探偵2人が推理を競う、大江戸サスペンス劇場【べらぼう】

2025.4.16 18:30

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第15回より。笑みを浮かべる平賀源内(安田顕)(C)NHK

(写真7枚)

横浜流星主演で、数多くの浮世絵や小説を世に送り出したメディア王・蔦屋重三郎の、波乱万丈の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。4月13日放送の第15回「死を呼ぶ手袋」では、幕府パートで展開された推理合戦に興奮のコメントが相次いだかと思えば、サスペンスな結末に悲鳴が上がるなど、SNSが大いに盛り上がる回となった。

■ ある任務を依頼される平賀源内…第15回あらすじ

瀬以(小芝風花)が去った失望から抜け出せないなか、重三郎は本屋「耕書堂」を開店し、朋誠堂喜三二(尾美としのり)からは青本を出すよう薦められる。朋誠堂は重三郎と仕事をするのは楽しいという理由で、作った本が市中で販売されないのを承知で、北尾政演(山東京伝/古川雄大)と新しい本作りの話をするように。重三郎もまた、瀬以とアイディアを出し合った物語を、自分で書いてみようとする。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第15回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第15回より。老中・田沼意次に手袋の製作を依頼する大奥総取締・高岳(冨永愛)(C)NHK

一方、蝦夷(北海道)の金山開発を田沼意次(渡辺謙)に持ちかけた平賀源内(安田顕)は、鷹狩中に急逝した徳川家基(奥智哉)の死因の調査を頼まれる。吾作(芋洗坂係長)の目撃証言を元に、家基に爪を噛む癖があるなら、手袋に毒を仕込まれた可能性があると推理。しかしその手袋は、大奥総取締・高岳(冨永愛)からの願いにより、意次が作らせた手袋だった。ただでさえ毒殺の噂を立てられていた意次は、その結論に呆然とする・・・。

■ 今週は「日曜サスペンス劇場」!? 死の真相を追う

夫婦暮らし寸前まで行った瀬以が去ったところから、周囲の助けもあって再び本作りと向き合い始めた重三郎。そんな彼に引っ張られるように、吉原の忘八たちも女郎や芸者の福利厚生について本気で考えるようになってきた。しかし重三郎周りの話は、今回は全体の4分の1ぐらい。残りの4分の3は、まさに「日曜サスペンス劇場・次期将軍殺人事件~死を呼ぶ手袋。鷹狩でなにが?!~」とでも言うべき濃厚なストーリーとなった。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第15回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第15回より。鷹狩りの最中、突然苦しむ次期将軍・徳川家基(奥智哉)(C)NHK

ことの発端となったのは、将軍家嫡男の徳川家基が、鷹狩の最中に謎の死を遂げたこと。史実でも鷹狩のあとに突然亡くなったため、今も昔も毒殺説が疑われている。今回もサブタイがこれだったため、家基が手袋を付けた途端、SNSは「ねえねえその手袋大丈夫なの?」「その手袋付けちゃ、らめえぇえええっ!」などの声があふれ、手袋を噛んだ後に倒れたときにも「ああ〜爪を噛む癖が!!」「家基様の癖を知っての策略」「満16歳だって・・・若すぎる」「お早すぎる退出!」という悲鳴と追悼の言葉が並んだ。

■ 探偵2人が謎解き…元・金田一耕助が名推理!

そしてこの謎に挑んだのが、メンヘラ気味な行動が周りに心配されている平賀源内先生! 人並み外れた発想力とカンを生かして、あれよあれよと真相にたどり着く姿に、SNSも「平賀源内が探偵役のミステリー!?」「事件現場に足を運び、目撃証言や証拠を集めて近代合理主義的な手法で推理する名探偵」「2時間サスペンスみたいなトリック判明シークエンス」「才能マルチな上に山師属性もあるので、探偵やってても自然という造形が史実的に出来るの、あまりにもキャラが強い」という興奮の声が。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第15回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第15回より。聞き込みをする平賀源内(写真右、安田顕)と平秩東作(写真中央、木村了)(C)NHK

