「タイトル詐欺じゃん…」蔦重&瀬以の夫婦の結末に涙【べらぼう】

2025.4.9 18:30

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第14回より。瀬以(小芝風花)を抱きしめる重三郎(横浜流星)(C)NHK

(写真7枚)

横浜流星主演で、数多くの浮世絵や小説を世に送り出したメディア王・蔦屋重三郎の、波乱万丈の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。4月6日放送の第14回「蔦重瀬川夫婦道中」では、鳥山検校が瀬以の愛ゆえに、瀬以は重三郎の愛ゆえに重要な決断をくだすことに。特に重三郎と瀬以が本当に夫婦となるのか? は、最後まで目が話せない展開となった。

■ 離縁した瀬以、重三郎と本屋の準備をするも…第14回あらすじ

鳥山検校(市原隼人)が元締めを務める「当道座」に幕府の取り締まりが入り、検校と妻・瀬以(小芝風花)も捕縛された。瀬以は松葉屋の寮に身を置くことになるが、そこで座頭金によって旗本の両親を失い、吉原に売られた女郎・松崎(新井美羽)が、瀬以を刃物で襲うという事件が発生。傷は深刻なものではなかったものの、検校への世間の恨みが自分にも降り掛かっていることを瀬以は知る。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第14回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第14回より。奉行所で鳥山検校(市原隼人)との離縁を言い渡され、驚く瀬以(小芝風花)(C)NHK

そして瀬以に裁きが下ったが、遊蕩を繰り返さないよう叱りおかれるだけにとどまり、検校とも離縁することが決まった。「これより先、面倒を見ることは遠慮したい」と申し出た検校に対して、瀬以は彼を傷つけてきたことを詫びるとともに、この決断も含めて、なんでも望みを叶えてもらったことの感謝を伝える。そして吉原に戻った瀬以を重三郎は抱きしめて、一緒に本屋をする準備を進めていくのだった・・・。

■ 鳥山検校への恨みが、瀬以にも巡り刃傷沙汰に

幕府の庇護を受けていることで調子に乗ってしまい、一説によると通常の5倍ぐらいの利息を取っていたとされる座頭金。田沼意次(渡辺謙)によってメスが入れられ、トップに立っていた鳥山検校が捕まり、その金を吉原に流していた瀬以の立場も危ういものとなった14回。「いや、身請けされただけの瀬以は関係ないでしょ」とほとんどの視聴者が思う一方、それによって一家離散や心中などに追い込まれた人も多いわけで。現在も凶悪犯罪の加害者家族が被っているようなヘイトを、瀬以も受けることになってしまった。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第14回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第14回より。重三郎と新しい本のアイデアを出し合う瀬以(小芝風花)(C)NHK

放免されて松葉屋預かりとなった瀬以の元を、早速訪れて「瀬川」をネタにした本を渡すとともに「店を一緒にやんねえか?」というプロポーズのような言葉を投げかけた重三郎。この一連の行動にSNSは「ネタ元に自分を題材にした本読ませるのか」「ナマモノを本人に見せるんじゃありません」「告った! 男見せたな蔦重!」「はよ挙式しろはよ!! 物事がやばくなる前に!!!」「ああもうこのふたりの未来よ・・・確約されてくれよ・・・」と、スピード展開に振り回されるような言葉が多数。

しかしそこに、当道座に恨みを持つ元武士の娘・松崎が、瀬以に刃傷沙汰を起こすことに。顔の傷が残るようなものでなくてよかったが、彼女の検校への怨恨が、その妻にも及ぶほど深いものだと知らされることに。しかしそこでひるんだり嘆いたりする前に「自分だって武士に生活を追い詰められて女郎になった」と切り込みつつ、恨みの因果をぶつけ合うことの虚しさを諭すとは、さすが花魁まで上り詰めただけのことはある懐の深さだ。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第14回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第14回より。瀬以に刃物で襲いかかり、折檻される元武士の娘・松崎(新井美羽)(C)NHK

この2人の関係にSNSは「うわあ・・・なんていう負の連鎖なんだ」「誰が加害者で誰が被害者だ・・・犠牲者ばかりが増えてゆく」「検校のせいで女郎屋に売られた武家の娘が襲った検校の妻は、かつて武士のせいで女郎屋に売られた百姓の娘。巡り巡る恨みの因果は誰かが断ち切らなきゃいけないとは言え、やはり女郎は哀しい生き物」「でも恨みを巡らせてはいけないと言う瀬以、あまりに気高い」と、激重な感情に襲われたようなコメントが上がっていた。

