「ラージャマウリ監督来るまでやる」RRR公開2周年マサラ
2024年10月21日は、人気インド映画『RRR』が日本公開されて2周年の記念すべき日。SNSには「何度でも言おう! RRRが大好きです! 公開2周年おめでとうございます!」「観る前と後で間違いなく人生が変わった映画」「私が人生で一番好きな映画と出会って2年」といったお祝いコメントや、多くのファンアートが投稿され、2年経過した今も、ドはまりしたファンの熱量は継続中だ。
◆『RRR』日本公開2周年を祝うイベントも続々
そんななか、開業71年のミニシアター「塚口サンサン劇場」(兵庫県尼崎市)では、10月18日より『RRR』が1週間限定でカムバック。同劇場では、2022年10月21日から1年8カ月、同作品は異例の連続上映を続け、惜しまれつつ7月11日に上映終了していたが、公開2周年を記念し『RRR』が、同劇場の戸村さん曰く「やっと、なのか、もう?なのか」スクリーンに戻ってきた。
そして、公開2周年記念のスペシャルイベントとして同劇場で、昼夜2回の「マサラスタイル」の応援上映がおこなわれ、昼夜ともに「シアター4」の155席の客席は早々に満席に。全国から「RRRガチ勢」が一堂に集い、上演前後も含め1日「お帰りナートゥ」で大いに盛り上がった。
◆さすが「聖地」やっぱり準備すごいぞ、常連組!
「夜ナートゥ」すなわち、18時からスタートするマサラ上映に参加する筆者が劇場に到着したのは、15時半過ぎ。待合室にはすでに6名ほどのお客さんがいる。「これはちょうど昼の部参加者が引き上げるところかな・・・?」と思ったが、劇場スタッフに確認すると「昼の部もうすぐ終了です」とのことでまだ上映が終わっていなかった。上演2時間以上前から来ているとは、さすが『RRRガチ勢』の集合は早い。
外にいても絶賛上映中の「シアター4」から、応援上映ならではのクラッカーの音や「キャー」というかむしろ「ギャー」みたいな絶叫が絶え間なく漏れ聞こえてきた。まさにラストのあのシーンだったのだろうか・・・。
待合室では、穏やかにお土産のお菓子や、ファンアート、紙吹雪などのアイテムを参加者同士交換しながら「よろしくおねがいします! 今日どの辺の席ですか?」など話に花を咲かせている人、参加者に配る品を袋に詰める作業に集中する人、記念撮影用に登場人物のお面を貸し出してくれる人・・・など、それぞれ思い思いに上映前後の時間を過ごし、そのうち上映終了した「昼の部」参加者と、これから参加する「夜の部」参加者が続々集まりはじめ、待合室は150%以上の入りに。
◆ 常連「職人」も、劇場スタッフも本気! 全力で楽しむ大人たちが集結
「夜ナートゥ」本編上映前に、同劇場の戸村文彦さんが恒例の「前説」を実施。戸村さんからの「初めてサンサン劇場へ来た人ー?」などの問いかけに、今回も客席からちらほら手が上がり、その度に参加者みんなで鳴り物やクラッカーで歓迎。「初『RRR』で、初マサラで、初塚口の人」という呼びかけにも挙手する参加者がおり「ようこそ!」の気持ちを込めて、一層客席は盛り上がった。
その後「ナートゥ」のダンス実演なども経て、会場を温めまくった戸村さんが大きな拍手とともに一旦退場。マサラ上映初心者もベテランも一体になって、期待に胸を膨らませ上映がスタート!
上映中は、今回も塚口のマサラ上映の名物「クラッカー班」「紙吹雪班」「音響班」などが各自の得意を活かして大活躍。「クラッカー職人」たちが、定番のアクションシーンのみならず、英国兵「ロバート」がバイクを「キッキンキッキンキッキン」する場面や、名もない英国兵の敬礼など、細かすぎるシーンにもあわせ、ぴったっとあわせてクラッカーを打つ。
最高潮に盛り上がるラストの決戦のシーンでは、英国の司令官「エドワード」の「撃ち方ヤメ」のセリフを受けて過去最大、最長かと思われるクラッカーが打ち鳴らされ、「スコット総督」の指令は完全にかき消されていた。完全に「塚口ナートゥ団体芸」が出来上がった瞬間だった。
そして熟練の「紙吹雪職人」を中心に、主人公の「ラーマ」の活躍にあわせて、イメージカラーの赤の紙吹雪、「ビーム」のイメージカラーの青の紙吹雪を勢いよく放ち、「ジェニー」登場にあわせ衣装のカラーのピンク、ラーマの父親「ヴェンカタ」のシーンには白、「コムラム・ビームド」のシーンには葉っぱの緑の紙吹雪が、やさしく舞い上がった。
今回、特に紙吹雪芸で感動的な場面があった。それは「ラーマ」と「ビーム」の出会いの場面となる、少年救出のシーンで、インド国旗の3色(ヒンズー教を表すオレンジ、イスラム教を表す緑、平和を表している白)が、美しくシアターを彩った。これはもはや芸術。はかない一瞬の出来事に、我らにできるのは、そっと手を合わせることだけ・・・。本当に幻だったのかもしれない。
そしておなじみ「ナートゥをご存じか?」のセリフを合図に、戸村さんが勢いよく中央通路を踊りだしてきて、全力ダンス。このシーンは客席も全員スタンディングで、踊り歌い、画面がほぼ観えなくなるほどの紙吹雪を撒く。それぞれ「ビーム」「ラーマ」「ジェイク」、そして戸村さんこと「トーム」を全力応援し、スタッフも参加者も、この上ない一体感に包まれた。
最後は、エンディング曲『Etthara Jenda(エッタラ・ジェンダ)』を歌い踊って、約3時間の上映が終了すると、全力ダンスで息を切らした戸村さんが今まで見たことないほどフラフラの状態で、ステージに再び登壇。
「公開2周年をこうして満席の客席でお祝いできて本当にうれしい! 3周年もみんなでお祝いしましょう! そしてラージャマウリ監督が塚口に来るまで続けたい!」と高らかな宣言に客席も大きく沸いた。ラージャマウリ監督、塚口でいつまでもお待ちしております! 母なるインド万歳!
