『おむすび』にカムカムバンド、セッション披露の撮影秘話

2025.2.19 08:15

『おむすび』第98回より。孝雄(写真左、緒形直人)とジャズバーを訪れた聖人(写真右、北村有起哉)(C)NHK

(写真6枚)

放送中の連続テレビ小説『おむすび』(NHK総合ほか)の第20週「生きるって何なん?」では、胃の精密検査を受け、がんを疑う聖人(北村有起哉)が自らの人生を顧みる姿が描かれている。検査の結果が心配で気が気ではない聖人に対し、結(橋本環奈)は自分も心配な気持ちを抑えて「結果待つしかないよ、お父さん」と医療従事者らしく気丈に励ます。

娘が働いているところを見てみたかったと、歩(仲里依紗)の古着店「ガーリーズ」を訪れた聖人は、孝雄(緒形直人)と久しぶりに再会。歩にスタイリングしてもらった服を着て街に繰り出した。

2月19日放送の第98回では、ジャズ好きの孝雄にジャズバーに連れてきてもらった聖人。2人が人生を語り合うシーンで、現在昼に再放送中の『カムカムエヴリバディ』(2021年後期)のトランペット指導で劇中に何度も登場したMITCHが率いるバンドの演奏が披露された。このシーンの撮影秘話を、20週の演出を担当した松木健祐さんに訊いた。

『おむすび』第98回より。古着ショップの服に着替えた聖人(写真左、北村有起哉)を、大阪の街に連れ出す孝雄(写真右、緒形直人)(C)NHK

◾️1曲目はフリースタイルで「生っぽさ」、2曲目はしっとりとピアノ

松木さんは、「『おむすび』の制作スタッフのなかには『カムカム』や『ブギウギ』(2023年後期。MITCHは『ブギウギ』にもトランペッター役で出演している)のスタッフも複数いて、台本が出来あがってきたときにすぐに『MITCHさんに演奏をお願いしたい』という話になりました。MITCHさんはドラマの内容を深く理解されて、どんなリズムの曲がいいか、どういうバンド編成がこのシーンとってベストかなど、いろいろとアイデアを出してくださいました」と話す。

また、ジャズバーのシーンで披露した2曲に関して、選曲にも一苦労あったという。「1曲目は、孝雄に連れられて生まれて初めてジャズバーに来た聖人があっと驚くような曲を、とお願いしました。ジャズのナンバーって、曲によっては100年ぐらい著作権が保存されているものもあったりして選曲が難しいんです。MITCHさんからいろんな提案をいただいたんですが、どれも著作権がNGで。プレイヤーのみなさんが自由に楽しく演奏しているところを聖人に見せたいということもあって、1曲目はフリースタイルのセッションを演奏していただきました」と松木さん。

松木さんは、1曲目の撮影では即興演奏ならではの工夫があったと明かした。「通常、ステージでの演奏を撮る際は『どの瞬間にどのパートが何を弾いて(吹いて)』というのをあらかじめ聞いてカット割りしていくんですね。でも今回の1曲目はフリースタイルなので、その瞬間にしかできない演奏。何があっても撮りこぼさないように、技術部にカメラをたくさん用意してもらって1回で撮影し、後で編集でカット割りしました。『生っぽさ』が出たシーンになっているのではないかと思います」。

また2曲目については、「聖人と孝雄が人生について語るシーンなので、『ここはしっとりとピアノひとつで、シンプルにいきましょう』とMITCHさんに相談して、『プア・バタフライ』という1910年代の曲を提案していただきました」とコメントした。

『プア・バタフライ』を聴きながら、聖人は「ふと思ったんや。俺の人生、ほんまにこれでよかったんかなって」と言い、孝雄は「俺は生きられへんかった人たちのぶんまで、思いっきり生きるって決めたんや」と語った。今週の週タイトル「生きるって何なん?」の答えを、聖人はどこに見出すのだろうか。

取材・文/佐野華英

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