半額になる? 神戸の銭湯イベント、「最難関の湯」も参加

7時間前

銭湯ファンから神戸「最難関の湯」と呼ばれる「高丸湯(高丸温泉)」もスタンプラリーに参加。写真は女湯

(写真7枚)

現在神戸市では、神戸市内にある29の「銭湯」(一般公衆浴場)を巡るデジタルスタンプラリーを開催している。市内在住・在勤・在学の18~49歳は、通常450円の入浴料金が半額になり、さらにスタンプを集めると豪華記念品がもらえるという。これはなかなかふとっぱらな企画だが・・・実際どれくらい盛り上がっているのか? 銭湯ファンから神戸「最難関の湯」と呼ばれる「高丸湯」に行ってみた。

◆ 週4日3時間の営業、神戸の最難関の湯「高丸湯」へ

銭湯ファンから神戸「最難関の湯」と言われる、「高丸湯」(神戸市垂水区)もこのスタンプラリーに参加している。営業日は火・木・土・日の週4回、時間は夕方4時から夜7時までの3時間という、週に12時間しか営業しないスタイルが、「最難関の湯」と呼ばれる所以だ。

「高丸湯」は1957年創業。銭湯をはじめたご主人が亡くなってから現在まで、「おかみさん」と呼ばれ常連客から慕われる植岡節子さんが、ひとりで10年以上切り盛りしている。コンパクトな作りながら、「メタケイ酸」の含有量が温泉基準を満たす地下からくみ上げている水の良さと、おかみさんのさりげないやさしさに、地元の常連客はもとより、遠方からも長年足を運ぶ銭湯ファンも多い。

レトロな高丸湯の入り口。今は亡きご主人の愛した風景がタイル絵に

しかし、「銭湯を続けるのはかなり大変。燃料費も上がっていて、開け続けると正直赤字。従業員を雇えるような状況でもないから、準備もそうじもひとりでやるしかない。これをいつまで続けられるかわからないが、通ってくれる常連さんのことを考えると、あと少し、できる範囲で、なんとか営業を続けていきたい」とおかみさんが話すほど、現状は厳しい。

◆「高丸湯」を20代女性が初体験。人気は水風呂

取材当日、スタンプラリーをきっかけに初めて「高丸湯」に来たという20代の女性に出会った。「最近まで銭湯には行ったことがなく、友人に誘われてはじめて行ってみて、家のお風呂と違って広々した湯舟で足を伸ばして温まれるっていいなと思うようになりました。普段は家が近い『六甲おとめ塚温泉』に行くことが多いかな。今日『高丸湯』には、銭湯好きと誘い合わせてきましたが、水風呂の温度がちょうど良くて自分にあっている。気に入りました」とのこと。

おかみさんが迎えてくれる番台。帰りも「風邪ひかないでね」などと優しく声をかけてくれる

この女性の話す源泉掛け流しの水風呂は「高丸湯」の名物。おかみさんは「源泉を地下からくみ上げているから夏は冷たく、冬はあたたかく、体感が違うの。この水風呂が好きで、湯舟を何往復もして、今日は10回入ったとか、報告してくれる人もいるわ」と話す。筆者もこの日、温冷浴を心ゆくまで堪能した(11月からこの水風呂は土日のみなので、水風呂目当ての方はご注意を)。

◆ 神戸の銭湯の廃業を食い止めたい…神戸市の思いと、銭湯経営者の思い

スタンプラリー企画意図について神戸市健康局環境衛生課に聞くと、担当者は「震災前、神戸市内に180件ほどあった銭湯は、どんどん減り続けて現在29カ所となりました。神戸の銭湯の廃業を食い止め、銭湯文化を守っていくための企画です。特に若者に銭湯が根付いていないことを課題と考え、スタンプラリー対象は18~49歳になっていますが、幅広い世代に気軽に銭湯に足を運んでほしいと考えている」と話す。

1万円、3万円の景品のコースの応募は先着受付が終了しているが、入浴の割引および、5000円のプレゼントコースは現在も受付中

実際にスタンプラリーを利用し、「高丸湯」を訪れた若者は、どれくらいいるのだろうか?「スタートから3週間で70人以上来ているかな。ただ、スタンプラリーをきっかけにうちに来てくれても、その後再訪してくれる若い人は少ない。そのとき1回だけではなく、リピートしてもらうためにはどうしたらいいのか、本当に悩ましい。常連さんはみんな50歳超えているから、『対象外や~』って笑っているけど、もっと多くの人が恩恵を受ける仕組みがあれば・・・」とおかみさんは話す。

確かに他の銭湯と比較しても、立地が若者が多いエリアではないので、厳しい部分がありそうだ。しかし「高齢者がひとりで銭湯をやっているから、照明がきれたら交換を手伝ってくれたり、湯上りのドリンクの仕入れについて考えてくれたり、お客さんたちがいつも気にかけて、あれこれ助けてくれて、本当にありがたいんよ」とおかみさんが話すように、銭湯好きに愛されるあたたかさがここには確かにある。

神戸市垂水区の住宅街にある「高丸湯」最寄り駅は山陽電車の滝の茶屋駅

◆廃業時の「思い出語り」をする前に、各自ができることは?

震災からもうすぐ30年が経つが、阪神・淡路大震災後の数カ月の間、水もガスもライフラインが止まった町で、被災者が銭湯に長い長い列をなす光景を、今も筆者は忘れられない。あのとき、苦しい状況のなかで、温かいお風呂に身も心も癒された人がたくさんいたはずだ。そんな非常時にも、平常時にも、多くの人を癒やし続けてきた銭湯が、神戸に限らず全国各地で続々廃業していっているのが現実。改めて継続的な公の支援が必要だと感じた。

また、これは銭湯に限った話ではないが、いろいろな施設や店がなくなると決まってから「思い出語り」をしても、もう遅い。残したい場所があるならば、日頃からしっかり利用してお金を落とす、そしてから大きな声で愛を叫んで周囲にその良さを伝え、自らその場所を守るためのアクションをしていきたい。

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