神戸で10年ぶり「パウル・クレー展」、ピカソらとの対比で独自性に迫る

10時間前

『パウル・クレー展——創造をめぐる星座』四角いオブジェがお出迎え

(写真11枚)

独創的な色彩や線画を組み合わせた作風で人気の画家パウル・クレーの展覧会『パウル・クレー展——創造をめぐる星座』が、3月29日から「兵庫県立美術館」(神戸市中央区)で開催。同美術館では10年ぶりの開催となり、ピカソなど同時代の芸術家らとの対比も見どころとなっている。

■ キュビスムなど、美術運動からの影響も

5章 パウル・クレー『北方のフローラのハーモニー』1920年、パウル・クレー・センター

20世紀美術において、新しい抽象絵画を生み出したスイス生まれのクレー(1879-1940)。「この世では、私を理解することなど決してできない」の言葉のように、謎めいた絵やタイトルが多く、そのユニークさは同時代の前衛芸術家らとは一線を画したイメージがある。

同展を企画した「愛知県美術館」学芸員の黒田和士さんは「クレーの生涯を6章の時系列で見ながら、同時代の芸術家らの作品も展示することで、彼の独自性に着目しています。既存のイメージとは異なる、激動の20世紀前半のさまざまな美術運動に影響を受けたことも分かる機会になるのでは」と話す。

1章の初期作品 パウル・クレー『リリー』1905年、パウル・クレー・センター

時代とともに作風の変化が見られ、「色彩」もポイントに。初期作品では銅版画の連作が並び、当時の色鮮やかな「印象主義」には興味を示さず、明暗の関係を操るゴヤやマネのように「モノクロの中での光」を表現したよう。だが、パリ、チュニジア訪問を経て色彩に目覚め、明るい色彩で家々を描いた風景など、後の方形画の片鱗が見えるものも。

2章では、キュビスムを代表するピカソやブラックの作品も登場。その一方で、クレーの『北方の森の神』はキュビスムの肖像画を下敷きにしたといわれるが、本来の「平面と奥行きを再構成する表現」に対して、浅い空間のみの表現になっているのが、クレーらしい印象ともとれる。

2章 パウル・クレー『北方の森の神』1922年、パウル・クレー・センター
2章 パウル・クレー『チュニスの赤い家と黄色い家』1914年、パウル・クレー・センター

■ 方形画の色彩は「連続的な運動」

3章 パウル・クレー『深刻な運命の前兆』1914年、パウル・クレー・センター

さらに、第一次世界大戦下では、再び鮮やかな色彩から離れることに。1枚だった画面を切断して本来の上下を逆転させた『深刻な運命の前兆』は、不穏な空気感が漂う作品。友人を亡くした背景もあり、戦争を直視できないクレーが葛藤の中で、作品を敢えて再構成させ、抽象化させたという。

それ以降は、ドイツの建築学校「バウハウス」での教育活動などを通して、次々と代表作が誕生。幼い頃、音楽家や詩人も志していただけに、詩情をたたえた「音と視覚」を結びつけた作品も多い。例えば『女の館』は丸い木々は四分音符で、赤・黄・緑の色ごとに旋律が表現された楽譜のよう。近代的なビルが並ぶ『都市の境界』でも、多数の窓・建物の単純な繰り返しのリズムが、都市という1曲のメロディに形成されている。

5章 パウル・クレー『女の館』1921年、愛知県美術館

そして、彼の技法で有名な、画面をグリッドに区切り、さまざまな色彩を置いていく方形画にも注目。まず下地で暗い色を塗るのが特徴で、そこに色彩を加えていくことで、あらゆる色彩の関係を「黒と白を両極とする連続的な運動」と捉えようとしたそう。これは初期の「モノクロの中での光」表現にも繋がってくるのが興味深い。

最終章では、下地に石膏が使われゴツゴツした印象の『殉教者の頭部』といったドイツ・ヒトラー政権での退廃芸術としての危機が垣間見れる作品も。全体を通して、時代ごとの美術動向や彼自身の経験が浮かび上がり、新たなクレー像を発見できそうだ。

6章 ヒトラー政権での影響が垣間見られる(左)パウル・クレー『殉教者の頭部』1905年、パウル・クレー・センター
6章 パウル・クレー『無題(最後の静物画)』1940年、パウル・クレー・センター、クレー亡き後に残されていた作品、息子により呼称が与えられた

開催は5月25日まで(休館日あり)。時間は10時~18時(入館は閉館30分前まで)。料金は一般2000円ほか。

取材・文・写真/塩屋薫

『パウル・クレー展——創造をめぐる星座』

期間:2025年3月29日(土)~5月25日(日)
※月曜日・5/7(水)は休館、5/5(月・祝)は開館
時間:10:00~18:00(入館は閉館30分前まで)
会場:兵庫県立美術館(神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1 HAT神戸内)
料金:一般2000円、大学生1500円、高校生以下は無料

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