雪組・縣千の主演作が開幕、繊細さと大胆さ併せ持つ魅力全開

6時間前

雪組ひと筋に歩んできた縣千が麗しい衣装も着こなし、純粋な心を持つサルマナザール役を熱演

(写真5枚)

端正な美しさと骨太な持ち味が魅力の男役スター・縣千(あがた・せん)。「梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ」(大阪市北区)での彼女の初主演作が12月2日に開幕した。

入団4年目で『凱旋門』新人公演主演をつとめるなど、早くから注目を浴びてきた縣が、宝塚歌劇雪組公演『西洋奇譚「FORMOSA!!(フォルモサ)」-空想世界の歩き方-』で、男役10年のキャリアを詰め込み、実在したペテン師の波乱万丈の人生を体現している。

破天荒に見えて繊細――。どこか縣自身にも重なるような役、ジョルジュ・サルマナザールが主人公。18世紀に実在した究極の偽書「台湾誌」の作者であり、西洋人たちの前に現れて、遥か東洋に浮かぶ島・フォルモサの風俗を堂々と語り、架空の島の存在を信じ込ませる詐欺師だ。

その大胆なたたずまいとは裏腹に、自身の生き方に疑問を持ち始める心模様を、陰のある表情も見せて表す姿に惹きつけられる。今年『ベルサイユのばら』でアンドレを演じた経験が、細やかな奥行きのある芝居に活かされたのではないだろうか。

実は努力家で優しいサルマナザールの人間性に惹かれていくのが、安定した実力の音彩唯(ねいろ・ゆい)演じるシェリル・オズワルド。地理学者オリバー(久城あす/くじょう・あす)の娘で、好奇心旺盛なシェリルがサルマナザールと丁々発止の掛け合いをする様が微笑ましい。また、サルマナザールにとってオリバーとの関係もポイントで、二人の温かい芝居には大きな感動が。

シェリル(音彩)に本当の自分をさらけ出すサルマナザール(縣)。二人の清々しい表情が心に残る

物語のはじめ、ヨーロッパ放浪中だったサルマナザール(実名はジャン)に、一攫千金を狙った詐欺の計画をもちかけるのが、イギリス国教会牧師かつペテン師のウィリアム・イネス(華世京/かせ・きょう)。華世は内から溢れ出るオーラと押し出しのある演技で、悪の魅力をふりまく。

もともとロンドン主教を騙すというイネスの企みから始まった“空想”話。そのフォルモサの世界が、オリエンタル風の音楽や衣装とともに展開するドラマティックな場面で、たびたび登場する革命家・メリヤンダノーを演じる咲城(さきしろ)けいの、妖しい魔力的な存在感も際立つ。

想像力さえあれば、人はいろいろなものになれる。そんな人生の醍醐味を、縣をはじめとする雪組生たちが頼もしい演技で届けるオリジナル作品。熊倉飛鳥(作・演出)が生み出す世界はどこかアーティスティックで、異国情緒あふれる要素をミックスしつつ、空想の“まやかし”を感じさせる儚さも。

ロンドンの知識階級が集うコーヒー・ハウスの場面では、クラブミュージックを彷彿とさせる音楽も使われ、ガラリとテイストが変化し、迫力ある群舞が展開。フィナーレはクラシカルなアレンジから、ラテン調の音楽まで盛りだくさんで、男役も娘役もエネルギッシュに踊る。縣と音彩が魅せたデュエットダンスはドラマティックな振付で、二人の放つ個性がダイナミックに響き合っていた。

同作は「梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ」で12月11日までおこなわれ、2025年1月8日から13日まで「KAAT神奈川芸術劇場」にて上演される。また、12月8日16時開演の公演を全編ライブ配信。詳細は公式サイトで確認を。

取材・文・/小野寺亜紀

宝塚歌劇雪組 シアター・ドラマシティ公演 

西洋奇譚『FORMOSA!!(フォルモサ)』-空想世界の歩き方-
日程:2024年12月2日(月)~12月11日(水)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(大阪市北区茶屋町19-1)
料金:全席指定8000円
電話:06-6377-3888(梅田芸術劇場)

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