さらば鬼平…シュッとした中村隼人が軽妙に演じた平蔵【べらぼう】
江戸時代のポップカルチャーを牽引した天才プロデューサー・蔦屋重三郎の劇的な人生を、横浜流星主演で描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。1月19日放送の第3回「千客万来『一目千本』」では、2人の武士のつらい決断が描かれることに。コメディタッチの長谷川平蔵と違い、田安賢丸の方は因縁話にもつれこむ展開を予感させた。
■入銀本作りの裏側で…第3回あらすじ
重三郎が関わった新しい吉原の細見は、平賀源内(安田顕)を通して田沼意次(渡辺謙)・意知(宮沢氷魚)親子にまで知れ渡った。その頃の意次は、田安家当主・治察(入江甚儀)の弟・賢丸(のちの松平定信/寺田心)を白河松平家の養子にする話を進めていた。賢丸や母・宝蓮院(花總まり)は反発するが、意次は将軍・徳川家治(眞島秀和)を丸め込み、将軍じきじきに養子縁組をうながすという、断りにくい状況を作り出した。
重三郎は、浄念河岸の見世をたたもうとしていた女将・きく(かたせ梨乃)を助けるために、花魁・花の井(小芝風花)にぞっこんの長谷川平蔵(中村隼人)を半ばだます形で金を工面。そのために平蔵が親の遺産を食いつぶしてしまったことが、花の井から伝えられた。その一方、田安治察が就寝中に急逝してしまう。それは一橋家当主・治済(生田斗真)が操っていた人形の糸が切れたのと、ちょうど同じ頃だった・・・。
■中村隼人の好演光る、「カモ平」こと人間味のある平蔵
蔦屋重三郎周りでは、江戸の庶民の暮らしを見せていく一方で、武士たちのスリリングな政治ドラマも並行して展開している『べらぼう』。その中間的な位置にいて、この2つの世界をつないでいるのが、旗本・御家人などの下級武士たちだ。現在その大きな役割を果たしているのが、1人は蔦重に協力してくれた天才・平賀源内。もう1人が、吉原で金を使いまくって、今や視聴者から「カモ平」なんて呼ばれている長谷川平蔵宣以だ。
江戸の治安を厳しく取り締まり、数々の大捕物を成功させながらも、訳ありの犯罪者には寛大な態度を見せる。池波正太郎の小説で、しばしばTVドラマにもなっている『鬼平犯科帳』によって、現在にも広く知れ渡った火付盗賊改方・長谷川平蔵(ちなみに父と息子も同じ名を名乗ってる)。若い頃はたいそうな道楽息子で、父の跡を継いだあとも、妻子がいるにも関わらず吉原で豪遊の限りを尽くすという、なかなかのクズっぷりだった。
しかしこの『べらぼう』の鬼平は、遊び方がわかってないゆえに、知らず知らず大金を巻き上げられているという設定に。ついには「グラビア雑誌(『一目千本』)のトップに載りたい」という花の井の甘い誘いに乗っちゃって、50両(今でいうと200万円ぐらい?)という大金を貢ぐことになってしまった。将来的には犯罪者たちをビシバシ取り締まることになる鬼平が、詐欺まがいの推し活ですっからかんになってしまうとは・・・長谷川平蔵の将来像を知っている人間ほど、ギャップ萌えしてしまうじゃないか。
この平蔵のお金のおかげで、浄念河岸の人々が救われただけでなく、『一目千本』出版も実現して吉原に人が戻ってきた。本人にその意図はなかっただろうが、花の井が言った通り、これほど粋な吉原でのお金の使い方はなかっただろう。こんな人間味のある平蔵を、シュッとしたルックスなのにダメ男役が上手い中村隼人が、あの無駄に垂れた横髪の動きまで考え尽くして好演した。そして本当にカッコいい役も似合う隼人だけに、次に登場するときはまさに「鬼平」な姿となるのか? 筆者の性癖としては(笑)、当分ダメな姿も見てみたい気もするが・・・。
■賢丸の養子縁組に揺れる田安家、意次の真意は…
ただそんなコメディ色にあふれた蔦重&平蔵パートと違って、ますます不穏さが増しているのが、田沼意次 VS 田安賢丸だ。次の将軍に指名されてもおかしくない立場の賢丸に、白河松平家の養子の話が。これは今で言うと、上位の王位継承権を捨てて一般人となったうえで、県知事になってほしいと頼まれているようなもの・・・と考えたら、田安家のみなさん全員が「NO!」と言うのはわかるだろう。
しかし意次は将軍を動かして、この養子縁組を実現してしまう。これは「聡明だけど保守的な賢丸が将軍になったら都合が悪いから」と考えられてきたけれど、意次を「本当にそんなに悪い人なの?」目線で描く『べらぼう』では「その英明さを白河藩主として発揮してほしい」という気遣いも含まれていた、という理由を出してきた。確かにこの頃は将軍の嫡子が存命で、賢丸は政に一切関われぬまま一生を終えかねなかったのだ。
それぐらいなら多少身分は落ちるけど、その才能を十分活かせるところに羽ばたいて欲しいと、有能な人材を身分問わずバンバン取り立ててきた意次なら、考えてもおかしくない。ただこの話はこの先、田安治察の思わぬ夭折で深い遺恨を残してしまうことになる。ここで意次がどのように振る舞うのか? が来週のポイントになるようだが、この動き次第で、彼が本当に好意から養子縁組を進めたのか、むしろ悪意の方が強いのかが見えてくると思われる。
そして最後の1分で、どうもこの治察の突然死は、一橋治済が一枚噛んでいるのでは・・・ということが暗示された。やはり森下佳子が脚本を務めた男女逆転版『大奥』(NHK)で、仲間由紀恵の演じたサイコパスな治済が視聴者を震え上がらせたが、『べらぼう』でもまた閲覧注意キャラクターになりそうな予感。2024年の主演舞台『バサラオ』でも、出世のためなら手段を問わない極悪非道の美青年役が好評だった生田斗真が、引き続き観る人を震え上がらせるヴィランぶりを見せてくれそうだ。
◇
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。1月26日放送の第4回「『雛形若菜』の甘い罠」では、重三郎が西村屋与八(西村まさ彦)とともに新しい錦絵に挑む姿と、意次が田安賢丸の養子縁組実現に暗躍する姿が描かれる。
文/吉永美和子
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