蔦重の覚醒、どの時代も共通する本作りの喜び【べらぼう】
横浜流星主演で、数多くの浮世絵や小説を世に送り出したメディア王・蔦屋重三郎の、波乱万丈の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。1月19日放送の第3回「千客万来『一目千本』」では、重三郎が初めて企画・出版を手掛けた『一目千本』を完成させるまでが描かれると同時に、暴力的な養父・駿河屋の思わぬ本音でもSNSが盛り上がった。
■ 吉原に客足を戻すため、重三郎は…第3回あらすじ
重三郎が関わった吉原細見(案内本)の評判は上々だったが、客足を戻すには至らなかった。そこで重三郎は、吉原の常連客・長谷川平蔵(中村隼人)や女郎たちから金を集め、女郎たちの姿を載せた入銀本作りに乗り出す。重三郎は養父の駿河屋市右衛門(高橋克実)に家を追い出されるが、拾い子の唐丸(渡邉斗翔)と一緒に、かつて朝顔(愛希れいか)がいた浄念河岸の女郎屋で本作りを進めていく。
絵師・北尾重政(橋本淳)とともに、女郎たちの姿をそのまま描くのではなく、花に見立てるという案を思いついた重三郎は、女郎たちの手を借りながら『一目千本』を完成させた。さらに湯屋や居酒屋などに見本を置き、吉原のなじみになれば手に入れられるという戦略が当たり、吉原は人が押し寄せるように。重三郎に駿河屋を継がせる心づもりで、本作りから遠ざけようとしていた市右衛門も、その才能を認めざるを得なくなったのだった。
■ 現在のクラファン、そしてコミケ…共感するオタク続出
蔦屋重三郎が初めて版元となった、女郎の紹介本『一目千本』。女郎の顔貌や特徴を具体的に見せるのではなく「菊の花のような女ですよ。なんで菊なのか、ぜひその目で確かめてみてね」という絶妙な匂わせで、読み手の好奇心をそそる仕掛け。しかも当代一流のアーティストのイラストが満載だから、特に女郎に興味がなくても見るだけで楽しいという、めちゃくちゃ完成度の高い一冊なのだ。第3回では、この本の編集&販売作業を通して、蔦重が出版の楽しさに目覚める姿が描かれた。
細見のように、吉原の街の様子を紹介しただけではまだまだ客が来ないと気付いた重三郎は、女郎の一人ひとりにスポットを当てて、「町」ではなく「人(商品)」に興味を持ってもらうという企画を立てる。そのためには豪華なカラーイラストを入れたいけど、当然お金が必要。ということで蔦重は「お金を出した人は前の方のページに、しかも大きく載せる」と触れ込むことで、女郎たちの競争心に火を付けて、見事に資金を調達した。
この「見返りのある寄付」で作る自費出版本という、現在のクラウドファンディングを先取りしたようなやり方に、SNSでは「ええと、つまり、クラファンで吉原同人誌・・・?」「『大江戸同人誌事始め』みたいな解釈でよろしいですか?(笑)」「顧客がどれだけ銭を積むかによって推しの順位が上がっていくと言う、今で言うAKB商法みたいなものか」「アイデアや企画を出す力も大事だけど、お餅を絵に描くより先に予算確保する蔦重は確実に成功する人」などの、共感や感心の声が。
さらにその本を、本屋で売ることができないという逆境を、むしろ「吉原まで来ないともらえないよ!」という付加価値に変えてしまうという商法にも、「つまりコミケ行かないと買えない同人誌ってこと?」「人気投票でセンター並び順決定からの入場特典限定配布かよ! 蔦重、マジオタクの敵!!」「本屋さんで委託販売しろよ。吉原コミケ会場で売るときだけ、先着順でペーパーをおまけに付けたら大丈夫だぞ」など、それがどんな状況であるかを一瞬で把握するオタクたちの声があふれた。
■ 前作『光る君へ』思い出してトレンド入り…製本シーン
