結、彼氏のコネで就職…一見「ご都合主義」展開に込めた願い

5時間前

『おむすび』第54回より。「星河電器」の社員食堂で澤田(写真右、関口メンディー)と話す結(左、橋本環奈)と翔也(中央、佐野勇斗)(C)NHK

(写真2枚)

今週放送された連続テレビ小説『おむすび』(NHK総合ほか)第11週「就職って何なん?」では、栄養専門学校の2年生になった結(橋本環奈)たちJ班の面々の就職活動が描かれた。沙智(山本舞香)は第一志望の「まんぷく食品」、佳純(平祐奈)は東京の病院、森川(小手伸也)は弁当屋の経営と、それぞれの進路が決まったが、結(橋本環奈)だけがひとり、就職試験に連戦連敗だった。

そんななか、翔也(佐野勇斗)の先輩で巨人に入団が決まった澤田(関口メンディー)が、結を星河電気で社員食堂の栄養士として働かないかと誘う。澤田はかつて結が翔也のために作った献立表を見て、結の能力を買ったのだ。

◾️ 昨今の朝ドラには珍しい「彼氏のコネで就職」という展開

結は、彼氏である翔也のコネで就職先を決めることについて躊躇するが、愛子やハギャレンメンバー、そしてJ班の皆から励まされる。るーりー(みりちゃむ)は、「甘えてよくね? それってムスビンが信用されとう証拠やし」と結に言う。森川は、「何かにトライして、失敗してもいいんです。私を見てください。46歳で学生をやりきったんですよ。だから本当にやりたいことをやるべきです」と、背中を押した。

かくして結は星河電気の就職試験を受け、これまで視聴者も見てきた結の「食」への取り組みをプレゼンして、見事採用された。能力を買われての推薦、採用試験という正攻法を経てはいるものの、大まかに言えば「彼氏のコネで就職」というこの展開、昨今の朝ドラの潮流においては珍しい。この展開にした理由を、制作統括の宇佐川隆史さんに聞いた。

『おむすび』第55回より、就職試験を受ける結(橋本環奈)(C)NHK

◾️ あの精密機器メーカーを皮切りに、社員食堂が見直されていった時代

2008年当時、スポーツ栄養士志望の専門学校新卒が野球部を擁する企業の社員食堂に採用されるケースはあったのか。

宇佐川さんは、「取材を重ねたなかで、当時新卒で、社会人スポーツチームの栄養士・管理栄養士として、専属で採用されるケースというのは、ほとんどなかったといいます。栄養士さん、管理栄養士さんにとっての2008年当時の就職の厳しさと『温度感』を再現しようと試みました。一方では、精密機器メーカーの社員食堂が話題になったり、各企業の社員食堂が変わろうとしていた時代でした。社員食堂のなかで、栄養士・管理栄養士の存在がクローズアップされてきた頃です。その2つの事実を合わせて、結の就職先の設定にしました」と明かした。

◾️ 「一生懸命に生きるすべての人を肯定したい」

さらに宇佐川さんは、「彼氏のコネで就職」という展開については、「ある種の『ご都合主義』に見えるかもしれませんが、それもまた、選択肢の一つであるという世界を描きたかったからなんです。『逆ご都合主義』とでもいいますか。人の夢の追いかたや就職のしかたに、いろんなケースがあってもいいと思います。結を見ていたらおわかりいただけると思いますが、決して怠けたわけではありません。その人が真剣にやった結果として、コネがきっかけでも、何がきっかけでもいいのではないかと。一生懸命に生きるすべての人を肯定したいという思いがありました」とコメント。

次週第12週「働くって何なん?」では、社会人の厳しい洗礼を浴びながら、結がさらに成長していく。

取材・文/佐野華英

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