和田正人、朝ドラの次は「くすぶり芸人」を熱演「抜け出せない沼で」

5時間前

俳優・和田正人

(写真6枚)

お笑いの賞レース『THE SECOND〜漫才トーナメント〜2024』のベスト4・タモンズ、『M-1グランプリ2020』王者・マヂカルラブリーらによる劇場ユニット「大宮セブン」を題材とする映画『くすぶりの狂騒曲』が全国で公開されている。

同作は、「大宮ラクーンよしもと劇場」(埼玉県)を活動拠点に、成功を夢みながらもなかなかうまくいかないお笑い芸人たちの日々を描いた青春群像劇。そんな物語の軸となったタモンズ・大波康平を演じたのが、NHK連続テレビ小説『虎に翼』(2024年)で同性と交際する遠藤時雄役で話題を呼んだ俳優・和田正人だ。

和田は今回、役作りのためにタモンズの漫才をいくつか鑑賞。ただ劇中でも描かれているが、和田が見たのは「自分たちの笑い」を追い求めすぎて「客ウケ」ができていなかった時期の漫才。そのため「ネタがトガりすぎていて、自分はそれほどピンとこなかったんです。タモンズさんも当時の漫才の映像を見て『そりゃ、売れるわけがない』とおっしゃっていましたし。でも事前にその感覚をつかめたのは、役にとって良かった気がします」と素直な感想を明かす。

劇中写真より(C)2024 「くすぶりの狂騒曲」製作委員会

チャンスを掴みかけては、逃してしまう毎日。そうやってタモンズが立ち止まっている間に、「大宮セブン」のメンバーである囲碁将棋、マヂカルラブリー、GAG、すゑひろがりず、ジェラードンは徐々に評価を高めていく。タモンズはその焦りから、いろんな打開策を練る。

役作りのため、タモンズの漫才を事前にいくつか鑑賞したという和田

「大波、安部(駒木根隆介)は学生時代からの付き合い。それからずっと2人でコンビとしてやってきたのに、うまくいかないから、仲間の芸人を迎えてトリオで再出発しようとする。あの展開は印象深いです。なんとか状況を打破したいという大波のもがき続ける様、それに振り回される安部。演じる側も、2人が追い詰められて苦しむところをしっかり見せたいと思いました」。

ところが現実のタモンズは、紆余曲折を経てついに日の目を見ることになる。結成16年目以上の漫才師たちが挑んだお笑いの賞レース『THE SECOND〜漫才トーナメント〜2024』(2024年5月開催)でベスト4まで勝ち上がったのだ。以降はテレビ番組で見る機会も増えた。今まさに、成功をつかみかけている。和田も、冗談をまじえながらそんなタモンズの奮闘を讃える。

「この映画は4月の『沖縄国際映画祭』でお披露目されたのですが、その舞台挨拶時に『タモンズさんがファイナリストになりました』と報告されたんです。さらにそのあとベスト4まで勝ち上がった。この映画の公開に合わせたかのようなあまりに奇跡的な展開だったので、『ちょっと、吉本興業さん! 絶対になんかやったでしょ!?』って思いましたもん(笑)。でも『THE SECOND』は観客が審査していますし、なにより決勝トーナメントのタモンズさんのネタは全部おもしろかったので、『そりゃここまでいきますよね』となりました」。

劇中写真より(C)2024 「くすぶりの狂騒曲」製作委員会

さらに和田は、これまた頬を緩めながら「『THE SECOND』は5月、この映画の公開は12月。だから『映画のために、あと1年だけくすぶってもらいたかったです』って(笑)。でも、それも結果を出されたから言えること。すべてを投げ打って、覚悟を決めてお笑いに人生を賭けたお2人だからこそ『THE SECOND』でも評価されたのではないでしょうか」とタモンズを労った。

劇中では漫才にも挑戦。ただ、それらはあくまで演技。撮影中は「カメラマンさん、エキストラのみなさん、共演者の方々の前という作られた環境での漫才だったので、『お笑いをやっている』『ライブをやっている』という気持ちはそれほどありませんでした」とお笑いを身近に感じることは少なかったという。しかし、東京で開かれた先行上映会で漫才を再現したとき、ほんのちょっと「芸人体験」ができたのだそう。

劇中写真より(C)2024 「くすぶりの狂騒曲」製作委員会

和田は「ドッと笑いが起きたときの高揚感というか、脳内にいろんなものが分泌される感じがたまりませんでした。芸人さんたちはあの何倍も大きな笑いを味わえるなんて、『そりゃ、なかなかお笑いをやめられないよな』と思いました。あれは抜け出せない沼、ものすごい快楽です。自分は学生時代に陸上競技をやっていて、レースに勝ったときや自己ベストを出した瞬間にものすごい快楽を得ていました。それに似たものがありました」と箱根駅伝への出場経験も持つ選手時代の自分を重ねた。

和田が出演する映画『くすぶりの狂騒曲』は全国公開中

くすぶり続けるタモンズがつかみ取る「笑い」とは、どんなものか──。最後に和田は「どんなことがあっても『俺たちが一番おもしろい』と信じ続ける姿が格好いい。なにかをやり続けることの大事さに気づかせてくれる映画です」と締め括った。

映画『くすぶりの狂騒曲』は全国公開中。(取材・文/田辺ユウキ)

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本