常に美味を追求し、
腕を競い合うホテルのシェフたち。
今回、各レストランで独創的な料理を
生み出す彼らが、それぞれの個性と技を発揮して、
特別な一品を考案。
予約限定で味わうことのできる
「極みのひと皿」の全貌に迫る。
加藤シェフは、ホテル料理人歴30年以上だそうですね。
はい。出身は名古屋で、調理師学校を卒業後、名古屋栄東急REIホテルで料理人として働き始めました。以来、30年以上のキャリアの中で、メインキッチンやバンケット、フレンチなど、さまざまな現場を経験できたぶん、料理の幅も広がったと思います。シェフとしてレストランを任されるようになったのは、7年前くらいから。大阪には、約2年前のリニューアルで、レストラン「リトルモンスター」のシェフとして着任しました。
東急ホテルズで料理人を続ける理由は?
それぞれのホテルならではの味とクオリティを作り出すことに、魅力を感じるからでしょうか。野菜などは信頼の置ける仕入先から、毎日入荷があるのですが、名古屋で古くから栽培・利用されてきた伝統野菜の新鮮さと味の違いに目覚めました。大阪にもたくさんの伝統野菜があるので、これからどんどん発掘していきたいと思っています。常に新しい食材を追求して、ゲストの方々に新鮮な驚きを提案したいですね。
そんな加藤シェフが作る「極皿」とは?
今回、クジラ肉を使った料理にチャレンジしました。いつもとは違う食材を探していて、鮮度のいいクジラ肉に出合ったんです。商業捕鯨が再開されて、これから注目を集める素材。高タンパク質、低脂質、低カロリーのヘルシーな赤身で、しっかりと肉のような食感でありながら、魚のような味わいもある。僕ら昭和世代には懐かしく、今の若い方にはめずらしい食材なので、新鮮な驚きがあるのではと思い、前菜とメインの2皿を考案しました。
まずは前菜「クジラのプレッセ 春の予感」。彩りがきれいです!
刺身でも食べられる新鮮なクジラ肉なので、はじめの一皿は冷製でコンソメのゼリー寄せに仕立てました。クジラ肉は少し寝かせて旨みを高め、表面を軽くバーナーで炙っています。その名の通り、春を感じる彩りを意識して、計7種の野菜を合わせました。根セロリ、ズッキーニ、インゲン、オクラ、ニンジンなどをシンプルに塩茹で。華やかなデコレーションは、くるくるビーツのスライスです。
とってもカラフルで、SNS映えしそうです!
しっとり、むっちりとした食感のクジラ肉に合わせた野菜は、塩茹でで本来の味わいを生かしつつ、周りに散らしたソースで召し上がっていただく趣向です。ソースは、酸味を効かせたベリーと、まろやかなパパイヤ、風味の良いバジルの3色。フルーツを使ったソースも春を感じる演出です。上品なアクセントで味の変化が楽しめるよう、キャビアをトッピングしたレフォールクリームも添えました。
対してメインは、珍しいクジラ肉のカツレツ!
「クジラのコートレット 赤じそ風味のブールブラン」です。コートレットとは、フランス語でカツレツ。同じクジラ肉でも、前菜とは全く異なる食感や味を楽しんでいただけます。クジラ肉は軽く叩いて、卵と生パン粉をまぶし、溶かしたバターの上澄みだけを取り分けた「澄ましバター」で、揚げ焼きにしました。芳醇なバターが香る、カリッとこうばしい衣が、あっさりした赤身にコクを与えてくれるんです。
こちらはソースに野菜をたっぷり使われていますね。
フレンチらしく、白ワインビネガーで酸味を効かせたバターソースで仕上げました。メインでも春らしさを表現したくて、ひし形にカットした3色の野菜とポロネギで、彩りを加えました。見た目の華やかさと香気を狙って、最後に赤ジソのマイクロハーブもトッピング。実はまだ盛り付けは試行錯誤中で、ここからさらに極めていくので、楽しみにしてください。
加藤シェフ渾身の「リトルモンスター特別プラン」は、ディナーのみ。このほか、シェフからのアミューズ2種類とオニオンコンソメスープ、サラダやデザート、コーヒーなどが付いて、7000円(税サ込)。3日前までに予約を。
落ち着いた空間で、カジュアルにステーキ&ローストビーフが楽しめるレストラン。シェフが目の前で焼き上げる近江牛やUSビーフなどのステーキコースをはじめ、ハンバーグ、シーフードなどのアラカルトも豊富にスタンバイ。デートから接待まで、幅広いシーンで頼りになる。平日の週替わりランチ、土日祝限定のランチビュッフェも人気だ。
取材/みやけなお 写真/坂上正治