渡辺直美演じるアキピーと「笑え、ギャルズ」に託した思い

8時間前

歩(仲里依紗)やチャンミカ(松井玲奈)と話すアキピー(渡辺直美)(C)NHK

(写真2枚)

連続テレビ小説『おむすび』(NHK総合ほか)、今週は16週「笑え、ギャルズ」が放送された。16週と続く17週は、結(橋本環奈)が管理栄養士の国家試験を目指して勉強と子育てに励むなか、主人公以外の登場人物にスポットが当たるシークエンスとなっている。

東日本大震災から1年が経ち、東北の人たちが苦しんでいるなか、歩(仲里依紗)はただ物資を送り続けるだけでいいのか、ほかにできることはないのかと悩んでいた。一方、孝雄(緒形直人)や聖人(北村有起哉)をはじめとする「さくら通り商店街」の人々は、ショッピングセンター建設計画で揺れている。

そんななかチャンミカ(松井玲奈)が経営する古着店「ガーリーズ」に、被災して岩手の仮設住宅で暮らす歩のギャル友だち・アキピー(渡辺直美)がやってくる。渋谷のギャル時代から、辛いことも泣きたいことも、笑っておしゃれしてメイクして乗り越えるのだという歩の言葉をずっと胸に留めていたアキピー。

彼女は、「今回の地震だってまだまだ大変だけど、笑って乗り越えてやるわ」と豪快に笑う。そんなアキピーに触発され、歩は自分も笑って生きていこうと決意する。

迷いながらもがきながら、光を見つけ出そうとする神戸の人々の姿を描いた今週の内容について、制作統括の宇佐川隆史さん、真鍋斎さん、そして16週の演出をつとめた松木健祐さんに訊いた。

■ 仮設住宅での生活のなか、色を紡いで生きるアキピー

宇佐川さんは、「16・17週では歩、孝雄、そして『さくら通り商店街』の人々が抱える葛藤と、未来への模索を描きます。東日本大震災を機に、心の奥底に秘めていた思いが浮き彫りになって、それぞれが自分の心に問いかけるなか、揺れ動く気持ちとどう向き合って、彼らが未来へと踏み出していくのか。主人公だけでなく、いろんな人の心にふれられる、いろんな見方ができる2週となっております」と語る。

続けて真鍋さんは、「16週では、物語のなかでとりわけ深く震災で傷を負った歩にスポットを当てました。『おむすび』は主人公・結の物語であると同時に、歩の物語でもあり、ふたりのシスターフッドの物語であると思っています」と述べた。

歩の苦悩と、第16週のキーパーソンであるアキピーの登場に、スタッフはどんな思いを託したのだろうか。

松木さんは、「歩の葛藤を、東日本大震災から1年が経った頃の僕らの感覚になるべく近づけるようにと考えました。『どうしたら復興に関われるだろうか』という自問や、力が及ばないもどかしさが、当時のみんなの心のなかに溜まっていた頃。その思いを歩に体現してもらいました」とコメント。

「そんななか歩は、歩たちが送った古着やアクセサリーをリメイクしておしゃれを楽しむアキピーのバイタリティに励まされます。彼女たちにとってファッションは自分を元気づける大切なアイテム。アキピーは、おそらく色のない仮設住宅での生活のなか、彼女なりに懸命に色を紡いでいるのだと思います」と、思いを語った。

岩手出身、歩のギャル友だち・アキピーを演じる渡辺直美 (C)NHK

◾️ 歩からアキピーへ、アキピーから歩へ。「笑う」ことの大切さ

また真鍋さんは、「阪神・淡路大震災に比べて、東日本大震災は起こってからまだ年月が浅いので、我々スタッフが当時東北まで取材に行ったときの、各々の記憶が鮮明に残っています。アキピーの出身は、僕のなかで大船渡というイメージなのですが、大変な被害を受けながら、力強く生きる東北の方々の思いを彼女に託しました」とコメント。

続けて、「この物語のなかで何が救いになっていくのかと考え、あらためて『笑う』ということが大事なのではないかと思い至りました。歩はこれまで、心の底から笑えたことがあるのだろうか。それができていたのが、アキピー、チャンミカと一緒に過ごした渋谷のギャル時代だったのではないか。そのことに歩自身が気づくためのきっかけをくれるのが、アキピーという存在です。かつて歩がアキピーに言った『笑おう』という言葉が、アキピーを通じて再び歩に返ってきたんですね」と話した。

アキピーに鼓舞され、「大切な仲間といっしょに、笑うって決めた」歩は、どんな一歩を踏み出すのだろうか。次週17週「Restart」での、歩や神戸の人たちの「再起動」を見届けたい。

取材・文/佐野華英

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