M-1敗者復活の注目株・例えば炎、大舞台に「ナメてかかる」?

6時間前

お笑いコンビ・例えば炎(左からタキノルイ、田上)

(写真10枚)

『M-1グランプリ2024』で敗者復活戦(12月22日開催)から決勝進出を目指すお笑いコンビ・例えば炎(タキノルイ、田上)。中学の同級生同士、結成5年目の大舞台・・・ただ、彼らには下剋上に向けた気負いはまったくなし。

タキノは「『M-1』のことをナメてかかってます。僕らをここまで勝ち上がらせてきたわけですから」と静かに笑い、田上は「もっとユルくお笑いがやりたい」と姿勢を崩して話す。そんな2人に改めて今回の『M-1』について話を訊いた。(取材・文/田辺ユウキ)

■ 「こんなところまで連れて来んといてくれよ」って(田上)

「大阪がホームすぎるんで基本笑ってもらえるなかでも、僕らはかなりスベったりも…ホームの状況で『スベらせていただいて』います」と笑いながら口を揃えて話す2人

──芸歴5年目以内の芸人を対象とする『UNDER5 AWARD 2024』の決勝時、タキノさんは緊張しないために「大会をナメてかかるようにした」とおっしゃっていましたね。さすがに『M-1』をナメるなんてことは・・・。

タキノ:やっぱりそこは『M-1』ですから・・・『UNDER5』よりナメさせてもらってますね。僕らみたいなコンビを準決勝まで勝ち上がらせてしまったわけですから、ナメる要因はかなりあります。でも、まわりが緊張したりバチバチし合っていたりするなかで、僕らみたいいなやつらがいるのも、いろいろ効果があると思うので。

満席の「よしもと漫才劇場」にて、ネタ中の2人

田上:僕は、そんなタキノを見るのが楽しみですね。そもそも自分はなにかをナメるとか、なにかに挑むつもりとかないですし。彼に任せているだけなんで、だからがんばってほしいです。

タキノ:そもそも田上に期待することはなにもないんです(笑)。ただそれでいい。だってコンビって「なんでこれができへんねん」「もっとやってくれよ」とかで、モメるじゃないですか。自分たちはそれがないですから。僕がおもしろかったら芸人としても売れるやろうし、自分だけ強化したらええんです。たとえば『ドラクエ』って、パーティのみんなに偏りなくスキルを振ったりするじゃないですか。

「準決勝自体初めてだったので、かますことだけを意識しました。次も緊張とかせずにいつも通りできて、それが評価されたら尚うれしいなという感じです」と意気込むタキノ

──全員の能力を上げながらパーティを強くしていきますよね。

タキノ:でも僕らの場合、田上はパーティにはいるけどスキルを振らなくていい。とにかく自分だけに全振りしています。かといって田上は、本番でネタを飛ばすこともないし、その辺はちゃんとやってくれる。もし田上が「俺もなんかやりたい」と言えばバランスも崩れるでしょうけど・・・。あと、田上みたいな主導権を握って来なかった人間に自我が芽生えたときこそ、恐ろしいもんはないですから(笑)。

田上:ただ、敗者復活戦で緊張したら嫌やなって。自分はなんでもダラダラしているロクでもない人間で、だからこそ「芸人ってめっちゃええ仕事やん」と思っていたんです。もっとユルくお笑いをやっていたかったのに、「こんなところまで連れて来んといてくれよ」って(笑)。まあ、僕の実力を見られるわけじゃないですから。みんなが見るのはタキノなんで、僕はゆっくり準備しようかなという感じです。

「もうあんま良く分かってないところまで来てるんで…。ずっとテレビで見てたあの場所に立つということが想像つかないです」と、少々困惑気味に語る田上

■ 「もう『狂った戦士』じゃないですか」(タキノ)

所属する「よしもと漫才劇場」にて、ネタ中の2人

──例えば炎の、そういうナメてる感じがたまらないです。タキノさんのツカミ「進めー!」「言うてますけども」もナメてるじゃないですか。しかもお客さんの反応が薄いのを見て「厳しい戦いになりそうです」とか。自らどん底に落ちに行ってから漫才をスタートさせるところが、すごすぎます。

