堂本剛、大阪で新作を語る「がんばって来ての『今』なんです」

2025.4.4 17:00

堂本剛によるクリエイティブワールド「.ENDRECHERI.」(エンドリケリー)

(写真2枚)

堂本剛によるクリエイティブワールド「.ENDRECHERI.」(エンドリケリー)の全国ツアーが4月よりスタート。関西でも、堂本の故郷・奈良をはじめ、大阪、兵庫、京都で公演が開催される。2月にはそんな「.ENDRECHERI.」のファンクミュージックの世界が詰まったミニアルバム『END RE』がリリースされた。そこで今回は、そんな堂本が同作でなにを表現しようとしたのか、じっくり話を訊いた(取材・文/田辺ユウキ)。

■ 「これって本当の自分じゃないんじゃないか」という気持ちに

──堂本さんはこれまでのインタビューでも、ファンクミュージックと出合ったことで気持ちが救われ、「生きよう」と思えたとおっしゃっていますね。

おっしゃるように、僕は生きることを悩んでいた時期がありました。そのときにたまたまファンクミュージックに出合い、「生きよう」と思えたんです。気持ちを180度変えてくれた「恩人」です。だから、自分が作るファンクミュージックを通して、いろんな人の命と繋がれたらという考えがあります。

過去のライブの様子

──堂本さんの書籍『ベルリン』(2010年)でも、「生きることがばかばかしくなった時期があった」という風に記述されていました。同書には、堂本さんの心の状態が分かる言葉だけではなく、ご自身の生き方を反映したようなさまざまなファッションもたくさん載っていましたね。

懐かしい本のお話をされますね(笑)。僕はすべての仕事を自分なりに全身全霊、向き合ってやってきました。自分はかつてゼロからイチを作ったりすることがなかったり、誰かに環境を与えてもらったりし、がんばってそれらに応えながら、その延長線上に「僕」が出来上がってきました。ただいずれも自分が始めた物事ではなかったから、どうしてもそんな「僕」と距離感が生まれていきました。「これって本当の自分じゃないんじゃないか」という気持ちが生まれていったんです。

──ゼロからイチを生み出せていない自分に対する葛藤は、すごくよく分かります。

「与えられたことをやるのがあなたの仕事」という声は、もちろんその通りです。また、それをまっとうできずに心が疲れたことに対して「それはあなたの弱さ」と考える方もいらっしゃるはず。いずれも、人それぞれ。だけど僕はそういう環境に置かれるなかで、傷ついたり、悩んだりすることがたまたまある性格でした。そんな自分が死なずに必死に生きていく方法の一つにファンクミュージックがあり、そしてファッションを楽しむということがあったんです。

世の中には「こういう髪型やファッションは良くない」という教えってたくさんあります。それを守ることは大切かもしれませんが、自分の心の声もちゃんと聞いてあげるべき。そうじゃないと、自分が本当に消えてしまうかもしれない。僕はそんな不安な毎日を生きていましたから。

ミニアルバム『END RE』通常盤

■「同じような生き方になるのは、僕はちょっと寂しい気がする」

──むしろファンクミュージックって音楽性はもちろんのこと、いろんな文化、考え、ファッションが入り混じって完成するもの。『END RE』の1曲目『雑味 feat.George Clinton』はまさにそういうメッセージを捉えることができました。

たとえば料理は雑味を取っちゃうじゃないですが。雑味を取る作業が、今の人のあり方と似ている気がして。もちろん「こういう言葉や文字は良くないから使わないようにしよう」みたいな流れ自体は必要です。でも誰もがそういうことに倣いすぎて、ハートをコピペしたみたいになり、同じような生き方になるのは、僕はちょっと寂しい気がします。

「ありのままのあなたが、あなたである」ということは忘れないようにしたい。雑味って「That’s Me」の意味も重ねていて、ファンクミュージックをやるときはその雑味を取り除かず、むしろスパイスとして入れたいなって。

