大阪万博のデザインも担当、石岡瑛子の力強い作品400点が兵庫に

2024.10.27 07:00

写真、デザイン、コピーワークそれぞれに見応えのあるPARCOのポスターを数多く展示。あわせて展示の端々に石岡瑛子の言葉が掲示される。ここでは、“自分の本能的ジャッジメントというのを確実に信じているところがある。下手にマーケティングの裏付けをやるよりもずっと成功率が高い。”とある

(写真7枚)

「兵庫県立美術館」(神戸市中央区)で開催中の『石岡瑛子 I(アイ)デザイン』は、石岡瑛子って誰だ!?という人でもシビれること間違いなしな展覧会。というのも、石岡の手がけた力強いクリエイティブの展示に加えて、彼女が残した言葉もあわせて紹介することで、メッセージごと「読む」ような展覧会が実現されているからだ。

■ 朱書き入りの校正刷りまで…約400点

めりはりの効いた展示空間が美しい。見えているのはフランシス・フォード・コッポラ監督との仕事の数々

大学を卒業後、資生堂宣伝部に就職したところから仕事をスタートさせた石岡。その後の活躍は広告に留まらず、デザイン、ファッション、出版、舞台芸術、映画といった垣根を軽々と越えて、かつ多くのプロフェッショナルを巻き込みながら世界的に活躍してきた。2012年に彼女が亡くなった後も、回顧本の出版や展覧会の開催が続き、今なお再評価の波が広がっている。

展示は、資生堂、PARCOなどの広告から始まり、雑誌や書籍、教科書までの出版物、デザイン科の学生だった頃の作品やデザイン賞への出品作、さまざまなレコードジャケット、そして、海外の巨匠たち(たとえばマイルス・デイヴィス、フランシス・フォード・コッポラ)との仕事まで、約400点が並ぶ。

朱書きの入った校正刷りの紹介も多数。初期作の「資生堂ホネケーキ」1964年からすでに徹底した朱書きが見られる

これでもまだまだ全貌紹介というわけではないのが石岡瑛子のすごみだが、デザインワークを中心にした紹介に絞りつつ、彼女の仕事を俯瞰して見られる展示となっている。

■ 展示はここだけ、貴重な2ショット写真も

石岡瑛子は大阪万博の公式デザイナーも務めた。「EXPO’70 日本万国博 日本万国博覧会ポスター」1970年

展示を通じて伝わってくるもうひとつの大きな要素が、彼女の「行動力」だ。たとえば、ドイツの俳優・映画監督のレニ・リーフェンシュタールの写真に惹かれて、自ら雑誌の企画や展覧会を企画。レニを取材するために当然のようにドイツを訪れ、展覧会では図録から会場デザインまでを手がけている。

あるいは、メキシコの画家、タマラ・ド・レンピッカの作品集をつくるためにメキシコを訪れ、その様子は当時『NHK日曜美術館』として放映されたが、会場ではその映像の再編集版が紹介されている。

なお、「兵庫県立美術館」だけの展示として、雑誌『VOGUE』の取材のために再訪した100歳のレニと石岡の2ショット写真も展示。この撮影を担当した美術家の米田知子は「兵庫県立美術館」との縁が深く(12月からの特別展でも出品予定)、それゆえ実現した特別出品だ。

各時代ごとに関わるカメラマン、イラストレーター、コピーライター、モデルらを見ていく楽しみも。「角川書店:女性よ、テレビを消しなさい 女性よ、週刊誌を閉じなさい」1975年
学生時代につくったという「ECO’S LIFE STORY」は、それまでの自分の人生を絵本仕立てにしたもの。すごいクオリティ

会場の最後には、石岡瑛子が亡くなる数か月前に収録されたインタビュー音源が流されている。展示の合間に目にしてきた彼女のメッセージの数々が肉声化されるような感覚ともなって、彼女の存在自体が立体的に立ち上がってくる仕掛けといえる。石岡瑛子の回顧に決して留まることなく、観る者を、現代のクリエイティブを鼓舞するようなメッセージ性に満ちた展覧会となっている。

会期は9月28日~12月1日、月曜休館、観覧料は一般1600円ほか。公式図録(1980円)は、片ページに石岡瑛子のメッセージ、その対向ページに作品画像を掲載するという構成で読み物としても秀逸だ。

取材・文・写真/竹内厚

『石岡瑛子 Iデザイン』 

期間:2024年9月28日(土)~12月1日(日)
月曜休館(ただし祝休日の場合は開館、翌日休) 
時間:10:00~18:00 
会場:兵庫県立美術館(神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1)
料金:一般1600円 大学生1000円
電話:078-262-1011

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