よう知らんけど日記

第142回 地球って規則正しく動いてるのやなあ。

2021.6.4 14:11

カテゴリ:未分類

4月☆日 

3月前半の話やけど前回書くの忘れてた。 

筑摩書房に仕事で行ったあと、一駅隣りの浅草まで歩いて行った。わたしは東京の中やと浅草が大好きで、それはたぶん大阪っぽい感じがあるからやと思う。東京の東側は大阪と雰囲気が似てて、特に浅草は道頓堀とか天王寺感があり、最初に行ったときは「わたし今晩からここに住んでもだいじょうぶやわ」と思ったものです。 

平日で天気も悪くて寒いという条件もあるけども、観光客のいない浅草は人が少なくて、仲見世も開いてる店のほうが少ない。浅草寺にお参りしたら、人がいないので初めて中のほうのご本尊までじっくり見えました。ちなみに、浅草寺のおみくじはちょっと書き方が変わってんねんけど、すごい当たると言われてて(自分の周りでは)、行くと必ず引いてます。 

浅草はなんと言ってもおいしいお店がようさんあるのが最高なんやけど、なにがなんでも行くのが洋食の[ヨシカミ]。夕方早い時間やったからというのもあるけど、いつもなら並んで待つのに、お店の中もゆったり。たいてい友達と来て3、4人でどんだけ食べるねんていうくらい注文するところ、一人やしそない食べられないので厳選して牡蠣フライにしました。[ヨシカミ]の素敵なところはシェフのみなさんの職人技が見られることで、前にカウンター席に座ったときは、カツサンドがさくさく出来ていく様子を見ながら食べるというたいへん贅沢な時間を過ごしました。店の大きさに比べてシェフがたくさんいてはって、それだけ料理に手が込んでるのやなあと思う。壁にプリンの貼り紙があったのでテイクアウトしました。 [ヨシカミ]は料理おいしいのももちろんやけども、昭和なお店の全体がめちゃめちゃよくて、看板やお皿にはシェフの顔マークに「うますぎて申し訳ないス!!」て書いてあるし、メニューも「ロールパン(ふたっつ)」「ショーユ味」とかやし、いろいろかわいすぎて胸がぎゅっとなる。

満腹で帰り道、ずっといつかは浅草に住みたいと思って不動産サイトでもちょいちょい見たりしてるねんけど、浅草に住んだら確実に食べ過ぎる、肥満というかわたしは体につく脂肪より先に血管とか内臓が悪くなるタイプやし、どうしたものかと真剣に悩んでしまった。ちなみに、好きなお店は、[ヨシカミ]と[ロッジ赤石](カツ丼からナポリタンからお酒もめちゃめちゃ豊富なメニューの喫茶店)と[天国](ホットケーキ)と[デンキヤホール](ゆであずき最高!なテーブルがゲーム機の喫茶店。もう一回言うけど、ここのゆであずき最高!)と……。 

帰ってからプリン食べたら、これこそ昭和のプリン!て感じで、それはもうおいしかったです。わたしは昔のたまご感溢れる、固めで表面がちょっとぷつぷつあってカラメルが苦いめのプリンが好き! 

[ヨシカミ]は、プリンは無理やけど、洋食は冷凍の宅配があるよー。 

4月☆日 

群像新人文学賞の選考。ほとんど人に会ってない生活で、しゃべり方忘れてる、うまくしゃべられへん状態やのに、いきなり選考の場で議論するのに大変緊張してしまう。最初、ほんとに言葉が出てこないというか、ちょっとしかしゃべってないのに息苦しくなってしまって、どうしようかと思った。しばらくしてなんとか持ち直したけど、しゃべることも運動といっしょで筋肉的なものやなって、この1年でつくづく思うようになった。怪我とかでしばらく動かずにいると、怪我した以外のところもうまく動かなくなったりするけど、ほんまそんな感じでリハビリが必要やなあ……。 

新人賞は無事に受賞作を出せてほっとしました。 

4月☆日 

原稿の締め切りが続いていて、ひたすら家で仕事。iPhoneに入ってる万歩計を見ると、あまりにも歩いてなさ過ぎて不安になる。生き物としてだいじょうぶなんやろか、とさえ思う。グラフ表示にしたら、真っ白になるもんな。 

4月☆日 

iPhoneに保存した画像をさかのぼって見ていたら、去年の今頃に撮った夕日の写真があった。隣の建物と建物とのあいだにちょうど夕日が来てて、古代遺跡で春分秋分の日に太陽がぴったりくるように作られてたりするやつあるやん? あれみたいな感じで(全然ちゃうけど)、わーすごいやんと思って写真撮ったんやった。日付を見ると、2日後。それでその日のその時間のちょっと前にアラームセットしといて、見たら、おお、ほんまにそこに太陽が来てる。時間までほぼぴったり! すごい! 地球って規則正しく動いてるのやなあ。 

4月☆日 

アルコール0.5%のビールが出たという記事を読んで気になってたら近所のスーパーで売ってたので買ってみた。アサヒのビアリー。前に、ドイツのノンアルコールビールでカルディとかで売ってるやつが普通のビールの味に近いって言うので飲んでみて、まあ、確かに今までに飲んだノンアルコールビールの中ではビールっぽいけどやっぱりビールではないな、と友達とうなずき合ったものです。ほんでそのときに、ドイツではノンアルコールビールをつくるのに、普通のビールのつくり方でつくってからアルコールを抜くことができるけど、日本の法律では禁止されてて普通のビールと違うつくり方でやらなあかんていうことを知ったので、なるほどそれでアルコールは極力減らしてるけど味はビールということで0.5%のビールやねんな、と思ったわけです。そしてこれ、飲んでみたら、ほぼビール! これはビールですね。いいのを見つけました。車の運転や妊娠中とかでアルコールがあかん人はもちろんだめなんやけど、お酒を控えたい、もしくは酔いたくはないがビールは飲みたい、みたいなときにはぴったりです。 缶のデザインもおしゃれ。