──同曲でコラボレーションしたファンク界の大御所、ジョージ・クリントンとは2023年開催『LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL JAPAN 2023』で共演し、堂本さんはギタリストとして参加されました。堂本さんが「どういう風にパフォーマンスをすればいいか」と尋ねたら、「ファンクしろ」とだけ言われたそうですね。

僕はジョージ・クリントンが率いるバンド、パーラメントの曲『フラッシュ・ライト』(1977年)を聴いたとき、「お前は生きろと」と言われている気がしました。「お前が生きるか、生きへんかのかって、誰が決めんねん。お前しか決められへんやろと。ほんならお前が決めろよ」って。

ジョージ・クリントンの「ファンクしろ」も、同じように受け止めました。「お前の生き方は、俺は知らん。お前が生きたいように生きろよ。なんで俺に聞くねん」と。だからあのステージでは一生懸命、生きましたね。自分のライブで一緒に演奏しているミュージシャンのみなさんにも、いつも同じようなことを言っているんです。「このフレーズだけマストで弾いていただけたら、あとは『自分』でいいですよ」と。

──その人にしか出せない生き方を、出してほしいということですね。

たとえばライターさんも、誰が記事を書いても一緒だったらつまらないじゃないですか。今回のインタビューでは、ライターさんがいろんな本を持ってきてくださり、編集者さんもCDやビデオを持参してくださったから、ここでしかできない話が生まれていますよね。これがファンクってことだと思います。僕もすごく懐かしい気持ちになりましたし、「そういえばこのときって一生懸命生きてきたな」と振り返ることができています。こういう本などがインタビューのスパイスになっているんです。

──持ってきた甲斐がありました!

誰でもできる仕事とかって、極端に言えばあるのかもしれない。でもどんなことでも人が影響するものだから、個人的には「僕はちょっと違う考え方やけどな」と思います。決まった作業であっても、その人の人生観は反映するはずなので。

■ 少しずつ生きやすい時代に…「以前よりも街に出やすくなった」

──『END RE』を聴くと、堂本さん自身の生き方の変化もはっきり感じられます。というのも書籍『晴れときどき拓郎:Younger Than Yesterday』(2003年)の吉田拓郎さんとの対談のなかで、堂本さんは、敵に後ろは見せたくないから人がたくさんいるところは苦手だとおっしゃっていました。

自分が思ってもいないこと、言った覚えがないことを、事実のように伝えられることがたくさんあり、シンプルに「人が嫌いになった」という時期がありました。あと、友だちとご飯を食べに行っても「あ、堂本剛や」と言われ、お店がザワザワしちゃって、友だちもご飯を食べづらくなり「俺、帰るね」を気を使ってくれたこともあったんです。こんなことになるんだったら、外でご飯を食べたりせえへん方がいいなって。自分が外に出たり、動いたりするといろんな人に迷惑をかけるんじゃないかとなっていたんです。

──だけど『雑味』では<街へと 飛び出そうよ>と歌い、2002年リリースのシンガーソングライターとしてのデビュー曲『街』も、今回『Machi….』に生まれかわって新しい聴き方ができます。これらは前向きな変化だと推察します。

それぞれの人生を尊重し合える概念が少しずつ浸透し、生きやすい時代になってきた実感があります。以前よりも街に出やすくなりました。それでもやっぱり、まだまだいろんなことに対する偏見はあります。僕を含めて誰もが一人の人間だし、同じように葛藤を抱えていたりする。僕は今まで、なにかを区別することはありました。でも差別はしたくない。だからこそ区別を越えた表現でいろいろ述べる人を見かけると、やっぱり悲しくなりますね。自分も、みんなも、一生懸命やっているのに。

──だからなのか『END RE』には「愛」を背景とした楽曲が多いですよね。支えあったり、誰かを温かい目で見たりすることって大事ですし、総じてそれは「愛」なのかなって。

