途絶えた家業あきらめきれず…50代女性が決意し、京都で復活

15時間前

猫のパーツなどを組み合わせた愛らしいデザインが人気

(写真6枚)

「私が世界で最も尊敬するクリエイターは妹です。廃業した家業を復活させ、抜染(ばっせん)という染色技術を後世につなごうとしています。(略)屋号がニューデザインで復活した時には、泣いてしまった・・・」。映像クリエイターの髙田雅之さんがSNSに投稿した思いに、国内外から「素敵です!」などの称賛が続出。

「抜染」とは、布から色を抜くことで模様を表現する染技法。その布を使い、伝統とモダンを融合させた愛らしいデザインのアクセサリーを生み出す髙田有里さんに、家業を継いだ思いや抜染の魅力を訊いた。

■ 抜染は「マイナス」から生まれる造形美

2022年に「髙田加工所 takada」(京都市伏見区)を立ち上げ、アクセサリーや小物を制作販売する髙田さん。実家は約100年前から京都で着物の染色補正・紋付けをおこなう生業で、幼い頃から伯父と父親の職人技を目にしてきた。「父が湯呑みを使って抜染作業をしていて『何やってるの?』と興味がわいて。20代の頃に一度は継ごうとしたのですが、『着物が減っている時代だから』と断られずっとモヤモヤしていました」。

長年、デザインなど別業種に就いていたものの、2020年に先代の廃業が決まり、「50歳を機に一生続けられる仕事をしたい」と、染技法を継ぐことを決意。先代らに基礎を教わりながら、着物ではない独自の商品や制作方法を模索し、まずは布面積の少ないアクセサリー作りに挑戦したという。

版の網目から布にしっかり糊が付くよう、塗り広げていく髙田有里さん

伝統の印象が強い「抜染」だが、髙田さんの作業はシルクスクリーンでの現代風スタイル。版には自身がPCでデザインした文様が細かい網目で施されており、布に重ねて薬剤を混ぜた糊を塗っていく。版の抜け部分だけ付いた糊をドライヤーで乾かし、アイロンの蒸気をあてると布の地色が抜けて、白色の文様がくっきり。髙田さんは「綺麗に白が見えてくる瞬間が楽しい!」と笑顔で語る。布を水洗いすれば完成だ。

アイロンの蒸気で、白の文様がくっきり
水洗いで糊を落とし、乾かせば完成

最大の魅力について「色をプラスする染めとは逆の『抜く』は、マイナスなのかもしれませんが、ものを排除したからこそ生まれる造形美に惹かれています」。現在は茜、藍、芥子(からし)色の布をベースに、優美な「麻の葉」「青海波」など、長年愛される文様を染め抜き。染色よりも細やかな線・柄を表現でき、プリントのような色褪せがなく、布そのもののフラットな手触りを保てるといった利点も多いそうだ。

■ 国内客にはチャーム付き、海外客には文様が人気

これまで、イヤリング・ピアスを中心に、手作業で50種ほどのアクセサリーを制作。12柄の文様から選べる抜染の布で、円形ボタンなどを覆ったシンプルなデザインほか、天然石を使ったどんぐり風チャーム付きなど、季節にあわせたものも揃い、価格は3000円台から(布なし商品は1000円台~)。

抜染の布を使い、12種の文様から選べるピアス&イヤリング

1番人気は、2024年の猫の日(2月22日)から販売している猫のチャーム付きピアスで、髙田さんがデザインした黒猫は、遊び心あふれるデザインに。ネット販売では、国内客を中心にチャーム付きが人気で、手作り市などの現地販売では、伝統的な文様の商品が海外客に好評という。今後は柄を増やし、ワンポイントでもアレンジできる抜染をいかしたアパレルなど幅広い展開を構想中だ。

家業の染技術を受け継ぎ、アクセサリー等で魅力を発信する髙田有里さん

伝統とモダンを取り入れた挑戦を続け、屋号と水生植物「沢瀉(おもだか)」の家紋を復活させた髙田さん。「伯父に初めて商品を見せた時には『80点! 四代目やな』と言われ、合格点をもらえたかなと。父が手伝いで切ってくれる布は、完成時には見えない部分まで丁寧なので、職人としてのこだわりですね」と、伝統技術とともに先代の思いも引き継いでいく。

販売は「髙田加工所 takada」オンラインショップ、常設販売はハンドメイド雑貨店「peaberry」(京都市上京区)、その他販売状況は公式インスタグラムで確認を。

取材・文・写真/塩屋薫

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