イラストと印刷にはお金をかけつつ、製本は節約して女郎たちが手作業。この構図が、前回の大河ドラマ『光る君へ』で、紫式部たちが『源氏物語』豪華装幀本を手作りしていたシーンと重なって「イベント前の徹夜のコピー本製本みたいなシーンに、とても親近感を覚えました。昨年も同じようなシーン見たなあ」「『光る君へ』に続いて同人誌制作する大河だ・・・(笑)」「べらぼうの同人誌→自分で面付けした準備号コピー折本。光る君への同人誌→限界まで特殊装丁盛ったハードカバー鈍器本」などの声がならび、久しぶりに『光る君へ』がXのトレンドに浮上する事態に。
そして完成した本を手に取った重三郎が「夢ん中にいるみてえだ!」と言うほど、本作りの喜びにひたるシーンにも、特に同人誌経験者たちから「『いやあ・・・なんかすげえ楽しかったなあ』わ か り み し か な い」「同人誌が出来た時点で頒布する前にもう楽しかったなぁ~になるやつ。蔦重もそうなのかい」「たくさんのオタクに今週の話が刺さっててわろた。蔦重の言う通り、本作りってしんどくても楽しかったんだよね」「同人誌でなくても、普通の編集者なら蔦重の達成感は共有できると思う」などの共感の言葉が乱れ飛んだ。
■「泣かせてきやがる」ツンデレ駿河屋と粋な扇屋の会話
とはいえ、重三郎の本作りには最初から殴る蹴るで反対していた、養父の駿河屋。趣味にハマって仕事をおろそかにしてるならともかく、ここまで頭ごなしに反対するのはなぜ? と視聴者がもれなく疑問に思っていたが、扇屋宇右衛門(山路和弘)との会話で、重三郎を後継ぎにするつもりなので、あまりほかの仕事に感心を持ってほしくなかった・・・ということが判明。このツンデレな理由と、扇屋との忘八同士の対話が実に粋だった。
「やはり蔦重に見世を継がせたかったからの激怒」「そうなんだよ、重三だけは男衆に売らなかった。拾い子を抱えることも許してる。そこなんだよ」「『人みてえなことを言ってるよ、忘八のくせに』ほんと江戸っ子って上手いこというよね」「互いに忘八と自認する親父たちだからこそできる、人情のある会話。忘八親父たちのくせに泣かしてきやがる」「扇屋さん・・・ワルで渋くて最高です・・・大人の色気だ」などの称賛の言葉が相次いだ。
書籍作りの才能と、営業・販売の才能は別というのは、一応出版界の端くれにいる筆者なんかは特に痛感するんだけど、その両方の面において、とても「初めての本作り」とは思えないほどのべらぼうな才能を発揮した蔦重。現在まで影響を与えるようなメディア王ともなれば、確かにこのぐらい天才的な発想力と行動力があっておかしくないだろうし、しかも『べらぼう』ではそこに「吉原を良くしたい」という強い使命感と原動力まで加わっている。
蔦重の最大の障害となっていた父親も態度を軟化させ、もうここからはガンガン成り上がっていくよ! と願いたいけど、最後に登場した鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)の表情に、ほのかな悪意が見えたのが気になるところ。どうやら彼が、父親の次に蔦重が乗り越えねばならない大きな壁になりそう・・・ここ最近の大河では、不憫な退場を惜しまれることが続いていた愛之助だが、今回は「ざまあみろ!」と言われながら退場することになるのだろうか? これは当面の注目どころだ。
◇
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。1月26日放送の第4回「『雛形若菜』の甘い罠」では、重三郎が西村屋与八(西村まさ彦)とともに新しい錦絵に挑む姿と、田沼意次(渡辺謙)が田安賢丸(寺田心)の養子縁組実現に暗躍する姿が描かれる。
文/吉永美和子
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