震災の教訓、被災者の声活かし…改めて「減災グッズリスト」を聞く

14時間前

同センターで配布されている「減災グッズチェックリスト」。阪神・淡路大震災記念人と防災未来センター」ホームページからもデータがダウンロードできる

(写真10枚)

阪神・淡路大震災から30年、東日本大震災から14年。発生から今日までの間にも、各地で大きな地震や水害、山火事…多くの自然災害が発生し、甚大な被害をもたらしている。そして、今後30年以内に南海トラフ巨大地震が起きる確率は、「70パーセントから80パーセント」とされていたが、2025年1月に「80%程度」に引き上げられ、いつ大規模地震が起きてもおかしくない状況だ。(政府の地震調査委員会が公表)

そんな中で、日頃から災害への備えはできているだろうか?「実は、何もできていない…」と言う人が、まず今すぐ準備すべきことは何か。防災学習施設「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」(神戸市中央区)を取材した。大規模災害が発生を想定し、被害を最小限に抑えることを目的に事前に対策をおこなう「減災」の考え方とともに、備えておきたいアイテムなどについて、話を聞いた。

同センターではチェックリストを多言語対応
同センターでは、今回紹介したチェックリストを英語、韓国語、中国語、台湾語でも用意しており、過去の災害の教訓を日本だけでなく、世界に広く発信している

同センターは阪神・淡路大震災の経験を語り継ぎ、その教訓を未来に生かすこと、防災・減災の世界的拠点となることを目指して今回2002年に設立された防災学習施設。現在、国内外から年間およそ50万人が訪れ、2024年9月には来館者1000万人を達成し、2025年1月17日に天皇皇后両陛下も施設を視察されたことでも知られる。

同センターではボランティアスタッフが地震のメカニズムの解説なども行っている
同センターではボランティアスタッフが地震のメカニズムの解説なども行っている

◆ 被災経験者など過去の経験を元に制作「減災グッズリスト」

同センターでは、実際に地震を体験し被災した人や、同センターの職員、さらにボランティア・スタッフなどによる「防災グッズ委員会」によって検討・立案された「減災グッズチェックリスト」を独自に制作し、配布している。

「多くの方が犠牲となった阪神淡路大震災、東日本大震災が教訓となり、その後、避難や備えの考え方も進展していて、昔から言われている『非常持ち出しグッズ』以前に、常に携帯する『0次の備え』という考え方が加わりました。『減災グッズリスト』にはそれも踏まえた、新しい情報です。災害に備えに『空振り』ということはなく、すべて災害対応力をつける為の『素振り』になりますよ」と話すのは同センターの事業部運営課・松村さん。以下に「減災グッズチェックリスト」に沿って、必要な備えをステップごとに紹介する。

◆ 備えのステップ1:「飴ちゃん」も非常時は役に立つ!いつも携帯「0次の備え」

通勤通学時や、お出かけ先に、いざというときに使える防災グッズを日頃から持ち歩くことを『0次の備え』と言い、実は日々食べているお菓子など、例えば「飴ちゃん」も非常時には栄養補給ができるため、「減災グッズ」になりえるそう。まずは簡単にできるここからはじめてみよう。

0次の備え一例:飲料水(500ml)、携帯食(キャンディーやチョコレート、栄養補助食品)、大判のハンカチやてぬぐい、携帯電話(充電器やバッテリーも)、使い捨てカイロ、マスク…他

0次の備え一例。普段の生活にプラスアルファ、常に持ち歩けるもの(阪神・淡路大震災記念人と防災未来センター展示より)

◆ 備えのステップ2:一人ひとつ用意、自宅から避難所へ1次の備え「非常持ち出し品」

両手が空くリュックなどに、誰かの支援がなくても最低1日やっていける最低限のものを用意しよう。また、頭を守るヘルメットや防空頭巾、足元を守る運動靴装備も一緒に備え、移動の際などに役立てたい。

1次の備え一例:飲料水(1.5リットル程度)、非常食(乾パンなど水・調理なしで食べられる)手袋、救急用品セット、ビニールシート、トイレットペーパー、ペン、万能ナイフ、ガムテープ…他

1次の備え一例。避難所への持ち出しグッズは、筆記用具や現金なども(阪神・淡路大震災記念人と防災未来センター展示より)

また「非常持ち出し品」含め、避難の際に必要となるものは、人によって異なるのが実際のところ。例えば持病のある人は、薬や処方箋のコピー、高齢者であれば入れ歯や補聴器、乳幼児がいる場合は、ミルクや離乳食、紙おむつなど、女性であれば、生理用品やスキンケア用品など…。それぞれ必要な考えて用意したい。

1次の備え一例。人によって必要なものが変わる、赤ちゃんがいる、ペットがいる、持病がある、などにあわせて必要なものを揃えておこう(阪神・淡路大震災記念人と防災未来センター展示より)

◆ 備えのステップ3:家の中に備蓄し、助けがなくても何日かしのげる「ストック」

自宅が安全であれば避難所ではなく「在宅避難」という選択もできる。ライフラインが寸断され、断水が起こったり、下水が流せない、ガスや電気が使えない場合に備え、3日~7日間ほど自宅で自給自足できるよう、水とトイレの対策、そして食べ物を準備したい。生きる上で欠かせない水はひとり1日3リットル。洗面や洗濯などに使用する水は別途必要だ。

2次の備え:水(ひとり1日3リットル×同居人数×3~7日分)、災害用トイレセット、常温で保存できる食材(ストック食材を多めに蓄え、古いものから食べて補充する)

2次の備えは、在宅避難で必要な水とトイレ
2次の備え一例。在宅避難で必要な水とトイレをしっかりと(阪神・淡路大震災記念人と防災未来センター展示より)
2次の備え一例。缶詰やレトルトのほか、食べなれたストック食材をバリエーション豊かに。自宅に最低7日分の食料をできれば用意したい(阪神・淡路大震災記念人と防災未来センター展示より)

さらに、調理するのに必要なガスコンロや食器類、寒さをしのぐ寝袋やシートなどのキャンプ、アウトドア用品は実は災害時にも活躍する。これらも安心のために準備できるとベター。

2次の備え一例。すでに自宅にアウトドアグッズがある人は、いざというときにすぐに出せるよう、日頃から整えておきたい(阪神・淡路大震災記念人と防災未来センター展示より)

今回紹介したチェックリストは、同センターの公式サイトからもダウンロードできる。いちから必要なものをすべて用意するには、時間がかかるかもしれない。また一度準備しても、最低年2回備えの見直しは行いたいところ。今日から少しずつ取り組んでみては?

同センターには子ども向けに減災を遊びながら学ぶアイテムなども多数
同センターには子ども向けに減災を遊びながら学ぶアイテムなども多数

「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」の開館時間は、朝9時30分~夕方5時30分(最終入館は閉館の1時間前まで)。休館日は毎週月曜日 (月曜日が祝日・振替休日の場合は翌平日)と年末年始。入館料は、西館・東館、大人600円、大学生450円、高校生以下無料。(東館のみの場合は大人300円、大学生200円、高校生以下無料)なお、毎月17日には無料で施設を見学可能。3月17日は休館日のため、翌18日が無料開放となる。

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