しかし源内とは別に、「白眉毛」こと老中・松平武元(石坂浩二)も、現場の証言と家基の癖を照らし合わせて、源内より先に真相にたどり着いた。石坂が、名探偵・金田一耕助を幾度も演じたことと併せて「さ、先を越された! 流石は金田一耕助だ」「吉良上野介イメージだった石坂兵ちゃんが金田一耕助ばりの推理をしておる。白眉毛一耕助だ」「灰色の脳細胞だけで真相を暴く安楽椅子の名探偵」など、こちらも高揚感あふれるコメントが出ていた。

そして探偵白眉毛は、田沼意次を呼び出して手袋のトリックを解説。そして「犯人は・・・お前だー!」となるかと思いきや「そなた以外の誰かであろう」という意外過ぎる答えを! てっきり意次だと決めつけるか、あるいはこれを利用して意次を追い落としにかかるかと思ってドキドキしていた視聴者にも、この思いがけない肩透かしと、武元の高潔な精神は、まさに嬉しいサプライズだった。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第15回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第15回より。疑惑の手袋を差し出す老中・松平武元(石坂浩二)(C)NHK

「じっちゃん、有能だー!」「この事件を悪用するヤツじゃなかった! しかもお前を貶めたらホシの外道の思うがままだからな! と言う誇り高きジジイ」「『田沼がこんな間抜けな動きしかできんってことはマジで犯人じゃないんだろそれをわからん俺と思うなバーカバーカ』で男前がすぎる」「あれだけ嫌味を言っていた政敵が一番頼りになるなんてー! 眉毛ー!(ペンラを振る)」「仕事に自分の好き嫌いを持ち込まない良いオジイ(涙)」などの声援が。

■ 白眉毛が惜しくも退場…悪役・生田斗真が怖い

しかし大河ドラマの法則として、嫌な奴と思ってたキャラが実はいい人で、これからは俺たち一緒に頑張っていこうな! という流れになると、だいたいは退場のフラグだと知っている、よく鍛えられた大河民からは「ああー! 白眉毛殿! 良い人になってはいけない! その先は・・・その先は・・・」「今まで嫌味だった人間が男気を見せた後は・・・」などの心配の声があがっていたが、その予想は大当たり。しかも手袋のトリックをめぐって、口封じに殺されたことが、暗示される退場だった。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第15回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第15回より。老中・松平武元から手袋を持ち去る謎の人物(C)NHK

この衝撃のラストには「三谷幸喜といい森下佳子といい、この人もっと見ていたいとか好感度右肩上がりの最中とかで強制退場させるの本当に人の心がないね!!(褒めてる)」「ちょっと怖すぎるよ白眉毛の最期!! 金田一シリーズですか!?」「今回の副題、『(家基の)死を呼ぶ手袋』と『(田沼意次の政治生命の)死を呼ぶ手袋』のダブルミーニングかと思ったら最後の最後に『(白眉毛の)死を呼ぶ手袋』までぶっこんできたの怖すぎるやろ」などの言葉が見られた。

そしてこの暗殺に関わったのは、どうやら御三卿の一橋治済(生田斗真)!! 武元が松平定信の兄・田安治察と同じ傷を遺して死んでいるところから、これも治済の仕業なのは間違いなさそう。SNSも「いやああああ、傀儡師匠がああああ!」「影で糸を引いてたのは生田斗真だったってこと? 今週どうした。江戸サスペンス劇場?」「大河ドラマにおける生田斗真は『顔良いのにほかは色々ひどい』がほぼ共通してるのにこんなにもバリエーション豊富というのほんとイカれてる」という、悲鳴のような声があふれかえった。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第15回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第15回より。一橋治済(生田斗真)のシーン(C)NHK

推理の仕方が好対照な探偵が競い合ったかと思えば、推理モノではお馴染みの謎解きタイムがあり、ライバル同士が真犯人を捕まえるために同盟を組んだと思えば、そのうちの1人が次の犠牲者になるという、まさに王道のミステリーのような流れが誠にあざやかだった。重三郎にはぜひこの謎に迫る本を出版してもらいたかったし、どうやら来週退場しそうな源内先生が正常モードだったなら「こんなことがあったんだけどさあ!」といっちょかみしてたかもしれない・・・と思うと、なんとも惜しい気がする。

大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。4月20日放送の第16回「さらば源内、見立は蓬莱」では、いよいよ言動が怪しくなった平賀源内が、人を切った罪で投獄された、その末路が描かれる。

文/吉永美和子

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