第101回 モードも笑いがだいじや。
5月☆日
酒井順子『オリーブの罠』(講談社新書)読みました。わたしは高校生の時は『Olive』買うてたし、年代的にも「オリーブ少女」いうやつなんですが、「オリーブ少女」に関して書いてあることとか思い入れとかを読むたびになんかしっくりけえへんかってんね。それが、『Olive』で高校生の時から記事を書いてる酒井順子さんによる詳細な『Olive』分析を読んで、自分が『Olive』に対して持ち続けてきたアンビバレントな感情がすっきりわかりました。オリーブは、初期は『ポパイ』の妹分として女子大生の西海岸サーファーファッションから始まり、80年代半ばにパリジェンヌの高校生=リセエンヌを打ち出して少女ファッション&ライフスタイルに移行、それと平行して初期の女子大生=東京の学校文化からつながる私立大学付属高校カルチャーを推してた、と。それや! わたしが好きやったんはリセエンヌファッションのグラビアで、東京の内輪ノリカルチャーが全然わからんかった。カラーページの眉毛も金髪でうすーい顔の美少女がセーラーカラーのブラウスとか着てるのや、ほかの雑誌とは違うきりっとした個性的な顔の日本人モデルがおもしろい組み合わせで服を合わせてるのを見るのは好きやって身近なもので工夫しておしゃれな服&部屋みたいなのは楽しかったけど、東京文化ページはさっぱり。大阪に住んでると基本的に載ってる服も雑貨も買えるしマイナーな映画も見れるから東京に憧れるとか行ってみたいとか思わへんし、むしろ全国で売ってる雑誌やのになんで東京の店しか載ってへんねん!と憤慨してた(これは雑誌・テレビ全般に言えるけどね)。1年に1回か2回ぐらい地方都市を含めたファッションスナップがあったけどね。それに、大阪にいててもどこの学校はこうやから、みたいな話し興味ないタイプで、だからオリーブも白黒ページに今で言う「読者モデル」が載ってるとこらへんが意味わからへんかったんやなあ。今ごろ納得。『Olive』、もちろんあの文化が自分に与えた影響は大きいのですが、なにが好きやったってあの紙の感触と薄さです。
5月☆日
東京に来て、なんか話がかみ合えへん、ようわからん、と思うことがまだまだあって、学校文化もその一つ。東京は大学がようさんあるし、私立の中学高校に進学する率がすごく高い。高校は私立に行くほうが普通、ていう感じのようです。そのせいか、校風にもよるんやろうけど、女子校の女子=男子慣れしていない非モテ指向、共学の女子=普段から男子の目を意識してるモテ志向みたいなイメージがある?? と感じることがちょいちょいある。これ、世代的なものもあるとおもうけど、少なくともわたしのころの大阪ひいては関西では全く逆で、女子校の女子=JJ系で男子校と合コンとかしてる派手なイメージ、共学の女子=男女を意識しないままぼさっとしてるイメージ、やってんね。実際どうとか個別にどうとかじゃななくて、あくまでどれも「イメージ」やねんけど。違うもんやなーと。前に、この日記でも、関東の出身校のイメージがつかまれへんから、「あの人は○○大学やから」みたいな枠組みなんてそのコミュニティーの外側の人に通じへんからたいした意味ない、ってかいたけど、小説やエッセイ書くときにたとえば「いかにも女子校育ちで」みたいなことをどういう意味で使ってるか、ちゃんと書かなあかんね。
5月☆日
電子書籍リーダーを買ってみました。
自分の本も電子書籍出してるので、どんなもんか使ってみなあかんなと。ほんで、ちょこちょこと使ってみての印象やけど、いちばんちがうのは、「所有」やね。たとえば、テレビとラジオって「視覚」と「聴覚」の違いと思いがちやけど、東京に来た当初にテレビなくしてラジオだけにしてたときコミュニケーションの仕方が違うんやって気づいた。ラジオって視聴者とのやりとりがようさんあるやん。視聴者同士もコミュニケーションあったり。そういう感じで、紙の本と電子書籍は、紙か液晶かっていうより、「所有」が変わる。一回買うたもんを貸すとか売るとかできへん(する方法もあると思うけど、基本的にはできへん)。実はそのことって本の読み方をかなり変えるような気がする。家の本棚や旅先の宿にあったのをたまたま読んでとかできへんし、今ぱっと出てけえへんけどいろいろ変わりそう。そして、出す側はさらにええとこ、便利なとこも困ったとこもぎょうさんあって、まだまだ試行錯誤やなって思う。
5月☆日
