ニッセンの紙カタログが話題、今も「分厚い」理由を聞いた
インターネットが普及した現代において、大抵の買い物は家にいながら済ませることができる。ECサイトの普及でネット上で商品画像を手軽にチェックできることもあり、長年発行してきた紙カタログを廃止する企業も。
そんななか、X(旧ツイッター)であり明けさん(@Yuakari_Yuzutsu)による「ニッセンの分厚いカタログを眺めるのが娯楽だった子どもは私だけじゃないよね?」という投稿がされると、「めちゃくちゃ分かります」「私も好きでした!」など共感の声が相次ぎ、10万いいねの大反響を呼んだ(2024年11月現在)。
ペーパーレス化が進むこの時代でも、人々の心を掴む「ニッセンカタログ」。その歴史やこだわりを、通販の衣類メーカー「ニッセン」(本社:京都市南区)の広報担当者に話を訊いた。
■ 1970年から続く「カタログ」
──ニッセンさんといえば「カタログ」というほど浸透していますが、いつから発行されているのでしょうか。
弊社の前身となる「日本染芸」がカタログを使った呉服販売を開始したのは、1970年のことです。1974年には社名を今の「ニッセン」に改め、自社オリジナルの商品を掲載したカタログ「ヴェルダム」、1975年には社名を冠したカタログ「ニッセン」が創刊されました。
──半世紀近い歴史があるんですね。発端となった投稿に「分厚いカタログ」というワードがあり、それにまつわる思い出話もたくさん寄せられていますが・・・。これって、いつ頃のカタログなんでしょう?
おそらく1990~2000年代のカタログかと。当時はレディースアパレルから下着、インテリア家具、メンズアパレルまで、家族全員で見ていただけるようなラインアップを網羅し、すべてのカテゴリーが一冊に詰まった分厚いカタログでした。
──家具まで! すごい情報量ですね。
2000年代というのは、日本国内で人口が多いゾーン「団塊ジュニア世代」が20代後半から30代をむかえ、お仕事や子育てに大忙しという時代でした。弊社では1998年にオンラインショップが本格稼働していますが、当時は今のように個人でスマホやPCを持っている時代ではありませんでした。家族間でカタログを回し読みし、注文はまとめてするというのが主流の買い物方法だったようです。
ネットの普及により、自宅でショッピングができる利便性がより高まったことで市場が大きく膨らんでいき、それに伴い「ニッセンの分厚いカタログ」が加速していったのではないでしょうか。
■ いかにして紙の上で「楽しい買い場」を表現するのか
──なるほど。現在ではカタログのボリューム感も変わったんでしょうか?
ちょっと分厚くなりすぎたニッセンカタログですが、プラスサイズブランド「スマイルランド(2002年創刊)」のカタログをはじめとし、「別冊カタログ」が続々と誕生したのもこの時期です。
当時は、専門特化したオリジナル商品の開発力が高まり、独自の仕様設計によるサイズ展開の拡大、メンズアパレルやミセス向けアパレルなど、多彩な商品展開が進む時期でした。性別・年代を問わず、お客さまが買い物を楽しめるような場を追求するうちに、カタログの分冊化が進みました。
──よりお目当ての商品を探しやすくなったんですね。誌面の内容はどのように変化していったんでしょうか?
ちょっとした「憧れ感」を強く感じてもらうため、外国人のモデルを起用した時代、人気のファッション雑誌やドラマに出てくる著名な芸能人をイメージキャラクターに起用し、トレンドファッションの楽しさを提案した時代、SNSでフォロワー数の多いインフルエンサーと一緒にコラボレーション商品を展開した時代、その時代ごとにカラーがあると思います。
近年では紙面とウェブサイトを融合させることで、これまで以上にご提案に広がりを出すような仕組みを作りました。また、社員がモデルとなり等身大のコーディネートを紹介するという試みも。いかにして紙の上で「楽しい買い場」を表現し演出するのか、それぞれの時代で考えてきました。
──「ニッセンカタログ」を追っていると時代の変化も分かりそうですね。最後に、こだわり抜いたカタログを発行し続ける理由を教えてください。
ニッセンが提案したいのは「目的買い」のための商品カタログではありません。まるでウィンドウショッピングをしているかのように、わくわくしながら商品を眺め、コーディネートなどを色々と想像してちょっと楽しい気分になってもらったり、商品に一目ぼれして思わず買ってしまうような、お客さまにとって楽しい「買い場」となるカタログを目指しています。これは50年変わらない想いです。
理想は「楽しくて、思わず時間を忘れてしまった!」「没頭してたっ!」となっていただけること。SNS上のコメントを拝見していると、いろいろな楽しみ方や接し方をされているのだとわかり、非常にうれしく思っています。
◇
「商品を紹介する」という枠におさまらず、ショッピングの歴史や社会の変化とともに歩んできた「ニッセン」のカタログ。2025年で創刊50周年を迎える。
取材・文/つちだ四郎
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