「甲子園文字」がフォントで誕生、次の100年へ歴史を刻む

21時間前

「阪神甲子園球場」にて、甲子園フォントで表示された「甲子園」の文字(2月27日・兵庫県西宮市)

(写真9枚)

「阪神甲子園球場」(兵庫県西宮市)のスコアボードで、数々の試合に使われてきた「甲子園文字」。その伝統を受け継ぐ「甲子園フォント」が完成し、2月27日、同球場にてお披露目式が開催された。

式では試合開始を告げるサイレンの後に、スコアボードに巨大な「甲子園」の3文字がくっきり。その後は「1番センター、近本」と、場内放送係員のコールに合わせて、選手名がお目見え。先攻は2023年のリーグ優勝を決めた試合、後攻は日本一となった1985年の開幕試合での新旧スタメンの名が並び、時を超えた夢の競演が演出された。

スコアボードには、先攻・2023年のリーグ優勝を決めた試合、後攻・日本一となった1985年の開幕試合での新旧スタメンの名を表示(2月27日・兵庫県西宮市)

同球場に初代の木製スコアボードが誕生したのは1925年。2代目から職人が黒い板に毛筆で手書きした文字が使われ、その独特な字形が「甲子園文字」として親しまれてきた。1984年からの3代目は電光掲示式へ変更されたが、球場職員が手書き時代を踏襲したオリジナルの文字を作ることで伝統を受け継いできた。

球場併設「甲子園歴史館」には、2代目スコアボードで使用された懐かしの選手名板が展示されている

2024年に開場100周年を迎えた同球場。また、同年にフォントメーカー「モリサワ」(本社:大阪市浪速区)が日本の出版・広告の発展に貢献してきた「邦文写真植字機」の発明から100周年を迎えたことから、共同プロジェクトが発足。「次の100年につなぐ」をテーマに、文字のプロフェッショナルである同社が「甲子園文字」を現代のデジタル実用に即した「甲子園フォント」として制作することに。

人間味があり、甲子園特有の味わいを演出してきた「甲子園文字」は、一般的な明朝体より少し横につぶれ、縦画が太いコントラストの高いデザイン。筆の勢いを感じさせる「はらい」「はね」「打ち込み」が特徴的だ。

球場併設「甲子園歴史館」には、「阪神タイガース」と対戦した「長嶋」「王」など、往年の選手名板も

制作にあたり、球場に保管された昔のパネルから平均的な特徴を見極め、読みやすさに配慮したUD(ユニバーサルデザイン)フォントをベースに、新たに約3800文字を作成(数字では特に「3」を昔風に調整)。テスト表示では、実際の観客席から見た印象の検証もおこない、現在の高画質なLEDビジョンでも「細かくなめらかに表現できる」文字を意識したという。

スコアボードを背に、お披露目式に登壇した「阪神電気鉄道」の谷本修取締役(左)、「モリサワ」森澤彰彦社長(2月27日・兵庫県西宮市)

お披露目式では、「阪神電気鉄道」の谷本修取締役が「甲子園フォントが完成したことで、デジタル表示の世界において、甲子園文字が『永遠の生命』を得た。多くの野球ファンのみなさまに親しまれ、これから生まれる数々の名場面、名選手たちとともに新しい歴史を刻んでいくことを祈っております」と語った。

今後は、3月4日の「阪神タイガース」対「中日ドラゴンズ」のオープン戦から使用が開始され、同球場でのプロ野球・高校野球などの試合で使用予定。球場併設「甲子園歴史館」では、4月6日まで甲子園フォントに関する特別展示を開催中。また、2月28日・朝10時から球場ショップ、球場公式オンラインショップで「甲子園フォントグッズ」が販売される。

取材・文・写真/塩屋薫

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