ファッション誌や最近はネット上のファッション情報なんかを見てて、あるアイテムやスタイルが流行ってるって書いてあっても、「そうなんやー、そんなもんかー」って感じやけど、街に出るとがぜん流行がわかるね。渋谷からちょっと離れた明治通りを歩いてて、ふと周りの人を見回したら、女子の8割がリュックを背負ってる! リュック、わたしが高校~大学ぐらいのときめっちゃ流行ってて、私服やった高校にはほとんどリュックで行ってたし、それとあのプラダの黒いナイロンのリュック! 誰も彼も背負ってたね(わたしは当時ブランドの流行物をぜんぜん知らなくて、何年も経ってからあああのときみんな紐長くしてお尻の上くらいにしてた黒いやつ、プラダ(もしくはそのばったもん)やったんや、と気づいた)。それが、この10年くらいはアウトドア・山ガール以外はリュックって誰も持ってないよなー、と思ってたのが一瞬でこれですよ! あと今年は「ガウチョ」ね。「スカーチョ」とかも言い出しとるね。3年前やったらめっちゃださく見えたはずのものがおしゃれに見える、人間の目は不思議や。
5月☆日
ハイブランド、昔からテレビでコレクションを見るのは好きやねんけど、バッグとか財布とか時計、ざっくり言うて免税店にある系のものはようわからへん。ヴィトンのバッグも形やら生地やらでなんかいろいろ名前あるやん。大学生の時、友達の紹介でお金持ちのおうちに家庭教師に行っててんけど、そこの小学6年生の女の子が「ハワイのおみやげにヴィトンのエピを頼んだ」って言うてて、エピってなんやろ、ってなったくらい。だから、前述のプラダのリュックも全然わかってなかってんね。
ハイブランドは、この数年デザイナーが次々交代して、また新しい時代になってる感じ。わたしはマーク・ジェイコブス自体は好きやけどマーク・ジェイコブス時代のルイ・ヴィトンはあんまり好きじゃなくて、今のニコラ・ゲスキエールになってからのほうが俄然楽しい。数年来いちばん好みやったランバンのアルベール・エルバスも交代してしまったので、今はコレクションは好みなのを探してる期。誰が着れるねん!ってつっこみたくなる超スリムなエディ・スリマンのサンローラン、具体的モチーフが多くてかわいかったフリーダ・ジャンニーニからアレッサンドロ・ミケーレになってどうなるかと思ったらさらに濃ゆく具体的で広告のビジュアルもおもろくなったグッチは好きやね(わたしはどうしてもトム・フォードがだめやった。洗練されてるってやつなんやろうけど、おもろくないやん。つっこみどころないやん。モードも笑いがだいじや)。
そして、次々代替わりしていく中、ひたすら自分の道を行くカール・ラガーフェルドはなんやかんや言うてかっこええね。ちなみに、ここに書いたブランド、見てるだけで買ったことありません。唯一、GIVENCHYは文学賞の賞金もろたときになんか記念の物をということでバッグを買いました。
5月☆日
大阪府立大学の「関西経済論」ていう一般向けの講座で講演。府大の卒業生だけでなく、落語家や作家、スポーツ選手も登場する人気の講座で、聴講者も熱心な人ばっかりで話すの楽しかったです。府大は10年近くぶりに行ったんやけど、基本的にはのどか~な雰囲気は変わってないね。野菜工場ができてて見学させてもろてんけど、ただ屋内で育ててるっていうんやなくて人工の光を調整してほんまに工場生産な感じでおもしろかった。
府大、存在としては地味やし、大阪市大との合併話はずっと出てて、わたしが行ってた学部ももうなかったりする。日本ではなぜか大学ってすぐ無駄とか言われがちなんやけど、絶対そんなことはない。経験至上主義のおっさんとかがすぐ「学校の勉強なんか役に立てへん」て言うたりするけど、それはその人が役立ててないだけで、生活の中でも、仕事でも、これからの世界のあり方を考えるときも、いくらでも役立てられる。普通に生活してるだけで、食べてるもの、住んでる家、自治体の仕組み、交通機関、インターネット、国内外のドラマや映画、全部誰かが勉強してそれを役立てくれたおかげやん?
その恩恵を受けて今豊かに暮らしてるのに、これから生きていく若い人のチャンスをつぶすようなことだけはしたくない。公立の大学が複数あることは無駄なんかじゃなくて、志も経済力もあることの証、自慢してええことやと思います。
柴崎友香(しばさき・ともか)
1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com
権田直博(ごんだ・なおひろ)
1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。
風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:http://naohirogonda.tumblr.com 風呂ンティア:http://frontier-spiritus.blogspot.jp/
プロフィール
柴崎友香(しばさき・ともか)
1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/
権田直博(ごんだ・なおひろ)
1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/
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