■ 最後まで「望みを何でも叶える」鳥山検校

そして奉行所から裁きが下り、鳥山検校は瀬以との離縁を決めた。自分のせいで瀬以が襲われたのを聞いたのかもしれないが、人の心が必要以上に読めすぎる検校は、瀬以が「光」だという重三郎のもとに彼女を返す方がいい・・・と考えたのだろう。瀬以の「ほんに幸せな妻にございました」という御礼の言葉に、フッと満足げな微笑みを見せたのは、彼女の「本当の望み」を叶えることができた満足ゆえだろうか。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第14回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第14回より。奉行所で裁きを受ける鳥山検校(市原隼人)(C)NHK

SNSも「瀬以の望みが自分と離縁することだと察したからそれを叶える。何もかも失う自分に叶えてやれる最後の願いって・・・そんなの切なすぎるわ」「望みを何でも叶えるってそういう・・・鳥山検校の株爆上がったじゃないの」「検校としてやってきたことはえげつないけど、1人の夫としては立派だったよ鳥山さん」「鳥山さまにも絶対に助けてくれる人ができますようにマジで祈ってしまうよ」と、その最高の愛の表現に号泣するような言葉が相次いだ。

■ 夫婦道中から急転直下「頭が良すぎるんだよ瀬川は!」

しかし人の心が読めすぎるゆえに身を引いた検校に感化されたのか、瀬以も現在の自分の立場&「四民の外」と明文化されてしまった吉原の現状をかんがみて、重三郎が「瀬川」と一緒にいるのは不利益になると察して、ひっそりと姿を消してしまった。彼女がただただ自分の感情に忠実な人であれば、なにがあっても重三郎と一緒にいる道を選んだのだろうが、松崎にも見せた頭の良さが、彼女に悲しい決断をさせてしまった。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第14回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第14回より。鳥山検校との離縁を重三郎(横浜流星)に報告する瀬以(小芝風花)(C)NHK

2人が結ばれたシーンでは「このふたりのイチャイチャが!! 見られるとは!!」「瀬川のこと一生ずっと大事にして!! 幸せにして!!」「物語、今最終回でいい」と盛り上がったSNSも、この急転直下に「まさかそんなハッピーエンドで終わるはずがないと思ったけど、やっぱりかあ」「除夜の鐘がシンデレラの魔法が解ける0時の鐘のようだ」「なんてこった。ほんの5分前の幸せがこんな真っ暗になっちまった」という嘆き節が。

さらに瀬以の決断に対して「二人だけの幸せよりも、世の中全ての人の幸せを叶えるために離れることを選んだ気高い女」「ほらぁ! 頭が良すぎるんだ瀬川は! 何も考えずマブの胸に飛び込めないのよ」「瀬川ちゃん最初の夢に殉じるんだ・・・切ないけどかっこいいよ」「蔦重本人よりも二人の夢をとった瀬川、本当に今作一の男前よ!」「夫婦でいれたのは・・・わずか数分だったなぁ」「やっぱタイトル詐欺だった」と、その思いを尊重しながらも惜しむ声があふれた。

■ 小芝風花と市原隼人の名演に大きな拍手

瀬以役の小芝風花も、公式のコメントで「すっごい短いの! 幸せな時が!」と笑っていたように、ほんの数分しかつづかなかった「蔦重瀬川夫婦道中」。しかしこの回は、自分より重三郎の将来を選んだ瀬以の愛と同等に、一時は嫉妬のモンスターとなりかけた鳥山検校が、やはり自分より瀬以の望むことを優先するという、最後の大きな愛の光を見せた回でもあった。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第13回より。瀬以(小芝風花)を問い詰める鳥山検校(市原隼人)(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第13回より。瀬以(小芝風花)を問い詰める鳥山検校(市原隼人)(C)NHK

なので個人的には「鳥山瀬以夫婦道中」の印象が強い回だったが、これはやはり小芝風花と市原隼人の、ハイレベルな演技合戦の賜物と言えるもの。実際の鳥山検校はこの12年後に復職するし、瀬以もその後の行方がはっきりしていないので、ワンチャン再登場があるかもしれない。とはいえここで一区切りということで、2人の名演に大きな拍手を送りたい。

大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。4月13日放送の第15回「死を呼ぶ手袋」では、店を立ち上げて本格的に版元として始動した重三郎の様子と、将軍家にも衝撃的な事件が起こるところが描かれる。

文/吉永美和子

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