令和とも重なる? 座頭金に手を出す武士たち【べらぼう】

2025.4.3 18:30

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第13回より。老中・田沼意次に呼ばれ、重要な任務を命じられる長谷川平蔵(中村隼人)(C)NHK

(写真5枚)

江戸時代のポップカルチャーを牽引した天才プロデューサー・蔦屋重三郎の劇的な人生を、横浜流星主演で描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。3月30日放送の第13回「お江戸揺るがす座頭金」では、将軍の側に仕える武士たちすら借金まみれという現状に、将軍家の人々がショックを受ける描写が。その一方「鬼平」に近づきつつあるあの人の活躍が、今後の明るい材料となった。

■ 盲人たちの高利貸しを田沼が捜査…第13回あらすじ

盲人たちの高利貸「座頭金」が幅をきかせていることを問題視した田沼意次(渡辺謙)は、西の丸の進物番・長谷川平蔵宣以(中村隼人)に、ひそかに調査を命じる。その結果、数多くの武士が座頭金に手を染めていることが判明。意次は、座頭金を盾に家督を譲るように迫られ、一家で逐電・出家した森忠右衛門(日野陽仁)と息子・震太郎(永澤洋)を、将軍・徳川家治(眞島秀和)と嫡男・家基(奥智哉)の御前で申し開きをさせる。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第13回より。報告書に目を通す老中・田沼意次(写真右、渡辺謙)と家臣たち(C)NHK

意次は、苦しいのは森親子だけではないと訴え、鳥山検校(市原隼人)らを取り締まるよう進言。老中・松平武元(石坂浩二)が、盲人を庇護するという神君家康公の意向に反することをとがめると、意次は不当に蓄財した検校らは弱き者ではないと反論。「真に徳川が守らなければならぬ弱き者は、どこのどなたにございましょうや」と問う。家治は意次の意見を飲み、鳥山検校の元に取り締まりが入る現場を、重三郎は目撃することになる。

■ 現代の「闇バイト」にも繋がる、武士たちの生活苦

今の歴史の教科書ではキッパリと否定されているらしいが、筆者が学生の頃は歴史の授業で、江戸時代には「士農工商」という身分制度があったと教えられていた。これが真実ではなかったとしても、基本的に武士は庶民たちの上に立つ階級だったことは間違いない。だからさぞかし良い暮らしをしていただろう・・・と思っていたら、この第13回では、時代劇でもあまり描かれなかった、この時期の武士たちの過酷さが明かされていた。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第13回より。一家で行方をくらませていた、森忠右衛門(写真中央、日野陽仁)(C)NHK

今回その象徴となったのが、座頭金の取り立てで追い詰められて、親子ともども出家して難を免れようとした森忠右衛門だ(演じた日野陽仁の流暢な長台詞がさすがベテラン!)。ここでは平蔵らにスルッと捕まえられていたが、実際はかくまわれていたお寺で逮捕者が出たのに巻き込まれて、取調べ中に自分たちの身分を明かすことになった・・・というのが真相だったそう。そして実際に、勉強熱心で真面目な人柄だったそうだ。

ただ、真面目な人ほど詐欺に引っかかりやすいのと同じように、忠右衛門も金を借りる相手のことを疑わず、証文の内容をよく確かめずに金を借りたのがまずかった。しかし忠左衛門が勤めた「小姓組」は、将軍直属の軍人兼警備員みたいな役割で、決して低い身分ではない。しかし以前このコラムでも触れたように、この時代は米の値段が低空飛行状態で、米を換金することで生活していた武士の生活は年々苦しくなっていた。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第13回より。検校たちの高利貸しを取り締まるよう訴える老中・田沼意次(渡辺謙)(C)NHK

この状況から脱出するには、息子・震太郎が良い役職に付くことが一番の近道だったが、そのために作った借金が足を引っ張ることになるとは・・・まさに物価は上がるのに給料は据え置きのままで、いろんな節約話が飛び交う令和7年の日本そのままのような状況に、SNSでも「田沼様のお言葉に泣いている。現実の職場と変わらん」「江戸時代の話かと思いきやがっつり令和の風刺なの凄い」などの言葉が飛び交っていた。

2人が一家心中の道を選ぶことなく、愚直に生き延びようとしたことで、鳥山検校たちを取り締まる大きな口実ができ、意次の面目躍如となった。とはいえ・・・おそらくドラマで触れられることはないだろうが、結局忠右衛門はこの後入牢して獄中死するし、同じく刑に服した震太郎のその後は不明となっている。もし森親子が現在にいたら、多分闇バイトに手を出して罪に問われてるんだろうなあ・・・と考えるし、NHKと森下佳子が仕込んだ痛烈な風刺なのかもしれない。

■ のちの『鬼平』思わせるお手柄!平蔵が大活躍

そんな後味の悪いお武家様パートのなかで、唯一明るい話題となったのが、我らが「カモ平」こと長谷川平蔵宣以の人生の分岐点だ。「進物番」という、将軍に送られた物/送る物を管理する役割に付いていた平蔵。彼自身は「性に合わない」と言っていたが、見目の良い期待の星にあてがわれ、周りの人間がやっかむのも無理はないぐらい、結構な名誉職。実は再来年の大河『逆賊の幕臣』で松坂桃李が演じる主人公・小栗忠順も、進物番経験者だ。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第13回より。行方をくらませた森忠右衛門を探しに行く、旗本・長谷川平蔵(写真右、中村隼人)と、勘定奉行・松本秀持(写真左、吉沢悠)(C)NHK

とはいえ本人にとっては、父親と同じように市中を飛び回って、悪い人間を取り締まることの方が、よっぽど自分の理想に近いはず。その第一歩として、田沼意次から座頭金の調査を任された! そこで早速、吉原を遊び歩いていた時代の連れを利用して、金を取り立てている座頭の様子を探らせるという捜査方法を取っていた。このあたり、我々の知る『鬼平犯科帳』につながりそうな行動である。

そして無事、意次にめちゃくちゃ達筆な報告書を送っただけでなく、行方をくらませていた森親子まで探し出すという金星もあげていた。この結果に意次は、平蔵を「使える人物」と認定してくれたようだけど、彼が父と同じ「火付盗賊改方」となるのは、意外にも意次の時代ではなく、次の松平定信の世になってから。それまでに重三郎と平蔵の絡みを、再び見る日は来るのだろうか? 江戸城勤めになってもべらんめえ口調の抜けない、庶民寄りの気性であることは変わりないようなので、期待したいところだ。

大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。4月6日放送の第14回「蔦重瀬川夫婦道中」では、幕府の取り締まりに遭った鳥山検校と瀬以(小芝風花)のその後とともに、重三郎が市中に自分の店を持つことを計画するところが描かれる。

文/吉永美和子

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