ノンアルコール飲料増えてほしい話はここでも何回か書いてるけど、最近はよく缶のレモンサワーとかのノンアルコールをときどき飲んでて、それジュースやん、て思われると思うけど、ジュースほど甘くなかったりするので、甘いの苦手なわたしにはちょうどいいのよね。 

それにしても、日本の酒関係の法律や税制、いろいろ考え直したほうがいいと思うなあ。ビールやと酒税が高くなるからって発泡酒とか第3のビールとか微妙な、めっちゃがんばって研究開発しても外国には売れへん独自のものばっかりつくらなあかんようになってるし、最近やとめちゃめちゃ度数の高い缶チューハイばっかり売られたり、せっかくの技術力やアイデアが妙なことに使うしかなくなってるって感じするんよね。依存症や健康のことを考えたら、単純に度数で税金かけるとかにしたほうがいいと思うけどなあ。 

4月☆日 

というか、緊急事態宣言明けて、異動とか歓送迎会多い季節でだいじょうぶ?? いや、って思ってたら、まんぼうていうようわからんのになって、飲食店も1時間だけ営業時間延びたのはどれくらい違いがあるもんなんやろ、と思ってるうちにまたもや状況が悪化してあっという間に緊急事態宣言に戻って、しかも前より厳しくなって酒類販売あかんとか、商業施設も休業要請になってしまった。 

1年前は最初の緊急事態宣言中で、1年後にこんな状態やとは思わなかったし、今は1年前みたいなすごい緊張感はなく、通勤とか仕事ばっかり普通で、だけど補償関係が整わないまま(申請しても補助金下りなかったとか、フリーランスや演劇関係やと先にお金使ってからあとでその何割かを補助なのでそもそも使えるお金がないとどうしようもないとか、先が見えない状況で貸し付け金があっても借金が増えてしまうとか)、じわじわと閉店や営業・運営が苦しいところが増えていって、みんなすごく疲れてるし、しんどいと思うねんけど、この妙な「自粛」状態に慣れてしまって、というか、慣れるしかない感じになってる。慣れてしまうって怖いなと、感染対策についてもそうやし、ちぐはぐな政策に対しても思うけど、疲れてるし生活や仕事で差し迫ってどうにかしないといけないことがあると、それを考えること自体がしんどくなる、と去年の今頃とは違ってけっこう混んでる電車に乗りながら思う。 

4月☆日 

慣れる、ということで言えば、わたしは家から出ることがすっかりめんどくさくなってしまっていて、動いてない、歩いてないという身体的な不都合もあるけども、ちょっと前にも書いた他者の存在を感じることが少ないというか、自分じゃない人が今どんなふうにしてるのかを知る機会が少ない。周りの人も、繁華街に行くことがめんどうになり(感染が怖いというのももちろんあるし)、買い物もネットでばっかり済ましてしまうて言うのもよく聞く。飲食店も行かないから、学生がバイトしてるんやなーとか、隣のテーブルは仕事帰りの人らやなーとか、そういうのがどんどん遠くなっていく。 

今回の災害(やんな?)で厳しいのは、苦しんでる人や困ってる人が見えにくいってことなんやろうな。街は、閉店した店以外、表面的には何も変わらないし、いちばん厳しい医療現場は見えないし、感染した人は隔離されるし、仕事がなくなって生活に困ってるとか家族で問題が起きてるとかも見えないし、会わないから話聞いたり、あれ? なんか様子が変なような……て気づくことも少ないし。ただただ不安が広がって、でもようわからんこの状況には慣れて普通に通勤はせなあかん、相談やしんどいことを話し合う機会も難しくて、先の見通しも立たなくて、ほんまになんてつらい事態なんやろうか。

4月☆日 

近所に高級食パンの店がちょっと前にできたらしいが(幸い、けったいな名前のやつではないです)、わたしは幼少のころから筋金入りの天邪鬼&判官贔屓で流行り物に背を向けて生きてきたため、たぶん買いに行かへんやろなー。最近、小説の資料としてこの30年ぐらいに流行ったものとか時代の象徴的なものとかを調べたりするのやけど、ほんとうにとことん、流行ったものとか人気が出たものはスキー競技でターンするポールのように避けてきたのやなあ、と。なんでそんな性格? 志向? になったのかわからんけど。流行が嫌いというよりは、なんかみんなが食べてる・見てる・行ってるんやったら自分はええか、と思てまうねんな。例外はスイーツで、ティラミスもナタデココも大好き。あ、でも、流行が終わって何十年も経つのにティラミスもナタデココも食べ続けてるから(イタリアンレストランに行くと最後は必ずティラミスを食べる。いろんな種類のものが食べたくて知らないものや食べたことないものを優先して選ぶのにティラミスだけはティラミス)、天邪鬼といえば天邪鬼か。 

こんなことを言うて、うっかり高級食パン買うてるかもわからんけど、そのときは隠さず報告します。

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柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

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権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
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