元宝塚・紅ゆずる主演舞台が大阪で開幕、すべての感情を揺さぶる傑作

11時間前

「FOLKER」のゲネプロより(C)大阪国際文化芸術プロジェクト「FOLKER」

(写真5枚)

今から25年前、女性死刑囚たちがフォークダンスバトルに挑戦するという異色の内容で、観客を笑いと涙と興奮の渦に巻き込んだ、幻の傑作コメディ『FOLKER』。元宝塚歌劇団トップの紅ゆずるを主演に迎え、作者の後藤ひろひとが再び演出した舞台が、2月14日に大阪で開幕した。

ゴシップ誌記者(浦井のりひろ/男性ブランコ)に売り込みのあった、手書きの原稿。それは元囚人が、フォークダンスバトル「FOLKER」に出場したときのことを語った手記だった・・・という導入から、舞台は一気に彼女たちが『コロブチカ』を踊る場面にワープ。物語は、手記で描かれた女性囚人たちの世界と、原稿を読む記者の周囲で起こる奇妙な出来事が、並行して描かれていく。

「FOLKER」の出演者、左から後藤ひろひと、小島聖、紅ゆずる、遠藤久美子、内場勝則(C)大阪国際文化芸術プロジェクト「FOLKER」

とにかく圧巻なのが、闘技場のような舞台上で幾度も披露されるフォークダンスの数々だ。誰もが学生時代に一度は踊ったことがある『マイムマイム』や『ジェンカ』などが、高度なテクニックでクールに踊られたり、社交ダンスやベリーダンスや河内音頭(!)などと融合したり。なかでも女囚たちのチーム「スティール・キャッツ」が、飛び切りの笑顔で踊るフォークダンスは、太陽のような明るさに圧倒された。

このダンスの数々に牽引されるドラマパートも、負けないぐらいに刺激的。孤独な新入り死刑囚・空那(紅)が、「笑ってくださーい」が口癖のダンス講師・松岡(内場勝則)によって心を開く感動話があるかと思えば、強敵「フォーク・ウォリアーズ」と空那との因縁話はまるでサスペンス。そして松岡の思わぬ背景や、記者が読む原稿を記した人物の正体などで、特に後半はほぼほぼ驚かされっぱなしだ。

「FOLKER」のゲネプロより(C)大阪国際文化芸術プロジェクト「FOLKER」

一方でギャグの名手の後藤らしく、フォーク・ウォリアーズ新入りとして暗躍する謎の男・ねじ武史(平井まさあき/男性ブランコ)や、見た目は親父なのに身体機能は女性というピーターガン(宮下雄也)などが起こす、ときにシュールでときに力技な笑いも満載(後藤得意の群馬イジりも!)。まさに笑ったかと思えば泣いて、感動したかと思えば笑って、興奮したかと思えば涙する・・・と、すべての感情を揺さぶられるような「傑作」の復活劇だった。

「FOLKER」のゲネプロより(C)大阪国際文化芸術プロジェクト「FOLKER」

初日のゲネプロ後の囲み取材では、出演者たちも「今までダンスをやってなかったので、足首も腰も痛いけど(笑)、たくさん愛を込めて全力で出し切りたい」(遠藤久美子)」「(出演者が)50人ぐらいで、すごいエネルギーの塊。そのエネルギーが伝わればいいなと思います」(小島聖)「『え、そんなんできるんですか?』という感じで、普段とは違った私を観ていただければ」(内場)など、この舞台を心から楽しんでいることが伝わる。

「FOLKER」のゲネプロより(C)大阪国際文化芸術プロジェクト「FOLKER」

そして後藤は「お客様の笑い声やため息とかが入ってこそ(舞台は)完成する。早くお客様に来てほしい」と、大きな手応えと期待を語った。ほかには楠見薫、大路恵美、粟根まこと、松尾貴史なども出演。会場は「堂島リバーフォーラム」(大阪市福島区)で、23日まで上演。チケットは6000円。当日券の状況は、公式Xなどで確認を。

取材・文/吉永美和子

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