◆塚口サンサン劇場でのマサラ上映、初参加者の反応は?
上映前の事前アンケートでちらほら手が挙がった初参加、戸村さん曰く、毎回イベント開催の度「2~3割くらい同館のマサラ初参加者がいる」とのことだが、実際体験してみてどうだったのだろうか?
神戸市の女性は、「参加してみたいと思っていた塚口サンサン劇場のマサラ上映にやっと来れた。『RRR』は大好きで何度も観ていましたが、マサラ上映はまた全然面白さが違う。あの紙吹雪ってどうやって投げているんですかね? 自分は全然うまく投げれなかったんですが、すごくきれいでびっくりしました。実は今日誕生日で、最高に楽しい誕生日になりましたよ!」と興奮冷めやまぬ様子。
155人全員でひとつの作品を作っていく感覚がある「塚口サンサン劇場」のマサラ上映、初めての人もガッツリ楽しめたようだ。
◆ 家でひとりで作品が楽しめる時代に、みんなで劇場に集まる楽しさを!
上映終了直後、戸村さんに改めてお話を聞いた。
──戸村さん、今回も昼夜二回のマサラ上映、踊って踊って満身創痍ですね!
老体に鞭打ってがんばっています。多くの人に楽しんでほしい、そのために今回も全力でした。常連のインド映画ファンも初めて来た人も含め、満席2周年をみんなでお祝いできて、本当にありがたいです。再上映を楽しみに待っててくれた人が多かったのか、今回紙吹雪の量もいつも以上に多く、上映後の掃除には1時間半以上かかっています。
でも、お客さんひとりひとりが自分の好きな作品を配信やいろいろな手法で観れる今の時代に、映画館の大きなスクリーンで同じ映画をみんなで観る楽しさを、ひとりでも多くの人に味わってほしいと願って、スタッフみんなで協力しました。
──いつもスタッフのみなさん、お掃除ありがとうございます! そして上映中はもちろん、その前後も『RRR』ファン同士でワイワイ盛り上がるのが塚口サンサン劇場らしいですよね?
大人になったら友達ってなかなかできないですよね! でもこうして当館のイベントや好きな映画を通じて、参加者同士が交流して友だちができたと聞くと、本当に映画館冥利に尽きます。これをきっかけに、塚口サンサン劇場はもちろん、他の映画館も含め、劇場にたくさん足を運んで、映画という共通点で一緒に盛り上がってもらえたら。
──映画を通じた友情って素敵です。今後もイベント上映はありますか? 予定をお聞かせください。
10月24日まで1日2回『RRR』の通常上映があります。その後は、こちらも大人気のインド映画『マスター 先生が来る!』の上映があり、11月23日にマサラ上映を実施します。また、11月22日より限定上映の『ミッシェル・ガン・エレファント「THEE MOVIE」LAST HEAVEN 031011』(2009年公開)も、チバユウスケさんの命日である11月26日にオールスタンディングライブスタイル上映をおこないます。劇場にぜひお越しください。
◇
こんなに「好き」の気持ちを発露できる空間はそうそうない。未体験の人は、気になる作品があればぜひ一度体験してみることをお勧めする。今後もさまざまなイベントを計画しているとのこと、詳細は劇場の公式サイトや公式Xからチェックを。
【インド映画『RRR』とは】
『RRR』は、主にテルグ語映画を製作する人気映画監督S.S.ラージャマウリが、イギリス植民地時代のインドを描いたアクション超大作。テルグ語圏の大スター、ラーム・チャラン演じる「ラーマ」とN・T・ラーマ・ラオ・ジュニア演じる「ビーム」、そしてヴィラン的役柄含め、多くの魅力的なキャラクターが織り成すドラマチックな作品は、本国のみならず、日本でも興行収入24億円突破(2024年7月時点)する記録的大ヒットに。日本でのインド映画ファンの裾野を、大きく広げたエポックメイキングな作品のひとつ。
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