元サッカー少年の佐野勇斗が醸し出す、コーチングのリアリティ

2025.3.7 08:15

『おむすび』第110回より。娘・花と話す翔也(佐野勇斗)、結(橋本環奈)(C)NHK

(写真3枚)

今週放送された連続テレビ小説『おむすび』(NHK総合ほか)第22週「理想と現実って何なん?」では、結(橋本環奈)が管理栄養士として、食品メーカーに勤める幼なじみの菜摘(田畑志真)が企画した高齢者向けのコンビニ弁当の開発に協力する姿が描かれた。

アラサーとなり、仕事上では「新人」の枠から卒業して「中堅」の域に足を踏み入れた結と菜摘。彼女たちの新たな挑戦と並行して、「さくら通り商店街」の要蔵(内場勝則)が妻の介護のためにテーラー職人を引退し、老人ホームに入るというエピソードが置かれた。

結や菜摘の親世代がそれぞれ自らの老後に想いを馳せ、「世代交代」がテーマとなった22週。3月7日放送の第110回では、結の夫・翔也(佐野勇斗)が野球で果たせなかった夢の跡、ノートの裏表紙に書かれた「サクセスロードマップ」を、ふたりの娘である花(宮崎莉里沙)がサッカーで叶えると誓うシーンが胸に迫った。

「夢はでっけえほうがいいべ」「何回でも書き換えればいいけん」。自分の「サクセスロードマップ」を書く花の背中を押す翔也と結の姿に、甲子園出場を果たせなかった高校3年生の翔也と、それを心配そうに見ていた結の姿が思い出される。この、ノートによる「夢のバトンタッチ」の作劇について、制作統括の宇佐川隆史さんと真鍋斎さんに話を訊いた。

『おむすび』第31回より、翔也(佐野勇斗)と話をする結(橋本環奈)(C)NHK

■「翔也はこのノートだけは捨てられずに大事にとってあるはずだよね、と」

真鍋さんは、翔也が押し入れの奥にしまっていたノートについて、「作り手の我々としてもとても大事に思っているアイテムです」と語り、こう続ける。

「ノートが後から出てくる、そして花に引き継がれるという流れは、脚本家の根本ノンジさんと脚本の打ち合わせをするなかで、ごく自然に出てきました。ボールやグローブは『栃木の実家に置いてきた』と翔也の台詞にありましたが、このノートだけは捨てられずに大事にとってあるはずだよねと。翔也の思いを大事にしたい、その夢が娘の花に引き継がれるとしたら、やっぱりノートをあそこで出すしかないという話になりました」。

また、翔也から花に「ノートの引き継ぎ」がおこなわれたシーンについて、宇佐川さんは「佐野さんと宮崎さんは撮影以外の時間も本当の親子のように和やかで、おふたりの関係性があのシーンにとてもよく出ていたと思います。久しぶりに登場したノートを見て佐野さんは、『懐かしいな』としみじみされていました。カメラが回る前に佐野さんがノートの裏表紙を宮崎さんに見せながら、『これパパが書いたんだよ。小学生の時に書いたにしては字がうますぎるけどね』と言って笑わせたりして。その温かい空気感がシーンにそのまま出ていました」と語る。

『おむすび』第103回より。結の祖父・永吉の相手をする翔也と花。写真左から、花(宮崎莉里沙)、永吉(松平健)、翔也(佐野勇斗)(C)NHK

■ 元サッカー少年の佐野勇斗はラモス瑠偉との対面に感激

翔也を演じる佐野勇斗は自身も学生時代、サッカーに打ち込んでいたとのことで、その経験がシーンにリアリティを持たせているという。

宇佐川さんは、「高校・社会人の野球部時代を撮るために、佐野さんが野球の練習をしていたときも抜群のセンスだなと感心していたのですが、花へのサッカーのコーチングに関しては、本当にご自身にサッカー経験があるので、信頼して託していました。翔也が花といっしょにストレッチをするシーンがたびたび登場するのですが、こうしたディテールのなかには、実際に佐野さんが学生時代にこなしていたメニューも取り入れられていています。ちなみに、21週でラモス瑠偉さんが登場されたとき、佐野さんはシーンそのままの感じで喜んでおられました。『まさかここでお会いできるとは』という実感がこもっていましたね」とコメントした。

翔也から託された夢のバトンを持って、花が走りづつける姿を見守りたい。

取材・文/佐野華英

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