よう知らんけど日記

第110回 もう働いてるほうが人生の半分以上なんやなあ。

2018.12.13 15:57

6月☆日 

(前回、っていつやねん!と自分でツッコむしかない状況ですが、復活します~と言いながらまたもやだいぶあいてしまってすみません。気づいたら年末がすぐそこ……。はい、がんばります。) 

その前回、パーソナルカラーと骨格から似合う服の色や形を見てもらいに行った、という話を書きました。そして引き続き、映画『寝ても覚めても』関連の取材が続く毎日だったわけですが、取材現場に行くと、配給の会社のスタッフさんから続々と「よう知らんけど日記、読みましたよ~、黄色似合ってますね!」と声をかけられる。似合うと言われたまんまの色、しかもわかりやすく真っ黄色を連続して着ていってたため、そのまんますぎて気恥ずかしい。しかし、スタッフさんたちもパーソナルカラーとかめっちゃ興味津々で聞いてくれはったので、張り切って説明してしまった。別に布教的なあれではないのですが、経験から言うてもほんま、服の合う・合わないってちょっとしたことですごい変わるんですよ。知ってたほうがなにかといいじゃないですか。それにしても、このあとは自分の新刊も出て、ようさん取材していただいて、そのたびにだいたい黄色~オレンジ系の服ばっかり着ており、「よう知らんけど日記」読まはった方には「着とるな~」とバレバレなんやな、というか、自分でも単純やな、と思います。 

6月☆日 

パーソナルカラー&骨格タイプ、それからその前に調べに行った靴のサイズの話も、興味持ってくれるのは断然女性なんですね。靴は、女子はヒールを履かなあかんという大難関があり(仕事によってはマナー的になってる職場もあるし、結婚式やパーティー的な場所もあるし、基本的にファッションがヒールのある靴を履いて初めてバランスが取れるようにデザインされとるのです)、体に支障が出るほど苦労してる。それに、仕事でもそれ以外でも望まなくても見た目であれこれ判断されてしまうことが多い、そしてファッションに興味ある率も高いので、当然といえば当然なのですが、男性でも合ってない靴履いてたらしんどいし、服もこういうのを知ると選ぶのも楽しくなりそうな気がします。興味ないのに無理にというのでは全然ないのですが、いまいちしっくりけえへんなあ、と感じてる人にはいいのでは。そして個人的に、男の人ももっとカラフルな洋服とかおもろい柄とか着たら楽しいのになー、と思うのは色柄好きな大阪人ゆえでしょうか。 

6月☆日 

朝早くに目が覚めてしまってなんとなくスマホを確かめると、緊急地震速報の表示が出てる。どこ?と思ってツイッターを確かめると、どうやら大阪のよう。慌てて起きてテレビをつける。かなり大きな揺れやったようやけど、早朝のこともあり情報がなかなか入ってこない。情報が入ってこないというのは被害が大きすぎるからという場合があることを、阪神大震災のときに身をもって経験したので、不安になる。だんだん情報が入ってきて、情報が遮断されるほど大きな被害ではないとわかってきたものの、あちこち建物が壊れたり、交通も麻痺してるよう。実家や身近な人に連絡取ったりしているうちに、小学校のブロック塀が倒れた、という情報が。ほかでも何カ所かでブロック塀が倒れて、何人かが亡くなられた。あまりにも痛ましい。災害が起こったときに危ない場所は多くあるのやろうけど、普段はなにごともなく生活しているから見過ごされているのやろうな……。テレビの報道より先に、ツイッター上に現場のストリートビューの画像があがり、それを元に検証したり、ブロック塀の構造基準の図解も投稿される。駅や建物、室内の被害の画像も次々見られる。全体像や震源や規模や今後の対策には報道機関の情報が重要ではあるけど、何かが起きてそれを知るのは、この10年ぐらいで急速にこういう形になったなと思う。 

