「おむすび」最終盤の重要人物・詩、大島美優の見事な演じ分け

2025.3.21 08:15

『おむすび』第120回より。ラーメンを出されるも、手をつけない患者・詩(大島美優)(C)NHK

(写真2枚)

今週放送された連続テレビ小説『おむすび』(NHK総合ほか)第24週「家族って何なん?」では、結(橋本環奈)が勤める病院に身寄りのない少女・詩(大島美優)が入院してきて、彼女の心の傷の深さが描かれた。

生きる気力を失った詩は食べ物を受けつけず、これまで結がさまざまな人たちに繰りかえし投げかけてきた「美味しいもん食べたら、悲しいことちょっとは忘れられるけん」という言葉が通用しない。

「誰かのために何ができるか」を問い続けてきたこのドラマの最終局面で登場した、詩という少女。彼女は、歩(仲里依紗)の親友で、阪神・淡路大震災で亡くなった真紀に顔がそっくりだ。真紀と詩の2役を演じ分けた大島美優の俳優としての魅力と、物語における詩の役割について、制作統括の宇佐川隆史さんと真鍋斎さんに訊いた。

■ 詩は、結と歩の物語の決着におけるキーパーソンに

最初は真紀役として起用された大島は、オーディションで選出されたという。真鍋さんは、「歩の中学生時代の役を含め、若年層のキャストのオーディションをさせていただいたときに、大島さんの純粋さが目にとまりました。もともとの構想で真紀は、歩が憧れるおしゃれでかっこいい女の子というイメージだったのですが、大島さんが持っている愛嬌と素朴さが真紀に合うのではないかと、キャスティングさせていただきました」と話す。

次週、最終週の25週で詩と歩と結の物語が大きく動くという。この作劇については、「結と歩は、果たして本当に心が解放されたのだろうか。震災を起点に紡いできた姉妹の物語に、最終週で決着をつけなければならない。そのキーパーソンとして、脚本家の根本ノンジさんから詩という人物の提案がありました。その後、詩が真紀に似ているという設定が出てきて、それならばぜひ大島さんに演じていただこうと、再オファーしました」と真鍋さん。

『おむすび』第120回より。患者・詩(写真左、大島美優)に名刺を手渡す歩(写真右、仲里依紗)(C)NHK

■ 真紀と詩、この2役の重要性に気づき台本を読み込んできた

天真爛漫な真紀と、心に傷を抱える詩。真逆のキャラクターを見事に演じ分けた大島について真鍋さんは、「大島さんが真紀を演じるにあたっては純粋に一生懸命に、シンプルにアプローチされたと思うんです。真紀は震災で亡くなってしまう。その先の物語を大島さんは知らなかったわけですからね。おそらく放送を観て、真紀がこれほど物語のなかで重要人物だったこと、その役目を預けられたんだと、気づいたのではないかと想像します」とコメント。

そして「詩役で再登場をお願いしたときは、すごく考えてこられたという印象を受けました。編集で映像を拝見していても、橋本さんや仲さんに負けず劣らず、ゆったりとした表現をされていて。何度も台本を読み込んできたんだろうなというのが、芝居に出ていました」と絶賛した。

■ 最終週は、大きな意味での「家族」の物語に

宇佐川さんは最終週の展開について、「25週では、私たち制作者がこれまでずっと追い求めてきた、人と人どうしのつながりや、大きな意味での『家族』についての最終章が描かれます。その鍵となるのが詩という存在。誰もが不安や生きづらさを抱える現代社会にあって、私たちはどう生きて、未来を背負う子どもたちに何を伝えていくのか。最終週、詩と結と歩をめぐる物語を通じて、感じていただけるのではないかと思っています」と話した。

次週、最終週の「おむすび、みんなを結ぶ」で、結、歩、聖人(北村有起哉)、愛子(麻生久美子)はどんな選択をするのだろうか。

取材・文/佐野華英

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