蔦重の板元の道を急に開いた、ライバルの自爆【べらぼう】

22時間前

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第6回より。長谷川平蔵(写真右、中村隼人)と話す重三郎(写真左、横浜流星)(C)NHK

(写真5枚)

江戸時代のポップカルチャーを牽引した天才プロデューサー・蔦屋重三郎の劇的な人生を、横浜流星主演で描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。2月9日放送の第6回「鱗(うろこ)剥がれた『節用集』」では、のれん分けを目指して鱗形屋で働きはじめた蔦重が、思いがけない裏事情を知ったことで起こる騒動が描かれたが、ドラマ屈指の人気キャラの再登場で、SNSが盛り上がる場面もあった。

■ 鱗形屋の偽本作りに気づくも蔦重は…第6回あらすじ

蔦重が地本問屋・鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)の元で働くようになった頃、上方(関西)の板元から、江戸で節用集(国語辞典)の偽本が出回っていると訴えがあった。蔦重は、鱗形屋の厠から偽本作りの証拠となる紙を発見。そして孫兵衛と西村屋与八(西村まさ彦)が、蔦重をうまく飼いならし、吉原が自前の板元を持たないようにするという話をしているのを聞いてしまう。蔦重は迷ったあげく、密告も忠告もしないことにした。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第6回より。偽板(海賊版)製作の容疑で、鱗形屋に突入する長谷川平蔵(中村隼人)たち(C)NHK

しかし蔦重が鱗形屋にいるときに、長谷川平蔵(中村隼人)らが取り調べに入る。店の者たちは連行されるが、蔦重は平蔵が「吉原の茶屋の者」と制止したため、孫兵衛は蔦重が密告したと思い込む。蔦重は平蔵に、心のどこかでこうなることを自分は望んでいたが、いざ実現してみると堪えるものだと告白。しかし平蔵に「世の中そんなもんだ。ありがたくいただいておけ」と声をかけられたことで、蔦重も腹をくくるのだった・・・。

■ 名探偵蔦重、あっという間に真相にたどり着く

自分で出版社を作るという夢の第一歩として、まずは大手出版社のパートみたいな立場から再スタートとなった第6回の蔦重。社長兼編集長の孫兵衛はいきなり「ドッカンドッカン売れる本を作ってね!」と言い出して、さっそくSNSでは「金がなくてもできて、派手で、当たるようなものって、調子よすぎ」「パート社員にムチャ振りしすぎだろ」などのツッコミが飛んだが、まさかこの30分後にとんでもない逆転劇が舞い込んでくるとは・・・!

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第6回より。鱗形屋と蔦重について密談する西村屋(西村まさ彦)(C)NHK

その入口となったのは、上方の節用集の海賊版が見つかったこと。「節用集」は、今でいうと国語辞典兼漢和辞典みたいなもので、武家・商人には必需品と言える一冊。この件に関しては、早い段階から鱗形屋がお武家様から怪しい依頼を受けたり、主人みずから印刷・製本作業を深夜に行ったりと、どう考えてもクロだなという動きを見せていた。そこに蔦重がいつ気づくのか? と思ったら、摺り損じの紙をトイレットペーパーにしているという内部事情を知っていたために、あっさり真相にたどり着いてしまった。

これにはSNSも「裏で無断転載転売ヤーしとったんか」「摺り損じのかわや紙からアシがつくとか」と、鱗形屋さんの脇の甘さを指摘する声が相次いだが、そのあとに西村屋との「蔦重を上手く利用している」という密談を聞かれるに至っては「んもおおお!! 何で蔦重の真っ直ぐな情熱をいつも踏みにじる奴らがいるんだよおおお!!」「やっぱオメー悪い奴じゃねえか鱗形屋! おいおい蔦重、構わねえから悪事を密告したれ!!」という怒りのコメントがあふれかえった。

■「カモ平」から「鬼平」に…!愛され男・長谷川平蔵が再登場

ここで蔦重が怒り心頭で奉行所にチクってもなんらおかしくないし、実際、須原屋市兵衛(里見浩太朗)に相談しかけたけど、結局は運を天に任せるということに。しかし天の判断は、悪魔のように早かった。鱗形屋に偽本作りを依頼&密売していた小島松平家が、板元が訴えたと知るや否や即座に尻尾切りに走り、鱗形屋がその罪をすべて負う形になってしまったのだ。その捜査の切り込み隊長となったのが、お久しぶりの「カモ平」こと長谷川平蔵だったので、SNSは狂喜乱舞状態に!

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第6回より。鱗形屋の逮捕劇で再登場した長谷川平蔵(中村隼人)(C)NHK

「長谷川様ーー!!!!(うちわ)」「べらぼう民の100%が愛している鬼平きたーー!!!」などの熱烈な声援が飛んだのにつづけて、吉原で搾取されていた頃とは打って変わったシゴデキぶりに「凄い、めちゃくちゃカッコいい鬼平をみた・・・前髪チョロ男じゃない鬼平」「ヤング鬼平今回格好良いじゃん!? いい仕事してんじゃん?!」「これは後の火付盗賊改方」「おめでとう!! カモ平は鬼平に進化した!!」という感激の声があふれた。

さらに、鱗形屋に取って代わることをひそかに期待して、素知らぬふりをつづけていた蔦重が、その罪悪感を平蔵に打ち明けると、粟餅を渡しながら「棚からぼた餅」と「濡れ手に粟」を掛けた「濡れ手に粟餅」という言葉で蔦重を励ます。人情味あふれる「鬼平」らしいシーンだったけど、そう言ったあとに一瞬「決まった・・・」と言わんばかりの笑みを見せたのを、カモ平ファンたちは見逃さなかった!

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第6回より。粟餅とともに、苦い思いをかみしめる重三郎(横浜流星)(C)NHK

「『濡れ手に粟餅』のくだりの後のドヤ顔で『あぁやっぱりあのカモ平だ!』と嬉しくなった」「(俺いま格好良いこと言っちゃった?)的な最後の抑えきれないニヤニヤが最高」「手柄も立てて粟餅の洒落も言えてドヤ顔のカモ平さん可愛い」「合わない職でも真面目に働き、たまたま現場に居合わせた知り合いを元気づける。良すぎる。好きにならない理由がなさすぎるこの人」と、ますますファンになったという声が相次いだ。

このときの平蔵くんは「御書院番士」という、いわば江戸城内外のパトロール兼SP要員のような役割。そして蔦重も板元となるうえで、大きな壁が一つ壊れただけに過ぎない。まだ自分が本当にやりたいことがわからない、あるいはやりたいことは決まっていても、どうすればそれが実現するのかがわからない。方向性は違えど、どちらも「自分探し」の真っ最中という点で、この2人は馬が合ったのだろう。平蔵の将来を考えると難しいかもしれないが、どうかこのまま奇妙な友情を育むだけの関係でいてほしい。

大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。2月16日放送の第7回「好機到来『籬(まがき)の花』」では、蔦重がある条件で地元本屋の仲間になれる約束を取り付け、これまでにない吉原細見「籬の花」作りに乗り出すところが描かれる。

文/吉永美和子

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