京都・老舗女将による“いけず”体験イベントが「こわっ!」

9時間前

「こわっ!」老舗女将による“いけず”体験イベント(提供:ない株式会社)

(写真5枚)

京都の老舗扇子屋で、 “いけず体験イベント”がおこなわれます。京の“いけず”といえば、褒めているようで実は褒めていなかったり、喜んでいるようで実は迷惑がっていたりという裏の意味(本音)が隠されていることがあるというのは有名なお話(本当は、相手に角を立てないように言いづらいことを遠回しに伝える技らしい)。表面上はやわらかい京言葉なので、“いけず”を知らなければ、“いけず”が放たれても気がつきません。

このイベントは、老舗女将が放つ“いけず”に気がつくことができるかというゲーム。会場は老舗扇子屋の昔ながらの京町家で、見学できるだけでも価値があります。道路に面した扇子店の「店の間」から、入って一番奥の茶室までが会場になっています。ゲームにクリアすれば、茶室で女将からお抹茶と和菓子が振る舞われます。

しかし女将の“いけず”に気がつくことができないと、「ぶぶ漬けでもどうどすか?」(早く帰れの意)といわれてしまい退散を余儀なくされます。訪問が許されるのは5回まで。

「こわっ!」老舗女将による“いけず”体験イベント(提供:ない株式会社)

女将役は、会場の扇子店の実際の女将・大西里枝さん。大西さんは、SNSでもたびたび話題になる人で、老舗の女将ながらかなりおもしろキャラで通っています。これまでも表に建前、裏に本音を書いた「いけずステッカー」、いけずをゲームで体験する「京都人狼」などにも(顔芸までさらして)協力しています。今回の“いけず”ゲームでは、演技にも挑戦するとのこと。

大西さんは今回のイベントについて、「企画を聞いてからテストプレイをしてみるまで、すべてにおいて『ほんまにやるんか、そもそも私がやる必要はどこにあるんだろう』という気持ちでした。そんな中、弊社の社員から『シャニカマさん(企画者)どうしてもやりたそうだから、ひと肌脱いであげては』といわれたことで腹が決まりました。シャニカマさん、人の懐に入るのが達者どすね。数回テストプレイをする中で、気づいたのは『下手な演技をするより、普通に京都人らしいふるまいをするのが一番怖い』ということです。複雑な気持ちです」と話しています。

ゲームのルール(提供:ない株式会社)

ネット上には「これは…最終ゴールは茶室行けたらオッケーってことなんやろか(困惑)」「めちゃくちゃ気になります」「行けたら行くわ(京都人あるある)」などと反響があり、予約開始から約1日で48枚のチケットが完売しました。予想外!の売れ行きに、追加日程を検討中というイベントを企画した「ない株式会社」の岡シャニカマさんに、話を聞きました。

──かまえすぎて、なにもかも“いけず”に感じちゃいそうです(笑)

「そういう意味だったのか!」というアハ体験をしてもらいたいので、あえて難易度は高めに設定しています。事実、これまでテストを3回ほど実施しましたが、すべて5回目の訪問まで回数を要しています。

最初は京都人ではない方でテストをおこなっていたので「他府県の方には難しいのかな?」と思っていたのですが、1度全員が京都人(それも全員40代以上の男性)でテストした際も同じく5回目の訪問までかかりました。

京都人の方が参加すると他府県の方よりも“いけず”に関する知識や経験が多いせいか、こちらが意図していない女将の発言に対しても「これ本当はこういう意味なんじゃないか…?」と疑心暗鬼になるみたいで、京都人だから簡単にクリアできるというものでもなさそうです。

奥の間の茶室で、お抹茶とお菓子をいただけるか!?(画像提供:ない株式会社)

──裏の裏まで考えちゃうのですね。ゲーム上の“いけず”は、実際に使われている“いけず”なのですか?

“いけず”は京都人たちの会話の中で育まれているものであり、特に「いけず辞典」のようなものがあるわけではないので、全てが実際に使われているかどうか断言はできません。ただ今回用意した26種類のうちいくつかは実際に大西さんや、いけず制作で協力してもらったみえっぱりな京都人botさんが「この時はこう言うかも」や「こう言われたことがある」などと、実体験に基づくものも数多く用意しています。

実際に大西さんが参加者に向けて言い放つうえで、リアリティがないものは言いづらいという側面もあるため、最終的には大西さんが「こういう言い回しなら自然に言えそう」と納得してもらったものに限定しているので、すべて生々しさがあると思います。

──最初のチケットはあっという間に完売しました

正直、あまりのスピードに驚いています。もともとこの企画は大西さんの「私もぶぶ漬け出されてみたい」という発言からスタートしているのですが、最初は本当にそんな需要があるのか未知数でした。

ただ大阪人の私でも「おばちゃんに飴ちゃんもらいたい」という欲求はあるし、秋田の「なまはげ」だって最初は町内や家庭内のプライベートなイベントでしたが、今や他府県の人が秋田観光をする際には欠かせない一大観光資源になっています。今回のイベントをきっかけに秋田の「なまはげ」と同じぐらい「いけずな京都人」が人気コンテンツになってほしいです。

 ◇ ◇

イベントに参加する人へ、大西さんからのメッセージ
「まずは、こんなに恐ろしい企画に参加していただいたことに感謝申し上げます。貴重な時間とお金を割いて参加してくださるということを胸に刻み、みなさんの心に一生残る、特別な“いけず”体験になるよう尽力いたします。どうぞよろしくお願いします」

※「この先いけずな京町家」の追加イベントについては岡さんのX(@SHANIKAMA_hrkt)を確認してください。

(取材・文/太田浩子)

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