感するけど、「変えようと思えば変えられることも、無限にあるんだよ」ということも、同時に教えてくれている気がします。
──頼通の今後の見どころは。
父からバトンを受け継いで、政にガンガン関わっていくようになるんですが、そこから彼の苦悩が見えてきます。でも未熟だった部分が成熟していくさまも、ちょっとずつ見えてくると思うので、子どもを見守る感覚で、温かく見ていただけたら。
作品としても、まひろの最後をどういう風に描くんだろう? というのは、僕たちも楽しみにしているところ。見どころらしい見どころがまだまだたくさんあるので、ワクワクしながら放送を待っていただけるとうれしいです。
取材・文/吉永美和子
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