タキノ:何もしないよりは、結局スベるか、ウケるかの二択なんで。つかみはやった方がいいなと思っていたんですけど、おしゃれな丁寧なつかみはネタ的に変わってくるなと思って。よく「スベり笑いは寒い」とか言いますけど、僕らはそもそもスベり笑いかどうかも判定できないというか、「こいつらナメてるな」っていう風になるんで。「厳しい戦いになりそうです」とか、もう「狂った戦士」じゃないですか(笑)。だからいつも、刀1本で1000人と戦う気持ちでやっています。

田上:僕はタキノがツカミでなにを言ってくるか、舞台に立つまでいつも知らないんです。ネタ中に言われてないこともやられたりするんで・・・。ただたまに、僕の方から「今日はあのツカミやって、このボケやって」とおねだりすることはあります。めちゃくちゃおもしろいじゃないですか。中学の頃から一緒にゲームとかしてきた同級生が、人がいっぱいいる前で、そうやってエグいことを言ってスベってるところを見たら。

「せっかく芸人になったので、誰もやらないことをやりたい。元々人とかぶらないことが好きなんで。その場のウケとかは1個置いといて、時間がたってからあんなことしたなぁと思って笑える方が、若手の間では価値があると思っています」とタキノ
地元が同じ中学の同級生、タキノが田上を誘ってコンビを結成した。初の敗者復活戦は「なんでこんな奴らあげれたんやっていうのと、めっちゃおもしろかったっていう意見が両極端にバラけたら一番うれしいかもしれないです」と田上

タキノ:僕はとりあえずなんでもいいんでいっぱい喋りたいし、ボケたいし、ツッコミたい。だからもし、真剣にお笑いがやりたくてNSCに入ってきて、僕みたいなやつとコンビを組んだら「なんもさせてもらえへん!」ってなるでしょうね(笑)。僕が生かされている理由は、田上がこういうメンタリティだから。

田上:タキノと一緒にいて唯一、僕の意思が動いたのは「パワプロ」(ゲーム『パワフルプロ野球』)をやっていたときくらい。シーズンオフに主力のベテラン選手を戦力外にして、タキノがめっちゃ怒ったんです。漫才では、僕の好不調とか関係ないんで。準々決勝の日も、声がガサガサやったから先輩に「どうしたら治りますか」と聞いたら、「別にお前はそのままでええやろ」って。

──ハハハ(笑)。

タキノ:でも田上は、先輩にはめっちゃかわいがられますね。打ち上げでも、何十人もいるなかで「じゃあ乾杯は田上、頼むわ」となって、「なんで僕なんですか」みたいなくだりはよくありますし。しかも田上って、そういう飲み会でちゃんとビールをこぼしてくるんですよ。いつもなんか粗相してくる。でもそういうお笑いの奇跡みたいなものを起こせるのは、僕じゃなくて田上なんです。しかも先輩って粗相するやつが好きやから、余計にかわいがられる。

所属する「よしもと漫才劇場」にて、ネタ中の2人

──ただ今回の『M-1』で間違いなく注目度が上がったでしょうし、仕事量も増えるはず。2025年の活動に期待を寄せている人はきっと多いと思います。

タキノ:僕らってまだ単独ライブをやったことがないんですよね。だから2025年は単独を実現させたいです。ここまで勝ち進んできたことの大きなメリットって、そういうところな気がします。あと、ネタには自信が出てきたんで。それと今後、いろんな賞レースをちゃんと意識してもいい権利は得たんじゃないかなって。

田上:僕はタキノに付いていくだけですから。ただ単独ライブはどうですかね・・・。僕、頻尿なんです。トイレを1時間我慢できたら、やってもいいかな。

タキノ:すいませんね、こんな終盤も終盤で、どうしようもない答えで・・・。

「僕らが一番後輩なんで大阪を背負うとかはないですけど、大阪はおもしろいなと東京で思われたい気持ちはあります。やったことない会場でもかましたいです!」(タキノ)

例えば炎が出場する『M-1グランプリ2024』敗者復活戦の模様は12月22日・昼3時より、ABCテレビ・テレビ朝日系列24局で放送される。

また2人の所属する「よしもと漫才劇場」は10周年を迎え、12月31日の大晦日には10時間に及ぶイベントを実施。今年は 「年越しカウントダウン」も5年ぶりに開催される(オンラインチケット発売中)。

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