話題の落語家・桂二葉、自ら企画した「全席あほ」の独演会への思い
今や、上方落語界の大看板となった桂二葉。『探偵!ナイトスクープ』(ABCテレビ)などテレビで活躍する一方で、本領の落語に向き合う熱量は高まるばかりだ。
そんな彼女が企画した独演会『あほの大舟』が10月の東京に続き、12月23日・24日に大阪で開催される。「全席あほ、始終あほ」──。そんな新しいスタイルの独演会が生まれた経緯、また大阪公演に向けた意気込みなどを二葉に訊いた。
取材・文/村田恵里佳 写真/橘 蓮二
◾️全席「あほ」が活躍する独演会をやってみたい
──『あほの大舟』は、上方落語の人気者ともいうべき「あほ」が主役の噺だけを演じる、という明快なコンセプトを打ち出した独演会ですよね。そもそも、なぜこのような独演会を企画されたのですか?
だいたい、独演会では落語を3席演るんですけど、全部「色がちがうネタ」で構成するんですね。あほな人が出てくるネタ、酔っぱらいが出てくるネタ、子どもが出てくるネタ、とか。3つをバラけさせて、最後は「締めがち」っていうか。たとえば「子はかすがい」みたいなグッと締める人情噺とか大ネタを3本目に演って終わる。
それもいいけれども・・・。もっと、あほな噺で締めてもいいんじゃないかと。どっちかって言うと、(私は)そっちの人間でありたいと思ってるんですね。(あほが大活躍する)「池田の猪買い」みたいな噺を最後に演って納得していただけるような。そういう憧れがあって。最初から最後まであほな噺だけで、「あぁ~あほやったなぁ♪」って清々しい気持ちになってもらえる、そういう独演会がしたいなぁと。
──ゲストとして笑福亭仁福さんがご出演されるのもスペシャルです。仁福さんといえば、入門50年超の大ベテラン。「天満天神繁昌亭」(大阪市北区)の恒例企画「元祖大阪名物あほの会」にも欠かすことができない存在です。今回は仁福さんもあほな噺を?
そうです。上方落語界のあほを代表して(笑)。ゲストやから、ほんまは中トリ(中入り前の前半を締めくくる演者)で出ていただくのがふつうなんですけど、仁福師匠は中トリやとプレッシャーを感じはるとのことで二ツ目がいいって。で、ゲストやけどまさかの2席目で出ていただきます。
──仁福さんは寄席で拝見することが多いのですが、今回のようにホールで演じられることもあるのですか?
う~ん…ないかなぁ(笑)。後輩の私が偉そうなこと言うんですが(上方には)こんなおもろい師匠もいるんですよ、っていうことを知ってもらいたいこともあって。(10月19日・20日に開催された)「本多劇場」(東京・下北沢)はすごい良かったです。仁福師匠が(お客さんに)ばっちりハマった感じがして良かった。
◾️100%ピュア、「まじりっけなしのあほ」がモットー
──「本多劇場」は、二葉さんにとって初めて公演をおこなった会場ですよね。実際に舞台に出られてみていかがでしたか?
劇場そのものにパワーがあって、良い劇場やなって。終始あほな噺ということもあって、めっちゃ明るい会やったですね。ただ、この会って「あほが主役」やから、(落語の登場人物のなかでも)ボケてる方でほんまは笑ってほしいけど、お客さんはツッコミで笑うっていう。でも、最後はあほで笑っていただけたかなぁと。とってもやり甲斐がありました。
──二葉さんがおっしゃる落語に出てくる「あほ」は、「生きる天才」という表現が近い。あくまで、相手をバカにして発する“あほ”ではありませんよね?
(バカに)してないしてない!「あほ」という言葉で言ってしまっていいのかな?とも思います。(落語に出てくる)あほな人をバカにしてる人は、(実際に演じても)バカにしたようなあほになる。私なんか、大きなるまでドイツとインドのちがいもわからんかった。字ぃが似てるから。音も似てる。ほんまにわからへんかったんです。
でも母親がね、「地図見よか」言うて、全然バカにせずに教えてくれた。だから、(入門前に)いろんな噺家が演る落語のあほを観た時、負けへん!っていう感じがした。ほんまはもっとあほやけどな~って。いかにも「演じてる」あほで、ウソっぽい感じがしたんです。いつも言ってることですけど、(私は)100%のあほ、まじりっけのないあほを大事にしています。
◾️やさしく、寛容な、落語の世界を伝えたい
──「あほの大舟」は、来場される皆さんに配布する特製パンフレットも。二葉さんの持ちネタから愛すべきあほが登場する落語10本を選び、各々がいかなるあほか?を解説。
「あほ10選」と題して、あほを分類したんです。「子ほめ」と「牛ほめ」のあほはブラックな一面があるとか、「天狗さし」のあほは大阪商人らしい開拓精神があるとか。天狗のすき焼き屋をやろうっていう発想がね。肝心の天狗は(現実世界に)いぃひんけど、このあほはいつか億稼げるくらいの人ちゃうか!?とか(笑)。言語化すると、あほにもいろいろあることがわかったりして。
──パンフレットは、いわばお品書きのような。10選から披露される演目は当日のお楽しみ?
そうですね。(大阪公演の演目は)まだ決まってなくて。当日、何をやりたいか?っていう気分次第で。あとはなんか・・・。最近、えぇ子が多いからね。若い人でもねぇ。生きるのに気ぃ使たはる人、多いじゃないですか。もうちょっとこぅ、なんか・・・「素で」しゃべってもいいやん!って思う。あほなこと言うても大丈夫。そういうメッセージもいちおう込めて。
──なんとなく、あほでは居づらい世の中ですもんね・・・。
落語って、すごくやさしい世界。寛容で。それがすごく良いなぁって思うから。
──みんながそれぞれの存在を認め合う、まさに多様性の世界。
そうなんです。「こいつ、しゃあないやっちゃなぁ」って言いながら、見離すことなく付き合い続けて。
──だからこそ、あほがのびのびと生きることができる。大阪公演も迫ってきましたが、意気込みはいかがですか?
全然ちゃうからね、東京とはお客さんの反応が。大阪はやっぱりホームやから。(あほを)存分に浴びてほしい。一緒にジェットコースター乗る!っていう感じで。この会はこれからも2年に1回くらいやりたいなぁと。またこの季節来たな!みたいなイベントになったらなぁと思っています。
◇
『あほの大舟』は12月23日・24日の2日間、大阪の「ABCホール」で開催される。
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