道長の逆転劇開始、防御の弱さを突かれた天皇【光る君へ】

15時間前

道長に「政とはなんでございますか?」と問答する実資(秋山竜次)(C)NHK

(写真6枚)

吉高由里子主演で『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。11月10日放送の第43回「輝きののちに」では、道長に対してナイスファイトを繰り広げていた三条天皇の勢いにかげりが。さらに道長の嫡妻・倫子の本音が、はじめて赤裸々に明かされる場面もあった。

■ 耳も目も不自由になった三条天皇は…第43回あらすじ

藤原道長(柄本佑)の娘・妍子(倉沢杏菜)と三条天皇(木村達成)の間に子が生まれるが、道長が望んだ皇子ではなかった。その後内裏で火災が起こったことに加え、三条天皇が耳も目も不自由になっていることを知った道長は、天皇に譲位を迫ることに。しかし天皇には位を譲る気は毛頭なく、道長に「そんなに朕を信用できぬなら、そなたが朕の目と耳になれ!」と命じる。

耳も目も不自由になってしまった三条天皇(木村達成)(C)NHK

三条天皇は、藤原実資(秋山竜次)の息子を蔵人頭にすることを条件に、実資を味方に付けた。実資は道長と「政とはなんでございますか?」と問答することで、道長が三条天皇を引きずり下ろそうとすることを、真正面からたしなめる。しかし三条天皇は、息子・敦明親王(阿佐辰美)に請われて、実資の息子とは別の人物を蔵人頭にしてしまう。実資は怒りを込めて「私を二度と頼りにするな!」とつぶやくのだった。

■ 脆さが浮き彫りに…三条天皇の敗因は?

前回の第42回でまひろと絆を確かめあったことで、引退まったなし状態から奇跡の復活を遂げた道長くん。あれから2年の月日が流れ、すっかりパワーがフルチャージできたことで「三条天皇を玉座からおろし奉る」計画が本格的に開始された。

即位以来、類まれに見る交渉能力で道長にバンバン攻撃を仕掛けていった三条天皇だったが、いざディフェンスに回ってみると、いろいろと脆さが浮き彫りに。ここではその敗因を振り返ってみよう。

三条天皇(木村達成)

まず道長が揚げ足を取ってきたのは、内裏で火事が起こったことを「天がお上の政にお怒りである」と、天皇の責任にしたこと。ここで思い出してほしいのが、第32回でまだ東宮の地位にいた三条天皇が「内裏で火事なんて不吉だから、一条天皇(塩野瑛久)は譲位するべき」と公言してしまったことだ。

前回は道長が実行した「一帝二后」制が、天皇の望みを実現させる過去の事例になったのに対して、逆に自分の昔の発言が、道長に譲位の口実を与えるという、思わぬブーメランとなってしまった。

さらにまずかったのは、せっかく息子の出世をダシに味方につけた藤原実資を、約束の反故で怒らせてしまったことだ。しかも代わりに蔵人頭にしたのは、妻と息子にちょっと甘えられただけで安易にポストに付けた、道長と渡り合える見込みがなさそうな若造。

視聴者は、実資が正論攻撃で道長をタジタジにさせた現場を見た直後だけに、実資離脱のダメージの大きさがはっきりとわかった。自分の盾となる人物に恩を売るということをちゃんと頭に入れていたならば、こんな失敗はあり得なかっただろう。

「私を二度と頼りにするな!」と怒りをあらわにする実資(秋山竜次)(C)NHK

戦略ミスで大きく土台を崩した三条天皇だが、実資が道長に投げかけた「左大臣殿に民の顔なぞ見えておられるのか?」「朝廷の仕事は、なにか起きた時まっとうな判断ができるように構えておくこと」という言葉は、この先道長やその子ども世代に、避けられない課題として突きつけられるはず。さすが俺たちの実資。彼には道長以上に、この貴族社会が衰退する未来と、その原因が見えていたのかもしれない。

■ 愛がなくても満足、道長の嫡妻・倫子の生き方

政治的にはなかなか危ない綱渡りをしている道長だが、今回はもう一つ冷水をぶっかけられるようなことがあった。嫡妻の源倫子(黒木華)が「道長に心から愛している女性が、別にいる」という事実に、ずっと前から気づいていたと明かされたことだ。我々視聴者は、かなり初期の段階から「いや、倫子様絶対気づいてるよ!」「気づいてるってことに気づけよ道長」と勝手にヒヤヒヤしていたが、ここに来てその心配を確信に変えられた瞬間だった。

道長(柄本佑)に微笑む倫子(黒木華)(C)NHK

ただ我々の予想に反して、倫子様は別段嫉妬する様子も見せず、むしろ「自分の娘が、帝になるかもしれない子どもを生んだのは殿のおかげ」と、まひろとはまた別の強い関係性を築けたことに、感謝の気持ちを抱いているという告白を。

確かに自分の娘を入内させる気などなかった倫子にとっては、道長が婿に来たおかげで娘・彰子(見上愛)が国母となり、孫が天皇になる姿を見ることができるわけだから、これはまさに道長に与えられた幸福と言えるだろう。

そこでこれ以上を求めることはなく、「たまには私も気にかけてね」と言うだけに留めるとは。やはり倫子様はまひろとは違うベクトルで聡明かつ強い女性で、彼女と出会えたことは道長にとっても幸運だったはず。一方もう一人の妻・明子(瀧内公美)が少々格下扱いされてしまったのは、その辺の割り切りが足りなくて「愛情も成功も欲しい」と突っ走ってしまったのが、原因の一つのように思える。

そうして次回予告によると、道長の・・・いや、藤原家の摂関政治の最高のピークと言える、あの「このよをば 我がよとぞ思う 望月の・・・」の歌が登場する宴席が描かれる模様。まさに倫子と二人三脚でつかみ取った最高地点への到達だが、最高地点の周りには、下り坂しか残されてないというのが定めというもの。その華やかな「終わりの始まり」がどのようなものになるか、『源氏物語』誕生の瞬間と同じぐらいに注目だ。

『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。11月17日放送の第44回「望月の夜に」では、藤原道長が公卿たちを取りまとめて、本格的に三条天皇に譲位を迫っていくとともに、まひろの父・為時(岸谷五朗)がある重大な決意を固めるところが描かれる。

文/吉永美和子

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