「愛」って人によっては照れ臭く感じるかもしれない。でも僕は一度、命について、生きることについて真剣にどん底まで悩んだから、照れ臭くもなんともなくなりました。応援してくださる方たち、そばにいてくれる方たちの愛に救われましたから。そもそも愛の「あ」はすべての始まりで、「い」は命の「い」であるという話を聞いたことがあって。愛があるから生きている、ということですよね。ご縁があってこのような関係性でインタビューを受けているのも、お互いの愛があってのことではないでしょうか。

──堂本さんのお話は思わず聞き入ってしまいます。

僕って本当に誤解されがちなんですよ(苦笑)。よく「僕に対して、みんなそういうイメージなんや」「いまだにそんな風に思ってるんや」とかよく感じます。でも、それ自体はなんも否定しません。だってそれが堂本剛や「.ENDRECHERI.」についてインプットしていることやから。特にゼロからイチを作る仕事ではないときは、やっぱり事の発端が自分じゃない分、「全部は伝わらへんのか」ということが多いです。でも「まあ、それでもええか」と考えられるようになりました。

──『REborn』で<楽に生きれたらいい>と歌っていますが、「まあ、それでもええか」と気楽に考えることも大切であるように思います。

でもそこに「自分」という答えがないと、意味がない気がします。答えがないのに「まあ、それでもええか」は、ほんまになんもなさすぎて人生のうまみがないのではないでしょうか。

僕の場合、奈良に住んでいたときは傷ついた思い出がなにもなく、家族とか周りの人もみんな優しくて。「世の中は優しい人ばかりなんや」と思って東京に飛び込んだら、そうはいかなくて。めっちゃ傷つくことがあったし、ホームシックで「早く奈良に帰りたい」とばかり考えていました。10代ですでに「ここは自分が戦っていける世界じゃない」と確信を持ちましたから。若かりし頃の僕は本当に歩けない状態だったけど、それでもがんばって来ての「今」なんです。そういう経験がなければ、『REborn』の詩は書けなかったはず。

■「ファンクミュージックって関西人寄りの音楽やと思う」

──4月から始まる全国ツアーは、そういう堂本さんの気持ちを間近で感じられる機会になりそうですね。

ステージの一瞬、一瞬をパワフルに楽しみたいです。そしてご来場いただくみなさまにも、それを体感してほしい。『REBORN』という公演タイトル通り、あらためて自分を始めることができるような気持ちになってもらえたら。特に「生まれ変わりたい」と思っている人がいたら、その決意に至るようなライブをお見せしたい。もしなにかに悩んだり、苦しんだりしたときは、いつもでも「.ENDRECHERI.」のライブに来てくれたらいいし。

人生という名のステージがあったら、みなさんもアーティストの一人。僕はこのツアーのステージに立っているけど、でもみんなも同じようにステージ立っているから。だったらみんなで一緒に楽しみたい。あと、関西でライブができるのもめちゃくちゃ嬉しいです。

──4月28日・29日に「ロームシアター京都メインホール」(京都府)、5月9日に「神戸国際会館 こくさいホール」(兵庫県)、11日・12日に「なら100年会館 大ホール」(奈良県/SOLDOUT)、6月1日に「大阪国際会議場(グランキューブ大阪)」(大阪府/SOLDOUT)メインホールの6公演が開催されますね。

地元に近いから、そこで過ごせる喜びはどうしても大きくなりますね。ファンクミュージックって関西人寄りの音楽やと思います。だからこの公演をきっかけに、さらにたくさんの関西の方がファンクの魅力に目覚めてくれたら!

.ENDRECHERI.

.ENDRECHERI. Mini Album『END RE』
2025年2月26日(水)リリース

全国ツアー『REBORN』

■京都:ロームシアター京都メインホール
2025年4月28日(月)・18:00〜
2025年4月29日(火・祝)・16:00〜

■兵庫:神戸国際会館こくさいホール
2025年5月9日(金)・18:00〜

■奈良:なら100年会館大ホール
2025年5月11日(日)・17:00〜
2025年5月12日(月)・17:30〜

■大阪:大阪国際会議場(グランキューブ大阪) メインホール
2025年6月1日(日)・17:00〜

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