6月☆日 

東京にいると、やっぱりなかなか関西の状況がわからない。ツイッターやらいろいろ検索してみるけど、これだけ即時的に情報を共有できるようになったのに、距離があると被害の実感みたいなものは伝わりづらいと感じる。東京に引っ越してきて、「阪神大震災はその2ヶ月後に起こったサリン事件から報道がオウム一色になったので印象が薄くなった」と聞くことがあって、ものすごく驚いたというかショックを受けた。身の回りのこと以外は、報道の量ができごとの大きさを決めてしまうのは理不尽やなと思う。そういう自分も、直接の関わりが薄い場所で起きた地震や災害についてどうなんや、とも思う。 

6月☆日 

地震の被害が気がかりでありつつも、自分の仕事は待ったなしで続いていく。映画と新刊の取材、さらに新刊や短編の校正。この5、6年、ずっと並行して連載があり、終わったらまた次、その次、となっていたのが、春に新聞の連載が終わってようやく一段落して(エッセイや短編の連載はあるけど)、じっくり本読んだりしたいなあと思ってたけど、なかなか落ち着かない。それでも、ちょこちょこ映画に出かけたりするようになって、あー、特にこの2年くらいはそれもできてなかったんやなあと、久々に行った映画館がえらい様変わりしてたりして気づく。 

7月☆日 

そして、この日記、スケジュール帳を見たりしながら書いてるわけですけども、「忙しくなるとスケジュール帳が書けなくなる」という「意味ないやん!」な性格がじゅうぶんに発動しておりまして、ページが白い。しかも、わずかに書いてあることが単語すぎてなんかわからん。なにしてたんやろう、わたし。40代に入って顕著なのですが、2ヶ月ぐらい前のことやったかなーと思ったらもう半年ぐらい前、3年ぐらい前かなと思ったら下手したら5年以上経ってるということが続発。もうあっという間におばあちゃんになって走馬燈のように人生が駆け巡るのでは、と不安。というより、それがめっちゃ現実的! 想像つきすぎ! です。30代後半のときに、年齢差のある友達何人かでごはん食べてるときに、「10年前はどうしてた」ていう話になって、同世代の友達が学生時代の話を始め、「ちゃうちゃう!わたしら10年前は余裕で働いてるって!学生時代は20年前や!」って盛大にツッコミ入れたことがありますが、もう働いてるほうが人生の半分以上なんやなあ、と思うとしみじみします。 

7月☆日 

この日記をお休みしたり、アメリカ行ったりその思い出し編で時差日記になってた2、3年の間に、自分の生活でなにがいちばん変わったかというと、テレビを見なくなったんですね。ほぼまったく。これだけやと「へー」ぐらいのことかもしれませんが、わたしのことを知ってる人、この日記を最初のほうから愛読してくれてる人は「えええっっっ!! どないしたん!? なにがあったん!?」って感じやと思います。実際、こないだ久々にあった友達にはそのような反応いただきました。子供の頃から自分よりテレビ見てる人に会ったことないほど365日朝から夜中までテレビをひたすら見、この日記も元々は公式サイトに書いてた「テレビ日記」が始まりなので、わたしの人生はほぼテレビやったんですが、それが今はまるまる1週間テレビの電源入れないこともようある。見るとしてもNHKオンデマンドに入ってるやつだけ。もう何年も前から、ドキュメンタリーとケーブルテレビで昔のドラマがほとんどになってたから、突然変わったわけでもないのやけど、最終的にはアメリカ行ってる間に完全に見る習慣がなくなってしまった感じかなあ。それで規則正しく充実した生活してたらよかったんやけど、単にテレビがインターネットになってるだけで、ダメ人間街道は王道歩み続けてます。一言で言うなら、もう一生分テレビ見てもうた、ってことかなあ。いや、普通の人生の3回分くらい見たと思うけど。なんで見れなくなったかは、またおいおい書いていこうと思います。

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柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

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権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
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